近年、建設単価の推移により建設工事費の高騰が続いています。本記事では建設工事費や建築資材の物価がどの程度上昇しているのか、建設工事費デフレーターとは何かなど、事業用建築を計画しているデフレーターを活用した指標や定量的な物価高騰指数などが分からない方に役立つ情報を紹介していきます。
建設単価の推移について
建設業界では、2020年東京オリンピックを契機としてさまざまな工事の重要性が高まっています。また、東日本大震災など甚大な自然災害に伴う復興事業を迅速に行うべく、災害復興に関するさまざまな工事の重要性も高まっています。
それらに起因して建設単価は上昇傾向にあり、現在においても落ち着く目途が立ちません。また、建設物価だけでなく人件費についても高騰しています。
ここではまず、建設物価や人件費の高騰について具体的に解説していきましょう。
人件費の上昇
建設業界における工事の需要は高まる一方、人件費の高騰も高まり続けています。国土交通省が公表している公共工事設計労務単価を確認すると、2013年度以降は継続的に人件費が高騰していることが伺えます。
背景としては、建設業界における就業者数の減少および高齢化などが挙げられます。
建設資材物価指数の上昇
建設資材物価指数とは、建設物価調査会が発表している指数であり、建設工事で使用される資材の総合的な価格動向を定数的に示したものです。メーカー・問屋・特約店などを対象として価格を調査し、2011年の価格を100として指数化しています。
円安に伴う輸入資材の高騰・甚大な自然災害に伴う復興および公共事業の増加などにより継続的に上昇しています。
また、鉄鋼関連資材における価格が大幅に上昇したことと、ウッドショックの影響で木材関連が急騰したのも大きな影響を与えています。
なお、2023年1月現在では、建設総合が139.8、建築部門が141.2、土木部門が137.5と高い数値を示しています。
建設工事費デフレーターとは
建設工事費デフレーターとは、建設工事に係る名目工事費を基準年度の実質額に変換する目的で、毎月作成・公表されている指標です。
建設工事の多くは受注生産という業界特有の特性があるため、一般的な製品価格と違って市場価格の動きでは直接的にとらえることができません。
そのため建設工事費デフレーターでは、建設工事費に内包される労務費および資材費の価格指数を各々の構成比を用いて総合する、投入コスト型で算出するという手法をとっています。
ここではまず、建設工事費デフレーターに関系する4つの指標と建設工事費デフレーターで分かることについて具体的に解説していきましょう。
「4つの指標」との関係
建設工事費デフレーターを作成するには、建設工事に関わる費用の内訳を算出しなければなりません。これらの費用は大まかに、労務(賃金・社会保険料)、資材、サービス(運送・金融・広告)、小売り商品の4つです。
これらの費用は、それぞれ以下の指標に対応しています。
- 労務→賃金指数(建設業)
- 資材→企業物価指数
- サービス→企業向けサービス価格指数
- 小売り商品→消費者物価指数 総合(除く帰属家賃)
建設工事費デフレーターと上記の4つの指標は、互いに相関関係にあります
建設工事費デフレーターでわかること
設工事費デフレーターは建設工事に関連する名目工事費額を基準年度の実質額に変換する指標となっているため、建設工事に要する費用の相場を知ることができます。
また上述したように、建設工事費デフレーターは4つの指標と関連しながら定量的に示されるため、建設工事費の動向だけでなく、マクロな視点においては日本経済の変動を知ることもできるのです・
たとえば建設工事費デフレーターの値は2005年から上昇をはじめ、2008年にいったんピークを迎えました。
これはリーマンショックの影響により、企業向けに販売される資材などの価格が高騰したためです。
また2018年以降は人材不足が大きく影響して、やはり建設工事費デフレーターが上昇傾向にあります。この原因としては就労者数の減少や、高齢化に伴う人件費の高騰が挙げられます。
建設単価の推移と動向を正しく理解しよう
建設資材の高騰や人件費の高騰に伴ない、建設単価も増加の一途をたどっています。また、ウクライナ情勢や円安などの影響も先行きを見通せないことから今後においても上昇傾向にあると言えるでしょう。
激動の建設業界を生き抜くためには、政府や業界が発信するさまざまな情報に触れるとともに、それを的確に把握および分析することが重要です。