本記事では、建設業界におけるプロジェクトマネージャー(PM)の役割や仕事内容について詳しく解説します。また、PMに求められるスキルや必要な資格についても紹介し、建設業界でのPMの活用に関心のある方々に有益な情報を提供します。
PM(プロジェクトマネージャー)とは
PM(プロジェクトマネージャー)とは、プロジェクトの計画、実行、監督、終了までの一連のプロセスをマネジメント(管理)する専門家です。PMはチーム全体がタスクを効率的に実行できるよう、プロジェクト全体を通してコストやスケジュール、クオリティ、法令遵守などを指揮・監督し、その成果に責任を持ちます。
PMが活躍する主なプロジェクトとしてしばしば挙げられるのは「システム開発」です。しかし建築や建設のプロジェクトにおいても、質の高い建築物を作ったり、業務を円滑に実行したりするうえで重要な役割を果たします。
プロジェクトリーダーとの違い
PMと響きがよく似た役職に「プロジェクトリーダー」があります。プロジェクトリーダーは、プロジェクトを構成するパートごとのリーダーです。PMよりも現場に近い立場で、自分のチームに所属するメンバーをマネジメントし、具体的な業務を遂行します。
これに対しPMはより高いレベルで、プロジェクト全体の方向性やリソース配分など、重要な意思決定を行います。
プロダクトマネージャーとの違い
「プロダクトマネージャー」という言葉もPMとよく似ています。プロダクトマネージャーは「プロダクト(製品)」のマネジメントをする人、つまり製品開発の責任者のことで、自社製品の開発や改善を通してユーザーに価値を提供し、企業に利益をもたらすことに責任を持ちます。
これに対しPMの役割は、あくまでプロジェクトの管理です。製品開発もプロジェクトの一種ですから、両者の役割は重なる部分もありますが、イコールではありません。
建設業におけるPMの役割
PMはあらゆる業界で活躍する役職ですが、とくに建設業界においては、以下のような役割を担っています
プロジェクトに関する意思決定
PMは、建築プロジェクトや建設プロジェクトの目標達成(工事の完了)に向けて、以下に挙げる「コスト、スケジュール、品質管理」や「ステークホルダーとの調整・連携」などの要素を考慮して、適切な意思決定を行います。
コスト、スケジュール、品質管理
PMは、予算内で建築プロジェクトや建設プロジェクトを完了させるために、コスト管理を行います。とくにクライアントが建築・建設の知識を持っていない場合、設計者や施工主に言われるままコストが膨らんでしまうことがないよう、しっかり管理することが重要です。
また、スケジュールの順守や品質基準を満たすこと、さらにはプロジェクトが法令に遵守していることも確認します。
ステークホルダーとの調整・連携
PMは、クライアント、サブコントラクター、関連部署、地域コミュニティなど、プロジェクトに関与するあらゆるステークホルダーと交渉・調整を行い、円滑なコミュニケーションを図ります。
PMの具体的な業務
さらに、PMの具体的な業務について見ていきましょう。
プロジェクト計画の作成
プロジェクト計画の作成は、PMにとって最初の重要な業務になります。
プロジェクト計画を立てる目的は、プロジェクトの目的や範囲、コスト、スケジュール、リスク、品質基準などを明確にすることです。作成された計画は、プロジェクトの進捗を追跡し、チーム全体が同じ目標に向かって働くための基盤となります。
リソース管理(人員、資材、機械等)
プロジェクト計画が固まったら、それが円滑に実施されるよう、適切なリソース(人員、資材、機械等)がプロジェクトに割り当てられるようにします。もちろん、単にリソースを割り当てるだけでなく、リソースを効率的に活用する方法を確認し、必要な調整を行うのも重要な業務です。
リスク管理
PMは、プロジェクトが直面する可能性のあるリスクを特定し、リスクの脅威レベルを評価するとともに、リスクによる悪影響を最小限に抑えるために必要な対策を立案・実行します。
契約や法規制の管理
PMは、プロジェクトが契約条件や法規制を遵守して行われるよう管理します。上で説明したリスク管理とも関連しますが、プロジェクトの進行によって法的な問題や紛争が発生しないよう、情報を収集し、関係各所や専門家と連絡を取るのもPMの重要な役割です。
進捗報告や情報共有
PMには、プロジェクトをスムーズに進行させる責任があります。もちろん、プロジェクトの進捗を定期的に報告し、クライアントや関係者と情報を共有することも業務の一部です。もしプロジェクトの現状に問題があるなら、必要に応じて計画の修正や調整を行います。
PMに求められるスキル
PMはプロジェクトを成功に導くキーマンです。当然ながら、これは誰にでもできる業務ではありません。PMとして働くためには、一般に以下のようなスキルが必要とされています。
コミュニケーション力
PMには、クライアントやプロジェクトのメンバー、外部の専門家などと円滑にコミュニケーションを取り、意思疎通を図るよう求められています。このため、一定水準以上のコミュニケーション力は必須といえるでしょう。
リーダーシップ
PMはプロジェクトの中心です。プロジェクトをスムーズに進めるためには、チームメンバーを適切に配置し、士気を高め、それぞれが自分の能力を発揮できるよう指示を与えなくてはなりません。これにはリーダーシップが必要です。
プロジェクト管理力(タイムマネジメント、リスクマネジメント等)
PMはプロジェクト全体のタイムマネジメントやリスクマネジメントを行い、効率的にプロジェクトを遂行します。これらのスキルは、プロジェクトの成功に直接影響を与える重要な要素です。
論理的思考力
プロジェクトが直面するかもしれないリスクを予測し、プロジェクトの進行によって発生する複雑な問題や課題に対処するには、論理的な思考力が必要です。リスクを予見できない、あるいは発生する課題に場当たり的な対応をしているようでは、プロジェクトの成功は難しくなります。
ネゴシエーション力
契約交渉やリソース調整、紛争解決などの際にはネゴシエーション力(交渉力)が求められます。ネゴシエーション力を持つことで、プロジェクトの利益を最大化し、関係者間のトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
PMに役立つ資格
PMをするために「必須」の資格はありません。ですが、いくつかの資格はPMの能力を証明するのに役立ちます。
PMP(Project Management Professional)
PMPは、プロジェクトマネジメントに関する国際的な資格です。世界最大のプロジェクトマネジメント協会「PMI」が実施しており、日本でもPMI日本支部を通して受験できます。
PMP試験は、プロジェクトマネジメントに関する受験者の経験、教育、知識のレベルを測り、「プロフェッショナル」であることを認定します。
なお、PMP試験は法的な資格や免許ではありませんが、「PMのデファクトスタンダード」として各業界から認知・信頼されています。
参考:PMP®資格について | 一般社団法人 PMI日本支部
プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験は、「独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)」が実施しているPMに関する試験です。
対象者は「高度IT人材として確立した専門分野」を持ち、プロジェクトマネジメント業務を単独またはチームの一員として担う人で、PMに求められる各業務の知識やスキルを測定します。
主にシステム開発など、IT分野で注目されている資格ですが、もちろん建築プロジェクトや建設プロジェクトでも能力の証明になるでしょう。
PMを活用して建設プロジェクトを円滑に進めよう
プロジェクトはスムーズに進行し、期間内に品質の高い成果物を完成させるうえでPMは必要不可欠な存在です。建設プロジェクトに携わるすべての関係者は、PMの重要性を十分に理解して、PMと協力しながらプロジェクトを遂行することが大切です。