本記事では、コンストラクションマネジメントの導入メリットについて詳しく解説します。また、従来の施工管理やプロジェクトマネジメントとの違いについても触れながら、どのような場面でCMが効果的かを明らかにします。
コンストラクションマネジメントとは?
コンストラクションマネジメント(CM)とは、建設プロジェクトの計画、設計、施工、維持管理における総合的なプロジェクトマネジメント手法です。
通常の建設プロジェクトは、クライアント(建築主)と設計者(設計事務所)、施工者(ゼネコンなど)の三者間で行われます。ここに「第四者」となる専門家が入り、関係者間の調整やプロジェクトの管理を行うのがコンストラクションマネジメントというわけです。
コンストラクションマネジメントの目的は、クライアントの立場に立ってプロジェクトを効率化し、コストダウンや品質の向上、リスクの低減などを実現することです。
導入が進む背景
コンストラクションマネジメントは、1940年代のアメリカで生まれたと言われています。その後1960年代・1970年代から建設業界での活用が広がりました。
一方、日本でコンストラクションマネジメントが注目を集め始めたのは1980年代のことです。背景には建設業界における競争の激化や、クライアントの要求の多様化・高度化、テクノロジーの進歩などがあります。これらにより、従来の施工管理手法では対応しきれないさまざまな問題が発生するようになりました。
課題に対処しつつ、より効率的で高品質なプロジェクトを遂行するために、日本でもコンストラクションマネジメントが注目を集めているのです。
コンストラクションマネジメントの仕組みとメリット
多くの建設プロジェクトでは、クライアントは設計者や施工者とそれぞれ別個に、直接契約を結びます。
クライアントはプロジェクトの進行状況について設計者や施工者から報告を受けますが、とくに専門知識を持たない人にとって、プロジェクトが適切に行われているか判断することは困難です。
また設計者や施工者にとっても、クライアントの意思決定がスムーズに行われないことでプロジェクトの進行が滞るリスクがあります。
【従来の建設プロジェクト】
これに対しコンストラクションマネジメントでは、クライアントは専門知識を持つ「コンストラクションマネジャー」と契約を結んでプロジェクトの管理を任せます。
【コンストラクションマネジメント】
コンストラクションマネジメントの導入は、クライアントにとっても、設計者や施工者にとってもメリットがあります。
メリット① コスト管理の効率化
コンストラクションマネジメントでは、プロジェクト全体のコスト管理が効率化されます。予算策定から実行までの一貫したコスト管理が行われるため、予算の透明性が向上し、無駄なコストが削減されます。
メリット② 時間管理の最適化
コンストラクションマネジメントでは、プロジェクトのスケジュール管理が最適化されます。計画・設計・施工各段階でのスケジュール調整が円滑になり、遅延が最小限に抑えられることで、プロジェクトの完成時期を予測しやすくなります。
メリット③ 品質向上とリスク管理
品質管理やリスク管理の観点からも、コンストラクションマネジメントは優れたメリットを持っています。品質基準の策定や監視が徹底されることで、プロジェクトの品質が向上し、リスクも事前に特定・対策が講じられるため、問題の発生を未然に防ぐことができます。
メリット④ コミュニケーションの円滑化(意思決定の支援)
コンストラクションマネジメントは、クライアントと設計者・施工者とのコミュニケーションを円滑にするメリットもあります。プロジェクトの進捗状況や問題点、選択肢などが随時報告されるため、クライアントは適切な意思決定を行うことができます。
従来の管理手法との違い
コンストラクションマネジメント以外にも、プロジェクトを管理する手法はいくつか存在します。ここではコンストラクションマネジメントと、従来の建設プロジェクトで用いられてきた「施工管理」や「プロジェクトマネジメント」との違いや関係を見ていきましょう。
施工管理とコンストラクションマネジメントの役割の比較
施工管理は「施工者の立場」から、工事現場での作業の進捗管理や品質管理、コスト管理、スケジュール管理、安全の確保などを行います。
これに対しコンストラクションマネジメントは「クライアントの立場」から、計画段階よりプロジェクト全体を俯瞰して、総合的なプロジェクトマネジメントを行います。
プロジェクトマネジメントとの違い
プロジェクトマネジメント(PM)は、コンストラクションマネジメントと似ています。実際、それぞれの区別について厳密な定義はありません。事業者によっては「PM・CM業務」と、まとめて表記しているケースもあります。
ただし一般的には、プロジェクトマネジメントが設計段階からプロジェクトを管理するのに対し、コンストラクションマネジメントはそれ以前、企画段階からプロジェクト管理に関わるものとされています。
コンストラクションマネジメント導入の流れ
コンストラクションマネジメントは、建設プロジェクトの企画段階から始まります。
ステップ① 企画
建設プロジェクトの企画段階では、まずプロジェクトの目的や目標、予算、期間などが明確にされます。そのうえで適切なコンストラクションマネジメント手法を選定し、具体的な事業計画を策定します。
ステップ② 設計者の選定
設計者選定段階では、プロジェクトの要件に合った設計者を選定し、設計業務の範囲や契約条件を決定します。具体的には、設計者の選定方法(募集方法や評価方法)を提案し、実際の評価や、契約内容の確認をサポートします。
ステップ③ 設計
設計段階では、設計者から提出された見積書を精査して、プロジェクトの設計が効率的かつ品質の高いものになるよう調整を行います。また必要に応じて、設計変更やコストの見直しなどの対応をします。
ステップ④ 施工者の選定
施工者の選定段階では、設計段階までの計画に基づいて発注方式を検討・提案し、適切な施工者を選定します。選定プロセスは競争入札や交渉によって行われますが、その際に見積書の内容を確認したり、価格交渉などが行われることもあります。
ステップ⑤ 工事
工事段階では、施工者と連携して、工事が計画通りに進行するよう監督・管理を行います。また、進捗状況や品質管理、安全管理、リスク管理などを随時確認し、追加工事が発生した場合の見積内容の確認など、必要に応じて臨機応変な対策を講じるのも重要な役割です。
コンストラクションマネジメントは竣工の時点で完了しますが、場合によっては建物等を引き渡したあと、運用にともなうメンテナンスも業務に含むことがあります。
コンストラクションマネジメントを成功させるポイント
コンストラクションマネジメントを導入するタイミングについて、厳密な決まりはありません。ですが、コンストラクションマネジメントの効果を最大にするためには、可能な限り早いタイミング…つまり、設計プロジェクトの企画段階から導入することが重要です。
コンストラクションマネジメントを導入して建設工事を円滑に進めましょう
コンストラクションマネジメントは、建設プロジェクトの効率化、品質向上、リスク軽減などのメリットをもたらす総合的なプロジェクトマネジメント手法です。従来の施工管理と比較して、プロジェクト全体を俯瞰し、より効果的な管理が可能になります。
建設業界においては、競争が激化し、クライアントの要求も多様化・高度化しています。このような状況下で、コンストラクションマネジメントの導入は、プロジェクトの成功に大きく寄与すると言えるでしょう。建設業界の初心者は、コンストラクションマネジメントの基本的な概念や手法を理解し、今後の業務に活かしていくことが重要です。