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デザインビルド方式とは?メリット・デメリットと公共工事での導入事例も紹介します!

公開日:2023.06.19 更新日:2023.06.19
デザインビルド方式とは?メリット・デメリットと公共工事での導入事例も紹介します!

デザインビルド方式は、設計と施工を同じ会社に一括して発注する方式です。この記事ではデザインビルド方式のメリットやデメリット、プロジェクトを成功に導くためのコツを具体的に解説します。

デザインビルド方式とは?

デザインビルド方式(DB方式)とは、工事や設計業務等を発注する際に業者を決める発注方式のひとつです。その特徴は設計および施工の両方を同じ会社に一括して発注することであり、設計施工一括発注方式とも言います。

従来、公共工事では設計は設計事務所に、施工は建設会社に分離して発注することが一般的でした。これに対しデザインビルド方式では、設計と施工を一括で対応できるゼネコン等に発注します。

発注者側の専門知識や経験、人的リソースの不足を補うため、デザインビルド方式では企画設計の段階からコンストラクションマネジメント会社が参画して、発注者の立場に寄り添って企画設計や要件設定を実施し、その情報に基づいて業者を選定するという流れが多く試みられます。

引用:公益財団法人 水道技術研究センターホームページ「DB(デザインビルド)について

関連記事:設計施工一括発注方式の特徴とは?メリット・デメリットや導入時の注意点について解説します

公共工事におけるデザインビルド方式

2014年6月に「公共工事の品質確保の促進に関する法律」が改正され、公共工事においてもさまざまな発注方式の採用が認められるようになりました。

〈発注方式の例〉

  1. 工事の施工のみを発注する方式(従来型の発注方式)
  2. 設計施工一括発注方式
  3. 詳細設計付工事発注方式
  4. ECI方式
  5. 維持管理付工事発注方式

実施設計の全部または一部を施工者が担うという点で、②③④の発注方式は広い意味でデザインビルド方式と言えます。

引用:国土交通省ホームページ「Ⅳ.多様な入札契約方式の選択・活用

また地方公共団体では技術職員が年々減少し、業務負担が非常に増しています。こうした事情からも、コンストラクションマネジメント会社の活用が推進されています。

これに関連して、2020年9月には国土高越省から「地方公共団体におけるピュア型CM方式ガイドライン」が発行されました。

デザインビルド方式のメリット

デザインビルド方式のメリットとして、コストの削減効果とプロジェクトの事業期間を短縮する効果が期待されています。

設計と施工を一括発注することで、発注者は受注者に責任を一元化でき、施工ノウハウや専門技術を反映した合理的な設計を期待できるようになります。これにより発注者にとっては、計画の初期段階からコストコントロールをしやすくなるというメリットが得られるでしょう。

また、設計から施工への移行がスムーズになるため、実施設計〜工事入札へと進む従来の流れと比較して、事業期間を大幅に短縮できる可能性があります。

デザインビルド方式のデメリット

デザインビルド方式のデメリットは、設計事務所の介在が無いことにより工事の仕様や施工方法等の客観性が不足し、工事費の妥当性が検証しづらくなることです。

また発注者側からコストアップにつながる要望がしづらくなることや、入札や相見積など競争原理による工事費のコストダウンが狙いにくくなることもデメリットとして挙げられるでしょう。

客観性の不足を補うためにも、コンストラクションマネジメント会社の活用が促進されており、その役割に注目が集まっています。

デザインビルド方式を成功させるためのポイント

デザインビルド方式を成功させるための二つのポイントについて解説します。

発注者主導で「要項書」を策定する

デザインビルド方式を採用するにあたっては、基本計画や発注要件を発注者側でまとめた「要項書」の策定が必須です。

要項書には、設計から工事完工までの各段階で要求する成果物と希望納期、希望する建築物の仕様・性能と費用などを盛り込みます。

要項書の策定は、工事の仕様や要求性能を決定する主導権があくまで発注者側にあることを明らかにしておくために、非常に重要なプロセスと言えるでしょう。

コンストラクションマネジメント会社を活用する

設計のスキルや施工のノウハウの蓄積が発注者に無く、要項書の作成が難しいケースもあります。

その場合は、企画あるいは基本設計の段階からコンストラクションマネジメント会社に参画を依頼することが賢明でしょう。

コンストラクションマネジメント会社への外部委託費用が余計に掛かるものの、プロジェクト全体での工期短縮と発注方式の適切な選定で、それを上回る大幅なコスト削減効果が得られる可能性もあるため、積極的に活用しましょう。

デザインビルド方式の事例

デザインビルド方式の事例①山形県米沢市庁舎建替事業

建築、家具什器等を含めた基本計画策定支援からコンストラクションマネジメント会社が参画し、基本設計を含むデザインビルド方式での庁舎建設の総合的な支援を実施しました。

特別な事業債を活用するために厳しいスケジュールの中で事業の完了期限を遵守することが必要でしたが、可能な限りのコスト縮減を達成し、基本計画で策定した予算を下回る実績を挙げています。

デザインビルド方式の事例②神奈川県横浜市庁舎移転新築事業

横浜市庁舎移転新築事業は、オリンピック開催直前の開庁を目指し設計着手から竣工まで47か月という非常に短いプロジェクト期間でしたが、デザインビルド方式の採用で工期短縮を実現しています。

設計と施工時に必要なマイルストーンを設定し、その時に何を承認するかを事前に定め、そこに向かって参画者全員が共通の課題認識を持って取り組めるようにプロジェクトのコントロールがなされました。

デザインビルド方式の最大のメリットである「コンカレントエンジニアリング(設計と生産計画と工事施工の同時並行作業)」を滞りなく実施した好例と言えます。

デザインビルド方式の事例③福島県大熊町役場新庁舎建設事業

2019年5月に開庁した福島県大熊町役場新庁舎建設事業は、基本設計からデザインビルド方式を適用した初めての公共施設です。

震災復興事業であるため、通常の半分もない超短期間という厳しい時間的制約がありましたが、コンストラクションマネジメント会社主導で大幅に工期短縮に成功しています。

公共施設建築ならではの意思決定および承認にかかる業務フローを把握したうえで先回りして対処することで、行政の仕組みを崩さずにデザインビルド方式のメリットを引き出すことに成功しています。

デザインビルド方式を採用してプロジェクト工期を短縮し予算管理を成功に導きましょう

ここまで、デザインビルド方式の概念と手法、メリットなどについて解説してきました。

プロジェクトを成功に導くためにはさまざまな手法が考えられますが、近年成果を挙げているのがコンストラクションマネジメント会社を活用して客観性を担保したうえでのデザインビルド方式の採用です。

この記事を参考にしていただき、上手にプロジェクトのコスト削減や工期短縮を実現しましょう。

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