現場管理費は、工事現場を運営するための経費であり、監督などの元請側の従業員の給与や保険料、施工図作成などを含むものです。この記事では現場管理費の算定方法と一般管理費や共通仮設費との違いについて分かりやすく解説します。
現場管理費とは?
工事現場の「現場管理費」とは、その工事現場を運営するのに掛かる諸経費のことです。
例えば、現場監督などの元請側の従業員の給与や工事保険料、施工図作成に掛かる費用などが該当します。
工事に直接的に関わるものではありませんが、工事をスムーズに進行させて要求される品質のものを作り上げるためには必須のものです。
工事費の構成
公共の建築工事を例に取ると、工事費は「直接工事費」と「共通費」及び「消費税等相当額」で構成されています。
直接工事費は工事の成果物として完成してかたちに残るものですが、共通費はその工事を進めるために必要な仮設物や管理費用のことです。
共通費はさらに「共通仮設費」「現場管理費」「一般管理費等」の3つに区分されています。
現場管理費の内訳
共通費の一部である「現場管理費」の内訳は、国土交通省が定める『公共建築工事共通費積算基準』において規定されています。
それぞれの項目について下の表に整理してまとめてみました。
項目 | 内容 |
---|---|
労務管理費 | 現場労働者の労務管理に要する費用 |
租税公課 | 契約書印紙代、各種申請手数料等 |
保険料 | 火災保険、工事保険、自動車保険、賠償責任保険、 法定外の労災保険およびその他の損害保険 |
従業員給料手当 | 現場従業員等(主に元請企業の社員)の給与や諸手当 |
施工図等作成費 | 施工図、完成図等の作成に要する費用 |
退職金 | 現場従業員等の退職給付引当金あるいは退職金 |
法定福利費 | 現場従業員等の労災保険料、雇用保険料、 健康保険料及び厚生年金保険料の事業主負担額 |
福利厚生費 | 現場従業員等に対する慰安、娯楽、厚生、 貸与被服、健康診断、医療、慶弔見舞等に 要する費用 |
事務用品費 | 事務用消耗品費、OA機器等の事務用備品費、 新聞・図書・雑誌等の購入費、工事写真・完成写真代等の費用 |
通信交通費 | 電話やネット回線などの通信費、出張旅費及び移動交通費 |
補償費 | 工事騒音、振動、濁水、工事用車両の通行等に対して、 近隣の第三者に支払われる補償費 |
その他 | 会議費、式典費、工事実績の登録等に要する費用、 各種調査に要する費用、 その他上記のいずれの項目にも属さない費用 |
現場管理費と一般管理費、共通仮設費の違い
共通費は「共通仮設費」「現場管理費」「一般管理費等」の3つに区分されていますが、現場管理費以外の2つの内容との違いについて解説します。
共通仮設費の内訳
共通仮設費とは、仮囲いや敷鉄板など、工事が終われば撤去され無くなる仮設物のことです。現場全体の清掃費や現場従業員や作業員の安全対策費もその中に含まれます。
項目 | 内容 |
---|---|
準備費 | 敷地測量、敷地整理、道路占用・使用料、仮設用借地料 等 |
仮設建物費 | 監理事務所、現場事務所、宿舎 等 |
工事施設費 | 仮囲い、工事用道路 等 |
環境安全費 | 安全標識、消火設備等の設置、交通誘導・安全管理等の要員、 隣接物等の養生、自然災害防止対策に要する費用 等 |
動力用水光熱費 | 工事用電気・水道料金 等 |
屋外整理清掃費 | 屋外・敷地周辺の跡片付け、端材等の処分、除雪費用 等 |
機械器具費 | 測量機器、揚重機械器具、雑機械器具 等 |
情報システム費 | 情報共有、遠隔臨場、BIM 等 |
その他 | その他上記のいずれの項目にも属さない費用 |
一般管理費の内訳
一般管理費は、工事現場ではなく、主に元請会社の本社や支店の維持に掛かる経費のことを指します。建設工事を営む企業が存続するためには、本社機能を維持する必要があるため、現場管理費とは分けて計上されます。
項目 | 内容 |
---|---|
役員報酬等 | 取締役及び監査役に要する報酬及び賞与 |
従業員給料手当 | 本店および支店の従業員の給与、諸手当及び賞与 |
退職金 | 本店および支店の従業員に対する退職金 |
法定福利費 | 本店及び支店の従業員に関する労災保険料、 雇用保険料、健康保険料及び厚生年金保険料の事業主負担額 |
福利厚生費 | 本店及び支店の従業員に対する慰安、娯楽、 貸与被服、医療、慶弔見舞等の福利厚生等に要する費用 |
維持修繕費 | 本店および支店の建物、機械、 装置等の修繕維持費、倉庫物品の管理費等 |
事務用品費 | 本店および支店の事務用消耗品費、備品、 新聞参考図書等の購入費 |
通信交通費 | 本店および支店の電話やネット回線などの通信費、 出張旅費及び移動交通費 |
動力用水光熱費 | 本店および支店の電力、水道、ガス等の費用 |
調査研究費 | 技術研究、開発等の費用 |
広告宣伝費 | 広告、公告又は宣伝に要する費用 |
交際費 | 得意先、来客等の接待、慶弔見舞等に要する費用 |
寄付金 | 社会福祉団体等に対する寄付 |
地代家賃 | 事務所、寮、社宅等の借地借家料 |
減価償却費 | 建物、車両、機械装置、事務用備品等の減価償却額 |
試験研究償却費 | 新製品又は新技術の研究のための特別に支出した費用の償却額 |
開発償却費 | 新技術又は新経営組織の採用、 資源の開発並びに市場の開拓のため特別に支出した費用の償却額 |
租税公課 | 不動産取得税、固定資産税等の租税、道路占有料その他の公課 |
保険料 | 火災保険その他の損害保険料 |
契約保証費 | 契約の保証に必要な費用 |
雑費 | 社内打合せの費用、 諸団体会費等の上記のいずれの項目にも属さない費用 |
現場管理費の算定方法
ここでは、現場管理費を算定する方法について解説します。
冒頭で示した図の再掲になりますが、現場管理費は共通費の一部であり「純工事費」とセットでの位置付けになることをご確認ください。
共通費の算定方法
公共工事において、共通費は「公共建築工事共通費積算基準(共通費基準)」の規定により算定されます。
共通費基準では算定方法は二つあります。ひとつは必要となる費用をそれぞれ積み上げて算定する方法で、もうひとつは過去の実績等に基づいた各共通費の率(共通仮設費率、現場管理費率及び一般管理費等率)により算定する方法です。
一般的には、後者の共通費基準に定められた各共通費の率により算定し、率に含まれない内容については別途積み上げにより算定し加算する方法が多く取られます。
別途積み上げによる「率に含まれない内容」とは、工事現場で共通で使用する揚重機械(クレーン)に要する費用などです。
共通費を算定するフローは下記の通りです。
①直接工事費と工期の設定
↓
②共通仮設費の算定
↓
③現場管理費の算定
↓
④一般管理費の算定
現場管理費の算定方法
共通費率で現場管理費を算定する場合は、「純工事費」に対する比率で計算します。
純工事費とは「直接工事費」に共通仮設費を加えたものであり、そうして算定された純工事費に「現場管理費率」を掛けることで現場管理費を算定できます。
現場管理費率は工事の種類や規模によって変わりますが、国土交通省HPで示されている共通費の算定例では9.87%〜10.01%の率が採用されていますので、おおむね10%前後と言えそうです。
参照:国土交通省HP 公共建築工事の工事費積算における共通費の算定方法及び算定例
現場管理費の妥当な計上方法
概算の予算を組むために現場管理費を計算する場合は、純工事費(直接工事費+共通仮設費)✕10%程度が公共工事の基準であると把握しておくとよいでしょう。
民間工事の場合、現場管理費の共通の算定基準はありません。各企業で任意に金額を設定できますが、見積に計上する場合は5%〜15%程度の幅であれば、相手方からも妥当な金額であると認識されるはずです。
適正な現場管理費の計上で信頼性の高い見積を作成しましょう
ここまで、現場管理費として計上される項目の内容と、その算定方法について解説してきました。現場管理費は、工事の品質を確保しスムーズに進めるうえで必須のものですが、最終的にかたちとして残るものではないため、余計な経費と見られがちです。
ここで挙げた算定基準を参考にしていただき、信頼性の高い見積を作成して相手方への理解を得ることが大切です。