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ダンピング受注とは?実績づくりのダンピング受注の企業リスクにはどのようなものがある?

公開日:2023.04.18 更新日:2023.09.13
ダンピング受注とは?実績づくりのダンピング受注の企業リスクにはどのようなものがある?

ダンピング受注の弊害と企業リスクを解説します。ダンピング受注を疑われて低入札価格調査が入ると、入札参加禁止や指名停止処分を受けるリスクがあります。実績作りのための極端なダンピング受注は避けましょう。過去の類似工事の入札価格を調査し、適切な積算を以て戦略的に入札に臨むのが原則です。

ダンピング受注とは?

ダンピング受注とは、入札制度において採算を度外視して安値で受注することを言います。

国土交通省では、「その請負の額によっては公共工事の適正な施工が通常見込まれない契約の締結」とダンピング受注を定義しています。

例えば、設計見積で予定価格が3,000万円とされている工事を、ある企業が極端に安値の1,000万円で入札し、工事を請け負うような場合を指します。

実際には実績を作りたい新参企業が、入札で受注を確実なものとするためにダンピング受注を試みるケースがときおり見られます。

ダンピング受注の弊害

ダンピング受注は公共工事において避けるべきものとされ、各種の規制措置が取られています。

値下げは受注を希望する企業の努力の結果で、発注金額も大幅に下がるため良いことではないのか?という疑問もあるでしょう。

ですがダンピング受注は、ダンピングした分の金額が品質の低下や労働者の低賃金に転嫁される恐れがある点で問題です。

ダンピング受注する企業が赤字分を自社で全て飲み込むことは現実的ではありません。実際には手抜きをして工事や物品の品質を下げたり、下請業者へ安値で発注して、赤字分を補填する可能性が高いでしょう。

その結果、下記のような問題が生じることが懸念されています。

  • 発注工事に従事する者の賃金その他の労務環境の悪化
  • 共通仮設費や安全対策費の削減による安全衛生管理の不徹底
  • 若年入職者の減少の原因となり、建設工事の担い手の育成及び確保が困難になる

ダンピング受注を防ぐための法整備

公共工事において、入札でのダンピング受注を防ぐために取られている措置について解説します。

公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律

2000年に施行された「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入札契約適正化法)」では、ダンピング受注の防止について国や地方公共団体、特殊法人等の発注者向けの4つの基本原則が示されていますいます。

  1. 透明性の確保
    毎年度の発注工事名、時期等の見通しを公表する
  2. 公正な競争の促進
    入札および契約に係る情報(入札参加者の資格、入札者・入札金額、落札者・落札金額等)を公表する
  3. 適正な施工の確保
    施工体制の適正化(丸投げの全面的禁止、現場施工体制の報告、発注者による現場の点検等)を促進する
  4. 不正行為の排除の徹底
    不正事実(ダンピング受注や談合等)について公正取引委員会や建設業許可行政庁へ通知する

入札金額の内訳の提出を義務付け

2014年に改正された入札契約適正化法では、ダンピング受注の防止のための措置として、「建設業者は公共工事の入札に係る申込みの際に、その金額にかかわらず、入札金額の内訳を記載した書類を提出するもの」とされました。

目的は、根拠の無い極端な値引きを抑制することです。

簡易な内訳書の例

参照:国土交通省HP

最低制限価格の設定と低入札価格調査基準

国土交通省の発令する「発注関係事務の運用に関する指針(運用指針)」では、ダンピング受注を防止するための対策として、発注者が「最低制限価格の設定」と「低入札価格調査基準」を必ず導入し、適切な活用を徹底することとされています。

そして、国土交通省の発注工事では「低入札価格調査」の対象となる金額の設定について下記の計算式が適用されます。(2022年4月1日以降に入札公告を行う工事が対象)

設定範囲

工事予定価格の75%から92%

計算式

  • 直接工事費×0.97
  • 共通仮設費×0.90
  • 現場管理費×0.90
  • 一般管理費等×0.68

➔上記の合計額×消費税

※計算式により算出した額が上記の「範囲」を上回った(下回った)場合には、上限(下限)値で設定する

入札において、落札金額がこの基準に基づいて算出した価格を下回った場合には、予算決算及び会計令第85条に規定されている「低入札価格調査」で落札者の履行可能性についての調査が実施されます。

その結果、履行可能性が認められない場合には、落札者としないことが定められており、次点の企業が繰り上がって落札することとなります。

最低制限価格とは、設定された金額を下回った入札金額を入れた企業は無条件で落選するという制度です。

入札の性質上非公表となりますが、この低入札価格調査の基準金額を下回る金額となることが多いと推測されます。

地方公共団体や特殊法人の発注工事においても、多くは国土交通所の指針に合わせた最低制限価格と低入札価格調査の金額設定がされています。

ダンピング受注の企業リスクは?

ダンピング受注は、現在の法制度では企業にとってリスク要因にしかならず、避けるべきことでしょう。

その理由をいくつか解説します。

入札の参加禁止や指名停止処分を受けるリスク

公共工事の入札でダンピングが疑われた場合には、前述の通り「低入札価格調査」が入ることがあります。

調査の結果、悪質なダンピング受注と認定され落選した場合には、一定期間の入札の参加禁止や指名停止などの処罰を受ける可能性があります。

処罰だけでなく、結果的に企業イメージを損なうリスクの方が大きく、長期にわたって受注機会を損失する事にもつながりかねません。

仮にダンピング受注に成功したとしても、長期的には割に合わないことと認識するべきでしょう。

入札は低入札価格調査基準を狙う

公共工事の入札においては、原則として工事の落札者と落札金額が公表されます。

入札受注の鉄則は、過去の類似工事の入札価格を徹底的に調査し、適切な見積・積算を作成して入札に臨むことです。

公共工事を受注したい企業が目指すのは、戦略的に低入札価格調査基準に近付けることと認識しましょう。

実績づくりのダンピング受注は信用失墜リスクのほうが大

ここまで、公共工事のダンピング受注の問題点と、ダンピング受注を規制する法整備について解説してきました。

工事の品質の確保と、従業員や下請け業者の労働環境を守るためにも、企業が実績作りのダンピング受注を試みるのは避けるべきことです。

企業イメージを守るためにも、適正な見積と戦略を持って入札に臨みましょう。

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