建築現場で安全かつ計画的に工事を進めるためには、施工体制台帳をしっかり作成する必要があります。本記事では施工体制台帳について、記入例や書き方、作成の際の注意点について解説します。
そもそも施工体制台帳とは?
施工体制台帳とは、法律で定められた特定の工事に関わる元請から下請け業者まで、全ての会社の情報や関係をまとめた安全書類のことです。
ここでは施工体制台帳について、作成義務のある工事や提出先、作成しないとどうなるのかなどについて解説していきます。
施工体制台帳作成義務のある工事
発注者から以下の条件に該当する工事を請け負った元請業者は、施工体制台帳を作成する義務があります。
- 発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者が当該工事に関して締結した下請け金額の総額が4,000万円(建築一式工事:6,000万円)以上となる場合
- 公共工事発注者から平成27年4月1日以降に直接建設工事を請け負った建設業者が当該工事に関して下請け契約を締結した場合
参考:建設業法|法令検索
施工体制台帳の提出先
民間工事の場合は、施工体制台帳は発注者から請求された時に見せる必要があります。
公共工事の場合は、施工体制台帳を作成してから発注者へ提出しなければなりません。基本的に全ての工事で施工体制台帳は作成することになりますが、提出が法律的に分けられているのは公共工事の場合のみです。
保管期間
施工体制台帳の保管期間は、発注者に対して建造物を引き渡した後の5年間です。新築住宅の建設工事の書類に関しては、10年間営業所で保管する必要があります。
発注者に建造物を引き渡した後は、内容を一部抜粋したものを会社にて保管しなければなりません。保管しなければならない施工体制台帳の内容は「技術者の氏名・資格・下請け業者の名前・各業者の担当工事・工期」などです。
施工体制台帳を作成しないとどうなる?
施工体制台帳の作成は、法律で定められた元請業者の義務です。
施工体制台帳を意図的に作成しなかった場合、法令違反で罰せられます。また下請業者に関しても、元請の指示に従うことなく書類を提出しなかった場合、法令違反に加担することになるので注意が必要です。
施工体制台帳の記入例・書き方を徹底解説
それでは実際に施工体制台帳はどのように作成すればいいのか、記入例や書き方について解説していきます。
1.施工体制台帳の書式を用意する
まずは国土交通省のホームページから、施工体制台帳の雛形をダウンロードしましょう。
国土交通省のこのページにアクセスすると、施工体制台帳や施工体系図など、必要書類の雛形をダウンロードできます。
2.会社名や事業名を記入する
施工体制台帳を用意したら、まず会社名と事業名を記入しましょう。
元請だけではなく下請業者も同じように記載して、施工体制台帳で工事の責任の所在を明確にする必要があります。
3.建設業許可の種類を記入する
次に施工体制台帳に建設業許可について記入していきます。
記入する建設業の許可は、当該工事に関係なく業者が受けている建設業許可の業種すべてが対象です。
建設業許可は一般建設業と特定建設業の2種類があり。特定建設業許可は下請け契約を締結した4000万円以上の工事の元請けに必要となります。
4.工事の名称や発注者名などを記入する
施工体制台帳には、発注者名と発注者の住所も記載する必要があります。
公共工事はもちろんのことですが、民間工事でも発注者名は記載しなければなりません。発注者名は「商号・住所・契約書の担当者氏名」などを記載します。
発注者が個人事業主の場合、は代表者氏名だけでよく屋号は不要です。発注者が個人の場合、氏名だけ記載する必要があります。
H3:5.各種保険の加入状況を記入する
次に各種保険の加入状況について記入する必要があります。
記入する保険の種類は「健康保険・厚生年金保険・雇用保険」の3種類です。それぞれの保険の事業所整理番号と事業所番号を記載してください。
公共工事においては発注者の自治体が、元請の管理責任をチェックする目的もある項目なので記載ミスや記入漏れなどはしないように注意しましょう。
6.発注者の監督員名などを指名する
発注者の監督員名の欄には、発注者側の監督員の指名と「権限及び意見申し出方法」を記載する必要があります。
権限及び意見申し出方法の記入の仕方は、権限欄は「請負契約書〜の記載通りです」です。契約書を確認しながら、間違えないように記載しましょう。
7.外国人就労者を記入する
外国人技能実習制や外国人建設就労者の有無についても記入する必要があります。
外国人技能実習制や外国人建設就労者が、当該建設工事に参加する場合は、有無のどちらかを丸で囲んでください。
8.請負業者の施行体制台帳を作成する
請負業者の施工体制台帳に関しても作成する必要があります。ここまで作成してきたのと同様に、記載欄に必要な情報を記入していきましょう。
施工体制台帳作成において注意すべきポイント
ここでは、施工体制台帳作成において注意すべきポイントを2つご紹介いたします。
請負業者は再下請負通知書に記載を行う
再下請負通知書とは、一次下請以下の下請契約についてその契約内容を記載し、元請に報告する書類のことです。
この書類は、下請契約を締結した下請業者が存在する場合は必ず提出しなければなりません。作成義務があるのは元請業者と直接契約をしている一時下請だけではなく、一次下請と下請契約を締結した二次下請、二次下請と契約した三次下請…と、すべての下請業者に作成が義務づけられています。
またこの再下請負通知書は、元請業者と建設工事の下請契約で関係のある下請業者が提出しなければなりません。
下請業者の数が多ければ多いほど用意する書類が増えるので、元請となる業者は工事開始前に書類を用意できるようにしっかりと準備しておきましょう。
添付書類の漏れがないか確認する
施行体制台帳は、他にも様々な添付書類と一緒に提出しなければなりません。
施工体制台帳に添付しなければならない書類
- 施工体制台帳本紙
- 工事担当技術者台帳
- 発注者との契約書のコピー
- 元請け業者と一次請負業者との契約書のコピー
- 主任技術者もしくは監理技術者がその資格を証明する書類
- 主任技術者もしくは監理技術者が元請に雇用されていることを証明する書類
- 専門技術者がその資格を証明する書類
- 専門技術者が元請け業者に雇用されていることを証明する書類
- 再下請通知書
- 再下請業者との契約書のコピー
このように施工体制台帳だけではなく添付書類もかなり多いので、早い段階から書類を準備しておく必要があります。
また1つ1つの書類が会社の機密情報や個人情報文章となるので、取り扱いや管理に関しては最新の注意を払わなければなりません。
施工体制台帳と同様に、事前に書類のコピーを取ってPDFなどのデータ化をして、いつでも使えるようにすると良いでしょう。
施工体制台帳作成が大変な場合はツールやシステムの導入もおすすめ
施工体制台帳の作成や保管が大変で人手が足りていない場合は、ツールやシステムなどの導入を検討してみましょう。
ツールやシステムなどを導入すれば、施工体制台帳を始めとした安全書類を統一様式の書式で作成できます。
また自動的に電子保管してくれるツールやシステムなども多いので、用意した書類をわざわざデータ化して保存するといった作業も必要なくなります。
施工体制台帳作成は絶対に忘れないようにしよう!
施工体制台帳は、特定の工事において絶対に必要となる書類です。
書類の不備はもちろんのこと、施工体制台帳を作成せずに工事を始めてしまうと、法令違反で罰せられてしまいます。
安心かつ安全な工事を保証するための重要な書類なので、遅れることなく準備・提出できるように注意が必要です。