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BIMとは?導入のメリット・デメリットや3D CADとの違いを解説

公開日:2023.03.30 更新日:2023.04.10
BIMとは?導入のメリット・デメリットや3D CADとの違いを解説

BIMとは、Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略称です。本記事では、BIMを導入するメリット・デメリット、3D CADとの違いや、現在の日本におけるBIMの導入状況についてわかりやすく解説していきます。

BIMとは

BIMとは「BuildingInformation Modeling」の略称で、コンピューター上で3Dの建築モデルを作成し「企画・設計・施工・建築・維持管理」に関する情報を、簡単に管理・活用できる仕組みのことです。

従来の建築ではCADによる設計が主流でした。これは、建物の平面図や断面図、構造図などを別個に作成し、それぞれの図面を突き合わせて設備や壁の設計情報を連携させるという手法です。

しかしBIMを活用すれば、3D空間の中で建物の形状や天井、床、階段などを含んだ3Dモデルをいっぺんに作成できます。

また設計変更があった場合も、変更に基づいて3Dモデルが自動的に修正・変更されるので、視覚的にわかりやすいデータを使って発注者に説明できますし、設計の段階でさまざまなシミュレーションを行うことも可能です。

すでに国土交通省は「2023年までに小規模を除く全ての公共事業にBIM/CIMを原則適用」することを決定しており、今後は民間事業でもBIMが急速的に普及していくのではないかと考えられています。

BIMを導入する5つのメリット

BIMを導入した場合、具体的にどのようなメリットがあるのかみていきましょう。

3Dモデル構築が簡単になる

引用:初めてのBIM/CIM|国土交通省

従来のCADを利用する場合、図面を別々に作成して、その後すべての図面を照らし合わせながら整合性が取れているかチェックしなければなりませんでした。

しかしBIMは1つの3Dモデルから建物の平面図や配置図を作成できるため、何十枚も図面をわざわざ作成してチェックする必要がありません。

さらにBIMで作成した3Dモデルと図面を連携できるので、モデルに変更を加えた場合に、後から図面を修正する必要もなくなります。

CADを利用するよりも3Dモデルの構築が簡単になり、設計から実際に工事を行うまでの管理の手間も抑えられるのです。

建物完成後のPRやリニューアル計画に流用できる

BIMを利用した場合、設計段階からさまざまな種類の外観や異なるコンセプトによる建築のシミュレーションと3Dモデルを作成できます。

設計段階で作成された3Dモデルは、建物完成後のPRにそのまま流用可能です。

多店舗展開している事業者であれば、BIMで作成した3Dモデルを多店舗間のデザイン統一などに活用できるというメリットもあります。

設計の初期から様々なシミュレーションが可能

BIMを導入することで、設計の初期段階からさまざまシミュレーションを行い、建築物の課題を洗い出すことが可能です。

例えば、これまで照明や空気の流れなどのシミュレーションは、専門業者へ依頼するのが一般的でした。しかしBIMを利用すれば、専門業者へ依頼することなく自社のPC上で簡単にあらゆるシミュレーションを行うことができます。

引用:BIM/CIM事例集 ver.2|国土交通省 国土技術政策総合研究所

国土交通省が公開しているBIMの導入事例でも、シミュレーションによって建築物の課題や施工計画の妥当性を早い段階で確認できており、設計初期段階におけるBIMの有用性が証明されています。

他の事業主や施工主への説明が簡単になる

BIMを活用した3Dモデルは、視覚的に建物の構造や外観などを簡単に把握できるので、設計主・施工主・事業者間での説明が簡単になります。

引用:BIM/CIM事例集 ver.2|国土交通省 国土技術政策総合研究所

実際に、「BIMを利用したVR体験」を行うことで専門的な知識がまったくない一般の方にも建設計画や工事をわかりやすく説明でき、工事への理解を深めてもらえたという事例があります。

BIMを利用した3Dモデルをコミュニケーションツールとして活用すれば、これまで難しかった専門的な説明やイメージの共有なども容易となり、工事をスムーズに進めることができるでしょう。

関係者間での情報共有が簡単になる

BIMはインターネット上で各プロジェクトや3Dモデルを管理するので、いつでもどこでも関係者間が必要な情報にアクセスできます。

【各建築工程におけるBIMを利用した場合に共有できる情報の例】

引用:土木工事等の情報共有システム活用ガイドライン|国土交通省

建築の各工程では作成・追加されたデータがすぐに反映されるので、建築に関わる関係者全員が、変更された情報をもとに適切な業務を行えるのです。

BIMを導入する3つのデメリット

BIM導入はメリットばかりではありません。導入にあたってどのようなメリットがあるのか、以下で詳しく見ていきましょう。

導入コストがかかる

BIMを導入する場合、最低限の利用環境を整えるために以下のコストが必要となります。

  • ソフトライセンス費:40〜100万前後
  • サーバー費:5〜10万円
  • PC購入費用:10〜30万円
    (ただし現在の利用PCがBIM利用推奨スペック未満の場合に限る)

BIMはソフトによってライセンス形態が異なり、必要なコストも変わってきます。年間40万円程度で利用できる「サブスクリプション型」や、100万円前後の「買い切り型」など、ソフトの種類によって、必要なコストはさまざまです。

また複数人で利用するためには、ソフトライセンス費の他にサーバー費も必要となります。

BIMを導入して作業するためには、利用推奨スペックを満たしたPCも必要です。3DBIMモデルと図面を同時に表示させて設計を行うケースが一般的なので、BIMを運用するには2台のディスプレイを同時に接続できるタイプのPCが適しているでしょう。

従来の2次元図面より設計に時間がかかる

BIMを利用して3Dモデルを作成するためには、建物に関する膨大な情報をPCに入力しなければなりません。

「壁・柱・建具・階段・設備・カーテンウォール」など、建材パーツそれぞれの大きさや高さなどを設定して、3Dモデル作成の際にデータを入力する必要があります。

そのため従来の2次元図面よりも、設計に時間がかかる場合があるため注意が必要です。

ただし一度作成した設定は変更や修正の際に自動的に反映されるので、必要なデータを入力した後の手間は大幅に省けます。したがって設計に時間がかかることは一概にデメリットと言えず、総合的に見るとBIMを導入した方が業務の効率が上がるケースも多いでしょう。

インターネット環境が整っていないと利用しにくい

BIMを利用するには「グラフィックボード」という、特殊なパーツを搭載したPCが必要となります。グラフィックボードとは、3Dモデルなどの高度なグラフィックを滑らかに線画するためのパーツです。

またBIMでは膨大なデータを処理しなければならないため、容量が大きく、冷却性に優れたPCであることも求められます。

このようにBIMをスムーズに運用するには、ハイスペックなPCの導入や通信環境の整備が必要です。現在のインターネット環境によっては大幅な設備の入れ替えが発生する可能性もあります。

BIMと3D CADの違い

BIMは、もともと建設業界で広く使われていたCADとよく比較されます。CADとは「Computer Aided Design」の略称で、コンピューターを利用して建築物の設計図を作成できるツールのことです。

CADは2次元の平面を扱うのが一般的ですが、BIMは3次元のモデルを取り扱います。

ちなみにCADでも3次元のモデルを作成することはできますが、まず最初に2次元の図面を作成してから3次元モデルを作成しなければなりません。そのため修正や変更などが生じた場合、2次元の図面を変更してから3次元モデルを作り直す必要があります。

一方でBIMの場合、最初から3次元モデルを作成して、そのモデルに基づいて2次元の図面を作成します。3次元のモデルを修正・変更した場合は、2次元の図面にも変更が自動的に反映されるので、修正の手間がかかりません。

BIMとCADの違いや、メリット・デメリットについて、以下の表で確認してください。

【BIMとCADの特徴・メリット・デメリットなど】

BIMCAD
違い・最初から3Dモデルを作成できる
・変更を加えたら自動的に3Dモデルに変更部分が反映される
・設計だけではなく維持管理もできる
・2次元で図面を作成してから3Dデータを作成する
・変更や修正があったら、2次元の図面を変更してから3次元のモデルを作り直す必要がある
・あくまでも製図・設計をサポートするもので維持管理機能はない
メリット・3Dモデル構築が簡単
・建物完成後のPRやリニューアル計画に流用できる
・設計の初期から様々なシミュレーションが可能
・他の事業主や施工主への説明が簡単になる
・情報共有が簡単になる
国土交通省が普及促進しており今後主流になる可能性が高い
・手書きよりも設計作業を効率化できる
・図面をデジタルで管理・活用できる
・複数人でデータを共有できる
・品質の安定につながる
デメリット・導入コストがかかる
・従来の2次元図面より設計・修正に時間がかかる
・ネット環境が整っていないと利用しにくい
・導入コストがかかる
・定期的なハードの更新が必須
・CADよりも手書きの方が早い場合がある
・使いこなすのに時間がかかる
・BIMの普及促進により、CADからBIMへ切り替えが進んでいく可能性がある

代表的なBIMソフト5選

ここではBIM導入を検討している、もしくはBIMの価格が知りたいという人に向けて、代表的な5つのBIMソフトを紹介します。

1.ARCHICAD

ARCHICADは、ハンガリーの企業が開発したソフトウェアです。アイコンなどを利用して誰でも直感的に操作しやすい画面となっており、BIM導入が初めての企業でもスムーズに操作方法を覚えることができるでしょう。

PC上でも手書きと変わらない複雑なデザインや曲線が描けるようになっているので、デザインに力を入れたいという企業におすすめです。

また搭載されているクラウドシステムによって、場所や時間に関係なく、チームで作業を行うことができるようになっています。買い切り型のソフトとなっており、クラウドシステムを利用する場合はサブスクリプションでの支払いが必要です。

料金プラン

  • Archicad 25本体価格/1,016,400円(税込)
  • Archicad 25 Solo本体価格/508,200円(税込)
  • BIMcloud User License1年/28,600円(税込)

製品サイト:https://graphisoft.com/jp/solutions/products/archicad

2.VectorWorks Architect

VectorWorks Architectは、ドイツの企業が開発したBIMソフトです。

まるで2Dを描くように3Dモデルの作成ができるソフトで、平面的な形状を描けば自動的に立体の3Dモデルを作成してくれます。

また日本でよく使われる「木造建築」に特化した、木造系専用ツールが搭載されているのも特徴です。日本独自の仕様に対応した3Dモデルの作成が可能となっており、リフォームやリノベーションの際にも活用できます。

料金プラン

買い切り型

  • Vectorworks Architect 永続ライセンス/490,600円(税込)
  • Vectorworks Architect 永続ライセンス+年間保守/524,700円(税込)

サブスクリプション型

  • Vectorworksサブスクリプション1年間/245,300円(税込)

※なお動作確認のためのお試し版も利用可能。

製品サイト:https://www.aanda.co.jp/Vectorworks2023/vwa_index.html

3.GLOOBE Architect(グローブアーキテクト)

GLOOBEは、日本の福井コンピュータアーキテクト社によって開発されたBIMソフトです。

日本での建築設計に特化しており、日本独自の規格に適した図面やモデル作成がしやすくなっています。また日本の建築基準法に基づいた機能が各種搭載されており、設計の際にわざわざ日本の法律や規格を満たしているかチェックをする必要がありません。

逆日影斜線計算・逆天空アシスト・平均地盤算定・採光・換気・排煙など、企画設計から確認申請図まで作成できます。

料金プラン

買い切り型

  • GLOOBE Architect本体価格/650,000円(税別)
  • 各種オプション/300,000円~100,000円(税別)

※各種オプションあり。購入の際には見積もりが必須のため、上記は参考価格です。

製品サイト:https://archi.fukuicompu.co.jp/products/gloobe/

4.Rebro(レブロ)

Rebroは、日本のNYKシステムズという会社によって開発されたBIMソフトです。

誰でも簡単に3Dモデルが作成できるような仕組みとなっており、変更や修正が発生した場合でも自動的に断面図や平面図に反映してくれます。

さらに従来のCADにも対応しているので、CADとBIMどちらも並行して使いたいという方におすすめです。

料金プラン

  • Rebro建築設備ソフト/1,000,000円(税別)
  • Rebro電気ソフト/850,000円(税別)

製品サイト:https://www.nyk-systems.co.jp/

5.Tekla

Teklaは、鉄筋加工やコンクリートを専門とした業者に支持を得ているBIMソフトです。

複数の設計・解析ツールと連携できる仕組みとなっており、モデルや図面などと連携・可視化することによって、設計の効率的な管理や変更が可能となります。

建設設計のあらゆるフェーズの修正・変更に対応できるソフトのため、想定外の工程が発生してもTeklaを利用すればコストを最小限に抑えることが可能です。

料金プラン

  • サブスクリプション型

※見積もりが必須のため価格は非公開。導入を検討している場合は問い合わせが必要。

製品サイト:https://www.tekla.com/jp

日本国内におけるBIMの導入状況

国土交通省は「建築分野における現時点のBIMの活用・普及状況」を把握するために、次のような調査を行いました。

  • アンケート:IBMの活用状況・普及拡大に関するアンケート
  • 調査目的:建築BIM推進会議でのBIMの更なる普及に向けて議論を行うための、建築分野のBIMの活用・普及状況や、今後の普及に向けた課題等の把握。
  • 実施時期:令和2年12月11日~令和3年1月13日
  • 実施方法:建築BIM推進会議に参加する下記の13団体に、広く会員の回答を依頼。特に、団体ごとに各会員の関係部署単位での回答を依頼。

引用:建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<概要>|国土交通省

BIMの導入状況

引用:建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<概要>|国土交通省

国土交通省の調査によると、BIMの導入状況は「導入している」企業が約46%、それに対して「導入していない」企業が53%であることが分かりました。

企業の規模・分野別の導入状況

引用:建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<概要>|国土交通省

さらに導入状況を企業の規模・分野別にみてみると、どの分野でも企業規模が大きいほどBIM導入率が高いことが判明しています。

BIMを導入していない企業が今後導入する予定はあるかの調査

引用:建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<概要>|国土交通省

またBIMを導入していない企業に対して「今後導入する予定があるか」に関して調査したところ、約半分の47%の企業が「導入予定はない」と答えています。

BIMを導入しない理由

引用:建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<概要>|国土交通省

BIMを導入しない理由としては「発注者からBIM活用を求められていないため」がもっとも多い回答となっています。コスト面やBIMを活用できる人材不足面を懸念する企業も多く、今後必要とされない限りBIMを導入しないという企業も多いのではないでしょうか?

ですが国土交通省が「2023年までに小規模を除く全ての公共事業にBIM/CIMを原則適用」することを決めたように、今後企業がBIMの利用を迫られる場面も多くなるかもしれません。

まとめ

BIMの導入は、設計者だけではなく事業を主・発注主にも様々なメリットがあります。

一方でコストがかかったり、複雑なソフトを利用するためのインターネット環境を整える必要があったりなど、導入にあたって乗り越えなければならない課題は多いです。

すでに国土交通省ではBIM普及促進のために様々な活動を行っており、今後日本でもBIMを利用した建築がスタンダードになる可能性は十分あるでしょう。

BIMのメリット・デメリットやCADとの違いをしっかり理解して、BIMの導入を検討してみてはいかがでしょうか?

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