自然災害の多い日本では、家を建てる際に「防災設計」という考え方が特に大切です。この記事では災害リスクに強い家の特徴や、家を建てる際に注意・注目すべきポイントを紹介していきます。
防災設計とは?
防災設計とは、自然災害が発生した際に、その影響を最小限に抑えるような設計のことを指します。これには建物自体の構造設計に加え、周囲の環境や地理的要素を考慮に入れた設計も含まれます。
また将来の被害を最小限にするだけでなく、すでに災害が発生した建築物に対して、経済性や安全性、施工性、環境への配慮などを踏まえた速やかな復旧計画を建てることも、防災設計の一部です。
防災設計が必要なわけ
日本は世界的に見ても「自然災害が多い地域」と言われています。内閣府防災情報のデータによると、世界で発生したマグニチュード6以上の地震のうち、日本で発生したものは約21%で、他の自然災害も含む災害発生率は約18%です。日本の国土面積が世界全体の0.25%であることを考えると、驚くべき数字といえるのではないでしょうか。
こうした災害から生命や財産を守るためには、災害の被害を最小限に抑える防災設計の考え方が不可欠です。
特に家は私たちの生活の基盤であり、安全な生活のためには家そのものが安全でなければなりません。防災設計を行うことで、災害時の被害を軽減し、家族の安全を確保することが可能になります。
防災設計の具体例
防災設計の一例として、砂防基礎調査や砂防指定地等管理業務、災害復旧設計業務などが挙げられます。これらは国や自治体が実施するものですが、民間事業者も、防災設計において参考にできるでしょう。
【砂防基礎調査】
砂防基礎調査とは、全国に約50万か所あるとされる「土砂災害危険箇所」の規模や範囲、地形、地質、土地利用等を調査して、特に危険性が高いと考えられるエリアを設定する調査です。
具体的には斜面の傾斜や土壌の特性、地下水の流れ方向などを詳細に調査し、土砂災害の危険性を評価します。防災設計では、この調査結果をもとに、適切な土地利用や建築計画を立てることができます。
【砂防指定地等管理業務】
砂防指定地等管理業務とは、砂防指定地や砂防施設が正常な状態や機能を保つための調査点検業務のことです。
業務の具体的な内容は、砂防指定地や砂防設備の中で変更(変化)が発生した部分を詳細に点検し、緊急度を判定します。これは「砂防指定地等の点検に関する実施要領」に沿って行われ、緊急度が高いと判断された場所では変状箇所詳細図が作成されます。
【災害復旧設計業務】
災害復旧設計業務とは、台風などの自然災害により被害を受けた建物の修復や再建築に関わる計画、設計業務です。計画立案の際には経済性や安全性、施工性、環境への配慮が考慮され、原形復旧に必要な最小限度の工法が検討されます。
災害復旧計画は基本的に自治体、特に市町村単位で行われますが、国も「市町村における 災害復旧事業の円滑な 実施のためのガイドライン」を公表するなどして、計画策定の支援に取り組んでいます。
災害に強い家を建てる/選ぶポイント
自身で家を建てる場合、どのようなポイントに気をつければ災害に強い家になるのでしょうか。以下に、そのポイントを挙げてみます。
地盤
家を建てる際の最初のポイントは、地盤です。地盤が弱いと地震や豪雨などの災害時に家が倒れる可能性が高まります。また、地すべりや土砂災害の危険性もあります。ですから家を建てる際は、かならず地盤の調査も行うようにしましょう。
地盤についての情報を確認するには、国土交通省が提供する「重ねるハザードマップ」の活用が便利です。重ねるハザードマップでは土地の成り立ちを通して、その土地が抱えるリスクを明らかにしてくれます。過去に発生した洪水や土砂災害などの状況もわかるため、あらゆる事前災害への備えに役立つでしょう。
もちろん地盤を調査する方法は、重ねるハザードマップだけではありません。一部の自治体では、役所の窓口で地盤情報を閲覧できます。専門的な知識があれば、自分の目で土地を確認したり、古地図や地名の由来から、その土地が抱える脆弱性を推測することも可能です。より確実な調査を行いたい場合は、専門業者に依頼することもできるでしょう。
構造
次に考慮すべきは建物の構造です。例えば、地震に強い家を建てるためには、耐震構造を採用することが有効です。ちなみに地震による被害を抑えるための建物の構造には、次の3つの考え方があります。
【耐震】
地震による揺れに「耐える」ための構造です。建物の構造自体が地震に耐えられるように設計・施工されます。主に一般家屋などの建物に利用されることの多い手法です。
【制振】
地震による揺れを制御・軽減する構造です。具体的には地震エネルギーを吸収する素材(制震部材)が建物に組み込まれます。特に高層ビルなどでよく利用される方法です。
【免震】
免震とは、地盤と建物を切り離して「揺れを直接伝えない」構造のことです。この際に用いられるのが免震装置で、一般には積層ゴムなどの部材が用いられます。
これらの中から最適なものを選び、防災設計に反映させましょう。
もちろん自然災害は地震だけではありません。豪雨や台風による床上浸水を防ぐために基礎部分を高く設計したり、水没時に電気系統が漏電しないような設計にすることも重要です。
設備
最後に、防災に役立つ設備を考慮しましょう。例えばマンションなどに設置されるスマートウォータータンクは、災害によって断水が発生した際でも、一定期間のあいだ建物内に水を供給し続けることができます。
また太陽光発電システムや自家発電システムは停電時でも電力を確保でき、ライフラインを維持することが可能です。
これらの設備を設計に組み込むことで、災害の影響を最小限に抑えることが可能でしょう。
防災設計を意識した家で、安心の暮らしを手に入れましょう
防災設計は、自然災害から私たちの生活を守るうえで必ず考えるべき重要なポイントです。家を建てる際には、地盤の選択、建物の構造、そして設備の選択など、様々な要素を考慮に入れてください。これらを適切に組み合わせることで、家族みんなが安心して暮らせる家を実現できるでしょう。