建築・建設の分野に欠かせない設計士は、将来性の高い職業のひとつです。本記事では設計士を目指す方に必要なスキルや資格、資格取得に向けた勉強方法、設計士としてキャリアアップする手段などについて解説します。
設計士とは?
設計士と聞いて、「設計を行う専門家」というイメージを持つ人も多いと思います。しかし実際のところ設計士について決まった定義はなく、設計士という資格があるわけでもありません。つまり設計に携わっている人なら誰でも設計士といえます。「特に資格を持たずに、設計に携わっている人」というのが、実際の設計士のイメージに一番近いでしょう。
設計士の仕事内容
設計士の仕事は多岐にわたりますが、代表的なものとしては以下の3つが挙げられます。
小規模な木造建築物の設計
「設計」士というくらいですから、設計士にとってもっとも重要な業務は設計です。ただしどんな建物でも設計できるというわけではなく、原則として「延べ面積が100平方メートル未満の木造建築物」など、小規模な建築物の設計のみ行うことができます。
建築士の補助
設計士は、条件付きで大規模な建築物の設計に携わることもできます。条件とは「建築士の業務を補助する」ことです。メインで設計を担当するのはあくまで資格を持つ建築士ですが、設計士はそのサポート役として建築物の一部を設計します。
施主との打ち合わせ
直接の設計業務ではありませんが、施主の要望をヒアリングしたり、提案をしたりするのも設計士の仕事の一部です。設計士は単独で施主と打ち合わせすることもできますが、実際には建築士と施主の打ち合わせに同席するのが一般的です。
建築士との違い
すでに説明した通り、設計士には明確な定義はありません。これに対し「建築士」とは、一級建築士、二級建築士、木造建築士のいずれかの国家資格を持つ人のことです。
設計士は小規模な木造建築の設計や建築士のサポート業務が中心ですが、建築士は所有している国家資格の種類に応じて、より規模の大きい建築物を設計できます。
設計士と建築士の違いについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もお読みください。
参考:設計士と建築士の違いを解説!業務範囲や気になる年収についても解説します
設計士になるには何が必要?
設計士になるために特別な資格は必要ありません。とはいえ、何のスキルも持たないまま設計士になる(設計士と名乗る)人はほとんどいないでしょう。
では、設計士にはどのようなスキルが求められるのでしょうか。
設計の知識
設計士には、建物や設計についてある程度の知識が必要です。たとえ建築士などの国家資格を取得していなくても、建築について一通りの勉強をしている必要があります。こうした知識は専門学校や大学などで学んだり、設計事務所の実務を通して身に付けることができるでしょう。
創造性
建物に限らず、新しいものを生み出すためには創造性や感性が必要です。デザインに関する創造性はもちろん、快適な建物、効率的な建物、低コストな建物など、あらゆる設計に創造性が活かされるでしょう。
空間把握能力
設計は平面の紙やパソコンの画面上で行いますが、実際に建築される建物などは立体物です。このため設計士には、平面図から立体物を思い描いたり、逆に立体物を平面の図面で表現したりできる空間把握能力が必要となります。
コミュニケーション力
設計士の仕事には、建築士のサポートや施主との打ち合わせが含まれます。このため、他の人と円滑に意思疎通するコミュニケーション力が欠かせません。特に相手が思っていることをスムーズに引き出し、相手のことを理解する能力は重要です。
理系の知識
設計の仕事には、さまざまなジャンルの知識が関係しています。特に化学物質(塗料や防腐剤、防虫剤など)についての知識や、構造力学などの知識は、設計をするうえで大いに役立つでしょう。
資格は必要ないが…
設計士に特別な資格はありませんが、建築士の資格取得を目指して勉強することは設計士の仕事にとって大いに役立ちます。
建築士の資格とは、以下の3つの国家資格です。
①一級建築士
規模や材質にかかわらず、あらゆる建物の設計ができる資格です。また建築物の設計だけでなく、工事の監理や監督、行政機関とのやりとりを行うこともできます。この資格を持っている人は「建築士」として働くのが一般的で、ある意味設計に関する最高峰の資格です。設計士の中には、設計事務所で働きながら一級建築士の資格取得を目指す人も大勢います。
②二級建築士
高さ13m、軒高9mを超えない建築物や、延べ面積が1000平方メートル以下の建築物を設計できる資格が二級建築士です。一級建築士と同じように、無資格の設計士として働きながらこの資格を目指す人も少なくありません。また二級建築士は一級建築士の受験資格でもあるため、ステップアップの過程として取得を目指すケースもあります。
③木造建築士
木造建築士の国家資格は、階数2階建て以下、延べ床面積300㎡以下の木造建築物を設計する場合に必要です。設計できる建物の規模は3つの資格の中で一番小さいものの、木造建築ならではの専門知識が必要となります。設計士として働く人のなかには、この資格を目指す人もいます。
設計士になるための勉強方法
設計士になるための決まった勉強方法はありません。極端な話、上で説明したスキルを身に付けていれば、誰でも設計士を名乗ることができるでしょう。
とはいえ設計に関する知識は複雑で、しかも建築関係の法律や条令はしばしば改正されます。もちろん独学でもこれらの知識を身に付けることは可能ですが、専門学校や大学などを通して学ぶのが一般的でしょう。
さらに、設計事務所に就職したあとの「実務経験」も大いに役立ちます。自分自身も設計士の卵として働きつつ、先輩社員や建築士のサポートをすることで、その仕事ぶりを見て学ぶことができます。
他にもインターネットや専門書など、設計に関するノウハウを学ぶ手段はたくさんあります。ぜひ設計士を目指して勉強してみてください。
設計士のキャリアについて
設計士としてどのようなキャリアを積み重ねていくかは人それぞれです。とはいえ、一般的には以下のようなキャリアを描くことが多いでしょう。
建設会社や設計事務所で働く
建設会社、設計事務所などに入社し、小規模な木造建築を設計したり、建築士の補助をしながら活躍の幅を広げていくパターンです。活躍の幅が広がれば会社内での立場や役職が上がり、お給料もアップするでしょう。
国家資格の取得を目指す
主に建築士のサポート業務をしながら、自らも建築士の資格取得を目指す人も大勢います。建築士試験で問われる知識を身に付けるには、実際に建築士の仕事を間近で見るのが効果的です。また原則として、建築士の試験には、受験資格として実務経験が必要です。設計士として働きながら実務経験を積み重ねるのも、キャリアアップの手段といえるでしょう。
独立起業する
設計士として十分な知識やノウハウ、そしてネットワークを持っているなら、自分の設計事務所を開くのもひとつの選択肢です。ただし無資格の設計士に大がかりな設計はできません。まずは小規模な木造建築に特化した事務所として開業し、実務をこなしながら建築士の資格取得を目指す(=設計事務所の業務範囲を広げていく)のが現実的でしょう。
海外で活躍する
設計士が働く場は国内だけとは限りません。場合によっては、海外の設計事務所や建設会社に就職して、海外の建築物を設計することもあるでしょう、
設計士のスキルを身につけて、活躍の場を広げましょう
設計士には、建設会社や設計事務所で働くほか、独立・起業したり建築士をめざしたりといった、さまざまな道があります。設計士の仕事に興味を持っている方がいれば、ぜひ自分に合った方法でスキルを身に付けて、設計士の仕事に取り組んでみてください。