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談合とはどのような行為?談合による民間企業のリスクを解説します

公開日:2023.04.18 更新日:2023.09.13
談合とはどのような行為?談合による民間企業のリスクを解説します

入札談合の弊害や、談合に対する処罰について解説します。談合は独占禁止法で禁止されている「不当な取引制限」にあたり、談合に加担した企業には課徴金が課され、悪質な場合には代表や担当者個人に対して刑罰が下されるという大きなリスクがあります。企業イメージが傷つき信頼回復には多くの労力と時間を要するため、談合は企業リスクにしかなり得ません。

談合とは?

談合とは、競争によって落札者を決める「入札」が実施されるときに、入札に参加する企業同士が事前に相談して受注する企業や金額などを決めてしまうことです。

公共工事の入札談合

国や自治体などの行政機関が実施する公共工事や、物品の調達に関する入札の際に行われる談合を、特に「入札談合」と言います。

行政機関の入札の財源は国民から集めた税金であり、落札金額を吊り上げかねない入札談合は、独占禁止法で規制されており、発覚した場合には厳しい処罰も用意されています。

談合の弊害

談合の弊害としては、次の二つが挙げられます。

  • 競争原理が働かなくなり、工事や物品調達のコストが不当に高くなる
  • 優れた提案をした企業が選定されず、品質が下がる

民間企業が他社と切磋琢磨しながら自社の品質や価格競争力を高める努力をして、正当な競争によって仕事を獲得するのが、自由競争を基本原理とする資本主義経済のありかたです。

入札談合はその根幹を揺るがすことになり、社会経済の弱体化を招きかねません。そのため、法律によって厳しく規制されています。

談合に対する処罰

入札談合は独占禁止法などによって規制されています。ここでは、その内容と処罰について解説します。

談合と独占禁止法

入札談合は独占禁止法第3条で禁止されている「不当な取引制限」にあたります。「不当な取引制限」とは、次のように規定されています。

「事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」

法解釈としては、次の二つが「不当な取引制限」に当たるとされています

  1. カルテル・・・特定の業界で大きなシェアを持つ企業間や業界団体が、価格を維持し自らの利益を確保するために販売価格や生産数量を取り決めて、競争を制限する行為
  2. 入札談合・・・国や自治体などの行政機関が実施する公共工事や物品の調達に関する入札の際に、入札に参加する企業同士が事前に相談して受注する企業や金額などを決めてしまう行為

課徴金制度

入札談合が発覚した場合には、「課徴金」という罰金制度が用意されています。

課徴金制度は、企業が独占禁止法違反行為を行っていた場合に、公正取引委員会が事業者に対して課徴金を国庫に納付することを命じる制度です。

課徴金の算定率は対象となる金額総額の10%(中小企業の場合は4%)とされており、違反行為に係る期間中の対象商品または役務の売上額、購入額に事業者の規模に応じた算定率を掛けて計算します。

また、課徴金が課される対象期間は、調査開始日から最長10年前まで遡及することにも注意が必要です。

さらに、独占禁止法違反行為を繰り返し、かつ違反行為において主導的な役割を果たした場合には、課徴金額が2倍になるという重い罰則も用意されています。

公契約関係競売妨害罪

悪質な入札談合は、刑法第96条の6に規定する「公契約関係競売妨害罪」に問われる可能性もあります。

これは、「偽計」または「威力」を用いて、「公の競売または入札での公正を害すべき行為」とされており、その刑罰は「3年以下の懲役」または「250万円以下の罰金」です。

過去には、入札談合や官製談合へ加担し受注した企業の代表者や実務担当者が刑に問われたケースがあります。

談合を防止するための法制度

近年、談合を事前に防ぎ抑止力を働かせる法制度が整備されています。ここでは「官製談合防止法」と「課徴金減免制度」について紹介します。

官製談合防止法

2003年に制定された「官製談合防止法」は、正式名称を「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」と言い、発注者側の談合への関与を禁止する法律です。

規制の対象となる発注者は「国、地方公共団体、特殊法人」とされており、次の4つの行為を「入札談合等関与行為」として禁止しています。

  1. 談合の明示的な指示
    【例】事業者ごとの年間受注目標額を提示し、事業者にその目標を達成するよう調整を指示する
  2. 受注者に関する意向の表明
    【例】受注者を指名又は受注を希望する事業者名を教示する
  3. 発注に係る秘密情報の漏えい
    【例】公開していない予定価格、指名業者の名称、入札参加業者の技術評価点等を漏えいする
  4. 特定の談合の幇助(ほうじょ)
    【例】指名競争入札において、事業者から依頼を受け特定の事業者を入札参加者として指名し入札談合を容易にする

官製談合防止法の規定に違反した職員には、「5年以下の懲役」または「250万円以下の罰金」という非常に重い刑罰が科されます。

課徴金減免制度

課徴金減免制度は2006年に独占禁止法導入された、比較的新しい法制度です。

独占禁止法違反が疑われるカルテルや入札談合の案件を公正取引委員会が調査することとなった場合に、調査開始日前に企業や団体がカルテルや入札談合を認め、調査に協力した場合に課徴金が減免される制度です。

具体的には、申告のタイミングが早い順に課徴金が減免されます。

  • 1位:100%
  • 2位:20%
  • 3〜5位:10%
  • 6位以下:5%

課徴金減免制度は談合に対する一定の抑止力となっており、制度の導入以来、カルテルや入札談合の自己申告が急激に増加しています。

直近では大手電力会社4社が、互いの営業エリアで顧客を獲得しないよう申し合わせていたとされる案件がありました。

この案件では、公正取引委員会が調査を始めるタイミングで最初に自己申告をした関西電力が課徴金を全額減免され、それ以外の3社に1000億円余りの課徴金が命じられたことが話題となっています。

参考:電力カルテル 1000億円余の課徴金命令へ 関電は免除か

談合に対する企業リスクを避けるためには

談合への加担は、一時的な仕事の受注にはつながる可能性もありますが、企業にとってはリスク要因でしかありません。

談合に関わるリスクと、企業が取るべき防止策について解説します。

談合の企業リスク

入札談合が発覚した場合には、課徴金が命じられるだけでなく、公共工事の指名停止、さらには代表および担当者が刑罰を受けるリスクがあります。

企業イメージも傷付き、信頼回復には多くの労力と時間を要するため、割に合わないことを企業内で周知徹底するべきでしょう。

談合を持ち掛けられた場合

企業側が公務員から官製談合防止法に抵触する優遇を受けた場合、官製談合への加担が疑われ処罰の対象となり得ます。

同業者から談合への加担を持ち掛けられた場合も、必ず経営者に報告する社内体制を確立しましょう。

長年の慣例だと言って、担当者が上司から指示を受け断ることが難しい場合もあり得るため、企業内で内部通報制度を用意すると効果的です。

企業を守るためには、談合には毅然とした態度で臨むことが必要でしょう。

談合は百害あって一利なし!企業リスクと捉えましょう

ここまで、談合について法律で禁止されている事項と課徴金制度などについて解説してきました。

長年の悪習として一部で続いてきた入札談合や官製談合を排除すべく、近年新たな法整備が進められています。

企業にとって談合は経営のリスク要因でしかありません。談合には一切関わらないことを、企業の経営者は社内で周知徹底しましょう。

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