住宅性能評価制度とは、建物の性能を共通の基準で数値化してランク付けし客観的に分かりやすくするものです。住宅性能評価制度を利用することによって、戸建てやマンションなどの住宅の売買に関して安心・安全に取引ができます。
住宅性能評価とは?
住宅性能評価制度とは、いわゆる「品確法」で規定されている、住宅の建物性能を第三者機関が認証する任意の制度です。
新築住宅の場合は住宅性能評価について10分野32項目にわたる評価基準があり、それぞれの分野において性能に対する等級をランク付けしています。
住宅性能評価制度と「品確法」
住宅性能評価評価は、2000年(平成12年)に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」により発足した制度です。
この制度ができる以前は、住宅の耐震強度や断熱性能は、建築基準法で最低基準が定められているのみでした。
品確法で住宅性能評価制度ができたことにより、建築基準法を上回る性能を持つ住宅について、共通の物差しをもって性能を比較できるようになりました。
住宅性能評価書の交付
住宅性能評価は任意の制度ですが、指定の第三者機関による図面と施工状況のチェックを受けることによって「住宅性能評価書」が交付されます。
この住宅性能評価書は客観的な住宅の性能を担保するもので、その住宅単体の不動産としての価値を裏付ける証明になります。
新築住宅の住宅性能表示制度
新築住宅においては、下記の10分野で住宅の性能基準が定められています。
性能評価分野 | 評価対象項目 | |
---|---|---|
① | 構造の安定に関すること | 耐震等級、耐風等級、耐積雪等級、地盤又は杭の許容支持力等及びその設定方法、基礎の構造方法及び形式等 |
② | 火災時の安全に関すること | 感知警報装置設置等級、避難安全対策、 脱出対策、耐火等級 |
③ | 劣化の軽減に関すること | 劣化対策等級 |
④ | 維持管理・更新への配慮に関すること | 維持管理対策等級、更新対策 |
⑤ | 温熱環境に関すること | 断熱性能等級・一次エネルギー消費量等級 |
⑥ | 空気環境に関すること | ホルムアルデヒド対策、換気対策、室内空気の化学物質の濃度等 |
⑦ | 光・視環境に関すること | 単純開口率、方位別開口比 |
⑧ | 音環境に関すること | 重量床衝撃音対策等級、軽量床衝撃音対策等級、透過損失等級(界壁)、 透過損失等級(外壁開口部) |
⑨ | 高齢者等への配慮に関すること | 高齢者等配慮対策等級 |
⑩ | 防犯に関すること | 開口部の侵入防止対策 |
既存住宅の住宅性能表示制度
住宅性能評価は、新築住宅だけでなく既存住宅でも受けられます。
既存住宅の場合は現況調査を行い、劣化状況とあわせて現時点での性能を明確にします。評価項目は住宅から「音環境」を除いた9分野です。
住宅の売買やリフォームの際は、建物の立地や構造種類、経年数で価格が決まる傾向がありますが、住宅性能評価を用いるとそれに加えて客観的な性能による評価で建物の価値を査定することが可能になるというメリットが得られるでしょう。
トラブル発生時には紛争処理機関の利用が可能
住宅性能評価書が交付された住宅については、「指定住宅紛争処理機関」を利用できるメリットがあります。
指定住宅紛争処理機関とは、建設会社や不動産業者と住宅購入者の間の紛争処理を、裁判上の手続きによらず公平な立場で和解を促すものです。
紛争処理の手数料は1件あたり1万円と格安で、弁護士を依頼するよりもはるかに安価なことが大きなメリットです。
住宅性能評価制度と「長期優良住宅」
「長期優良住宅」は住宅の性能認定制度のひとつで、住宅性能評価制度と非常に関わりが深いものです。
健康で快適な生活を送るための性能を保持しつつ、経年による劣化が少なく、長期にわたって良好な状態で使用するための対策が取られた優良な住宅が対象となります。
所管行政庁が審査し一定の基準に達していると認められることで、長期優良住宅としての認定が受けられます。
長期優良住宅の定義
2009年(平成21年)に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律(長期優良住宅法)」により「長期優良住宅認定制度」が導入されました。
長期優良住宅として認定されるためには、一定基準以上の断熱性能と耐震性能が求められます。さらに、木材の腐朽やシロアリによる食害、コンクリートのひび割れによる鉄筋の腐食等の構造劣化に対して予防措置が取られていることも必要です。
長期優良住宅の認定を受ける方法
長期優良住宅としての認定を受けるためには、下記の(A)~(E)の5つの性能基準を満たす必要があります。
(A)住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること
①分野「構造の安定に関すること」…耐震等級3
③分野「劣化の軽減に関すること」…劣化対策等級3
④分野「維持管理・更新への配慮に関すること」…維持管理対策等級3
⑤分野「温熱環境に関すること」…断熱性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6
⑨分野「高齢者等への配慮に関すること」…高齢者等配慮対策等級3
(B)住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模(一戸建て住宅の場合75㎡以上)を有すること
(C)地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること
(D)維持保全計画が適切なものであること。(10年ごとの点検かつ30年以上の維持保全が必要)
(E)自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものであること
これらの項目について、登録住宅性能評価機関によって設計図書および維持管理計画書の適合確認が必要となります。
性能評価機関の確認後に所管行政庁に申請書を提出して、適合審査に合格すると「長期優良受託認定通知書」が交付されます。
長期優良住宅を建てるメリット
長期優良住宅を建てることには、以下のようなメリットがあります。
- 断熱性能が良く快適な居住空間を得られる
- 大地震でも建物の損壊を最小限に抑えられる
- 修繕に掛かるコストが抑えられる
- 各種の減税が受けられる(所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税)
- 住宅ローンの金利引き下げや地震保険料の割引などの優遇が受けられる
長期優良住宅にはこのように多くのメリットがあるため、住宅の新築を検討する際には積極的に検討すべきでしょう。
住宅を購入する際には住宅性能評価を利用して安全に取引をしましょう
住宅性能評価制度は、建物の性能を第三者が客観的に評価する制度であり、住宅のスペックを比較検討するうえで大きく役に立ちます。また、不動産会社や住宅会社との打ち合わせにおいても、客観的な性能数値をベースにした話ができるため、取引において消費者を守る制度と言えます。
既存住宅の売買の際にも大きな効力を発揮する住宅性能評価制度を、ぜひ積極的に活用してください。