建設と建築は似て非なるものです。建設とはインフラに関する工事がメインであり、建築とは建物に関する工事がメインとなっています。本記事では、建設と建築の違いや具体的な工事内容の事例などを提示し、建設と建築の違いが分からない方に役立つ情報を紹介していきます。
建設と建築の違いとは
「建設」と「建築」はいずれも建物を建てることを目的とした業務です。言葉の響きが似ているため混同されることも多いですが、その内容にははっきりした違いがあります。
まず建設は、建物だけでなく、道路や橋、ダムなどの公共インフラの建設なども含む言葉です。これに対し建築は、住宅や商業施設、オフィスビルなどの建物を建てることを指します。つまり、建設は建物以外のインフラ整備も含まれるのに対し、建築は建物に限定されます。
それぞれの内容について、もう少し詳しく見ていきましょう。
建設工事
建設工事とは、土木工事、都市計画、公共インフラ整備などを主な業務とする分野です。たとえば道路、橋、ダム、上下水道、防災施設など、社会基盤の整備に関する工事も建設工事に付くまれます。土木工事としては、地盤改良、トンネル掘削、盛土、河川改修、海岸・埋立地の整備など、多岐にわたる工事があります。
建設工事には、施工管理技術、土木工学、建設機械の運転技術、測量技術などの専門知識や技術が必要です。また、多くの場合、地方自治体や国の予算によって実施されるため、公共事業の手続きに精通していることが求められます。
建築工事
建築工事は、建物の設計・建設に関わる工事です。対象となるのは住宅、商業施設、オフィスビル、公共施設、官公庁施設など多岐にわたる建物の建設で、それらの建物をつくるための建築設計や、建築施工管理、内装工事、外装工事、電気・空調設備の設置などが含まれます。
建築工事には、建築士、設計士、施工管理者、作業員など多くのスタッフが関わります。建築には、美的な要素や快適性、安全性、耐久性、省エネルギー性など、多くの要素が求められます。建築に関する法令や規則にも精通し、適切な手続きや安全管理が必要です。
建設と建築の具体的な工事内容
建設と建築の具体的な工事内容について、それぞれの代表例を紹介します。
建設工事の主な種類
上で説明したとおり、建設工事には社会基盤の整備や土地改良など、さまざまなものが含まれます。代表的な工事としては、たとえば以下のようなものが挙げられるでしょう。
道路工事
道路工事は、主に国道や都市高速道路、一般道路などの道路整備を指します。道路工事には、道路の舗装や橋梁の建設、トンネルの掘削などが含まれます。道路の整備は、交通の円滑化や安全性の向上に貢献することが期待されます。
橋梁工事
橋梁工事は、主に鉄道や道路などの橋梁整備を指します。橋梁工事には、鉄筋コンクリート橋や鋼橋などの建設、既存橋梁の補修や増設などが含まれます。橋梁は、地形や河川に合わせた高度な設計が必要とされ、長寿命化・耐震性の向上にも取り組まれています。
ダム工事
ダム工事は、主に水力発電や洪水調節などを目的としたダムの建設を指します。ダム工事には、コンクリートダムやアースダムなどの建設、ダム周辺の整備などが含まれます。ダムは、水の貯留や制御による災害の軽減など、社会的な役割が大きく、その耐久性や安全性には最大限の注意が払われています。
上下水道工事
上下水道工事は、主に水道や下水道の整備を指します。上下水道工事には、浄水場や水処理場などの建設、水道管の敷設、下水管の配管工事などが含まれます。上下水道は、衛生環境の向上に貢献することが期待されており、省エネルギー化や水資源の有効活用にも取り組まれています。
防災施設工事
防災施設工事は、主に地震や洪水などに対する防災施設の建設を指します。防災施設工事には、避難施設や避難場所、河川改修や治水堤防の建設などが含まれます。防災施設は、自然災害に備えることが期待されるだけでなく、避難者の生活環境や安全性の確保にも取り組まれています。
建築工事の主な種類
一方、建築工事は主に「建物」に関係する工事です。代表的なものとしては以下が挙げられます。
住宅建築
住宅建築は、主に戸建て住宅や集合住宅の建設を指します。住宅建築には、住宅の設計や建築施工管理、内装工事、外装工事などが含まれます。住宅は、家族や個人の生活に密接に関わるものであり、快適性や耐久性、安全性など、多様な要求があることが特徴です。
商業施設建築
商業施設建築は、主にショッピングモールや百貨店などの商業施設の建設を指します。商業施設建築には、店舗の設計や施工管理、内装工事、エスカレーターやエレベーターなどの設備工事などが含まれます。商業施設は、多くの人が利用する場所であり、安全性や快適性、アクセシビリティなど、多くの要素が求められます。
オフィスビル建築
オフィスビル建築は、主にビジネス用途のオフィスビルの建設を指します。オフィスビル建築には、ビルの設計や施工管理、内装工事、エアコンや照明などの設備工事などが含まれます。オフィスビルは、ビジネスの拠点であり、快適性や機能性、省エネルギー性などが求められます。
公共施設建築
公共施設建築は、主に病院や学校、公共団体の施設などの建設を指します。公共施設建築には、建物の設計や施工管理、内装工事、エアコンや照明などの設備工事などが含まれます。公共施設は、多くの人が利用する場所であり、安全性やアクセシビリティ、利便性などが求められます。
参考:建設業の28業種について
参考までに、建設業法に基づく「建設業許可」の種類(28業種)は以下の通りです。建設工事と建築工事のどちらも、一定以上の規模の工事を行う事業者は28業種のいずれかについて建設業許可を受ける必要があります。
※それぞれの具体的な内容については、国土交通省が公表している資料をご確認ください。
- 土木一式工事業
- 建築一式工事業
- 大工工事業
- 左官工事業
- とび・土工工事業
- 石工事業
- 屋根工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- タイル・レンガ工事業
- 鋼構造物工事業
- 鉄筋工事業
- 舗装工事業
- しゅんせつ工事業
- 板金工事業
- ガラス工事業
- 塗装工事業
- 防水工事業
- 内装仕上工事業
- 機械器具設置工事業
- 熱絶縁工事業
- 電気通信工事業
- 造園工事業
- さく井工事業
- 建具工事業
- 水道施設工事業
- 消防施設工事業
- 清掃施設工事業
建設と建築の違いを正しく理解しよう
建設は、土木工事や公共インフラ整備などを行い、施工管理技術や土木工学などの専門知識が必要とされる分野。そして建築は、主に建物の設計・建設に関する業務を行い、快適性や安全性、省エネルギー性などの要素が求められる分野です。
建設と建築はそれぞれ異なる専門分野ですが、どちらも多くの人たちの協力によって成り立っています。両者の違いについて理解することで、それぞれの分野での役割や業務内容がより明確になり、より良い協力関係を築いていくことができるでしょう。