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日本とアメリカの建設業界はどう違う?労働環境や導入技術の違いを中心に解説します

公開日:2023.06.19 更新日:2023.06.19
日本とアメリカの建設業界はどう違う?労働環境や導入技術の違いを中心に解説します

さまざまな分野で最新技術を導入しているアメリカ。もちろん、建設業界も例外ではありません。この記事では日本とアメリカの建設業界について、労働環境や技術面の違いを中心に解説していきます。

日本とアメリカの建設業はどう違う?

建設業は国の基盤となる重要な業界です。日本はもちろん、アメリカでもこれは同じです。しかし日本とアメリカの建設業界には、いくつかの違いも見られます。

市場規模

日本とアメリカの建設業の違いとして、まず挙げられるのが「市場規模」です。少し古いデータになりますが、2020年の数字で比較してみましょう。

日本の建設業界:52兆3784億円

アメリカの建設業界:約1.3兆ドル(当時のレートで約137兆5400億円)

このように、アメリカの建設業の市場規模は日本の2.7倍近くに上ります。

ゼネコンの有無

もうひとつの大きな違いは「ゼネコン(ゼネラルコンストラクター)」の存在です。ゼネコンとは設計から施工、研究まで自社で請け負う総合建設業者のことを指します。

日本の建設業界で重要な役割を占めているのは、スーパーゼネコンや準大手ゼネコン、中堅ゼネコンなどと呼ばれる大手企業です。建設プロジェクトの多くはこれらのゼネコンが建設工事一式として請け負い、そこから関連会社や協力会社などの下請けに発注されます。

大型の建設プロジェクトになればなるほど、ゼネコンは「なくてはならない要(かなめ)の存在」であるといえるでしょう。

これに対し、アメリカにはゼネコンと呼べる会社は比較的少数です。もちろん「ベクテル(Bechtel Corporation)」や「キーウィット(Kiewit Corporation)」といった、世界有数の規模を持つ巨大ゼネコンは存在します。ただ日本のようにほぼすべての建設工事をゼネコンがマネジメントするという慣習はありません。建設プロジェクトの大小にかかわらず、設計と施工監理はそれぞれ別の会社に発注されるのが基本です。

関連記事:スーパーゼネコンの売上高ランキング|事業内容・各社の特徴・社風を徹底比較!

関連記事:中堅ゼネコンと準大手の違いとは?各社のデータや特徴まとめ

労働環境

労働環境にも違いがあります。ここでは「労働組合」「労働時間と休日」に分けて説明します。

  • 労働組合

日本の建設業界では、基本的に、ゼネコンをはじめとする各企業ごとに労働組合が組織されています。ただし社員の少ない中小企業や零細事業者が社内に労働組合を組織するケースはほとんどなく、結果として労働組合に加入していない建設作業員は少なくありません。

一方、アメリカでは職種別に全国規模の労働組合が組織され、建設作業員のほとんどがそれに加入しています。組合員の規模は100万人以上ともいわれ、労働者の権利を守るしっかりとした基盤ができています。

  • 労働時間と休日

日本の建設業界では、建設作業員の休日は工事の進行状況によって変わります。基本的には労働者より工期が優先されるため、工期に余裕のない現場では週1日休みというケースもめずらしくありません。また現場ごとに休日が変わるのも一般的です。

これに対しアメリカの建設作業員は土日休みが当たり前で、1週間あたりの労働時間の長さも「40時間」と明確に定められています。労働者の権利は労働組合にしっかりと守られ、ルールに違反した場合は会社も作業員も処罰対象となるのが特徴です。

平均年収

建設作業員の収入についても違いを見てみましょう。

日本の建設業界の平均収入は、全職種の平均年収よりも高めです。2020年の統計によると、職種全体平均年収が約433万円だったのに対し、建設業の平均年収は約504万円でした。

一方アメリカでは全職種の平均年収に比べ、建設業界の平均年収は低めとされています。それでも具体的な平均年収金額は約54,000ドル(日本円で約580万円)で、日本の建設作業員の年収よりも高額です。

生産性の高さ

日本の建設作業員とアメリカの建設作業員は「生産性」も異なります。日本人が7人がかりで5時間かかる作業を、アメリカ人はたった4人で、しかも3時間で終わらせることができるという話も聞きます。

この生産性の違いを生み出しているのが「デジタル技術」です。日本でも近年デジタル技術の導入が進められていますが、アメリカはそれよりずっと以前から、最先端の技術を建設現場に取り入れてきました。たとえば、以下のような「先進技術」です。

  • BIM

BIMというのは建物の設計や施工監理を、コンピュータ内に作成した3Dモデル(立体モデル)を使って行うものです。3Dモデルはネットワーク上で共有できるため、関係者同士の情報共有がスムーズになります。もちろん人為的なミスを避けられる点も大きなメリットです。日本の建設業界ではBIMの導入は道半ばですが、アメリカでは2012年の時点で、すでに約7割の工事にBIMが導入されていました。

  • ドローン

建設現場でのドローン活用も広がっています。特に「ドローン測量」は従来の測量と比べて低コストなうえ、作業スピードが格段に早いため、作業効率のアップに大きく貢献してきました。日本でも注目度の高い技術ですが、やはり導入時期の早さも、導入率もアメリカの建設業界の方が進んでいます。

  • 3Dプリンター

アメリカやヨーロッパでは、3Dプリンターで作った「家」が話題になっています。通常の建材で家を建てるよりも、3Dプリンターで家を出力する方が早く(1〜2日程度)、そして低コスト(数百万円程度)です。なお日本でも2022年に3Dプリンターの家が販売されていますが、本格的な普及にはまだほど遠い状況です。

環境の改善が進む日本の建設業界

ここまで日本とアメリカの建設業界を比較してきました。アメリカの建設業界はさまざまな面で日本の建設業界よりも優れていましたが、その差は次第に埋まりつつあります。

特に建設作業員の労働環境・労働条件の改善は顕著です。たとえば2021年4月からは、正社員と非正規雇用の格差を解消することを目的とした「同一労働同一賃金」が導入されました。

また2023年4月からは、月60時間を超える時間外労働に対して、企業の規模に関係なく50%の賃金割り増しが義務づけられています。

さらに2024年には建設業界でも「働き方改革関連法」が本格的に施行され(※)、「月45時間、年360時間」を超える労働は時間外労働となります。

※他の業種では2019年から施行されていましたが、建設業界では5年間の猶予期間が設定されていました

加えて、すでに説明したとおりBIMやドローン、3Dプリンターなどの先端技術の活用も少しずつですが始まっています。

これらの取り組みが加速すれば、日本とアメリカの建設業界に見られる格差は縮小していくに違いありません。

日本の建設業の特徴や変化に注目していこう

日本の建設業界では、少子高齢化や厳しい労働条件などにより人手不足が深刻です。こうした課題を解消するには、アメリカなど海外の建設業界の「良い部分」を積極的に取り入れていく必要があります。2024年に完全施行される働き方改革関連法による変化や、最新技術の導入による生産性の向上に、引き続き注目していきましょう。

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