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経営事項審査とは?点数のしくみと点数アップのコツを紹介します

公開日:2023.06.19 更新日:2023.06.21
経営事項審査とは?点数のしくみと点数アップのコツを紹介します

公共工事の入札に参加するには「経営事項審査(経審)」を受ける必要があります。経審では建設会社を全国統一基準で採点し、総合評定値という点数を付けます。本記事では経審の仕組みと、点数をアップさせるためのポイントについて説明していきます。

経営事項審査(経審)とは?

経営事項審査(以下、経審)は、建設業者を対象とした評価制度です。日本では建設業を29の種類(2種類の一式工事、27種類の専門工事)に分類していますが、それぞれの業種ごとに「経営規模」「経営状態」「技術力」「その他」の4項目で評価が行われます。

建設業者にとって、経審を受けることは必ずしも「義務」ではありません。経営事項審査申請にはいくらかの手数料(おおむね1万円前後)もかかりますし、申請書類の作成などの申請手続きには手間もかかります。手続きを行政書士に依頼した場合の依頼報酬は、数万円程度です。

それでも、多くの建設業者は経審を受けています。なぜなら経審は、公共工事の入札に参加するうえで「必須」だからです。また民間工事の中にも、経審を受注の条件としているものがあります。

仮に公共工事に参加せず、経審を必要とするような民間工事を受注しない場合でも、経審によって自社の経営状態や技術力を客観的に振り返ることは、経営改善に向けた取り組みの基礎になるでしょう。

経審と「ランク」の関係

経審では、いくつかの評価項目ごとに建設業者を「点数化」します。おおざっぱにいうと、この点数を合計したものが経審の結果です。この点数は建設業者の「ランク付け」に利用されます。そしてランクによって、入札に参加できる公共工事の規模が変わります。

ただし一般的には、経審の点数はそのまま格付け(ランク付け)の根拠となるわけではありません。経審の点数は「客観点」と呼ばれますが、そのほかにも自治体独自の「主観点」と呼ばれる評価点もあり、そのふたつを合計した点数でランクが決まります。

いずれにしても、公共工事の入札などに参加するうえで経審の点数は非常に重要です。

経営事項審査の点数制度

経審では、最終的な点数を「総合評定値」もしくは「P点」と呼びます。そして総合評定値(以下、P点)は、評価項目ごとに採点される5種類の点数(評点)を使って計算されます。ここではそれぞれの点数制度について見ていきましょう。

総合評定値(P点)について

P点は経審の結果となる数値です。P点は、5つの評点を以下の式に当てはめて計算します。

P点=X1×0.25+X2×0.15+Y×0.2+Z×0.25+W×0.15

この式を構成する「X1」「X2」「Y」「Z」「W」が評点です。経審で少しでも高い評価を受けるためには、5つの評点ごとに点数を上げていく必要があります。

X1(完成工事高評点)とは

X1は「完成工事高評点」ともいい、P点全体の4分の1(25%)を占める重要な要素です。

X1では、建設業者の完成工事高を業種ごとに「X1評点テーブル」という表に当てはめ、点数化します。

X1の最高は2,309点、最低は397点です(2023年5月時点、以下同じ)。

X2(経営規模評点)とは

X2は「経営規模評点」といい、P点全体の15%を占めています。

X2では「X21評点テーブル」で自己資本額を点数化したものと、「X22評点テーブル」で平均利益額を点数化したものが使われます。

最高点は2,280点、最低点は454点です。

Y(経営状況評点)とは

Yは「経営状況評点」といい、P点全体の5分の1(20%)を占める数値です。

Yでは「建設業財務諸表」という特殊な財務諸表に基づいて、以下の各項目が点数化されます。

  • 純支払利息比率
  • 負債回転期間
  • 売上高経常利益率
  • 総資本売上総利益率
  • 自己資本対固定資産比率
  • 自己資本比率
  • 営業CF(絶対額)
  • 利益剰余金(絶対額)

最高点は1,595点、最低点は0点です。

Z(技術力評点)とは

Zは「技術力評点」ともいい、X1と同様にP点全体の4分の1(25%)を占める重要な要素です。

Zでは業種ごとの技術職員数を「Z1評点テーブル」に、同じく業種ごとの元請完工高を「Z2評点テーブル」に当てはめて点数化します。

最高点は2,441点、最低点は456点です。

W(社会性等評点)とは

Wは「社会性等評点」といい、P点全体の15%を占める評点です。

Wでは以下の要素について、それぞれの算出テーブルに当てはめて点数化します。

  • 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況
  • 建設業の営業継続の状況
  • 防災活動への貢献の状況
  • 法令遵守の状況
  • 建設業の経理の状況
  • 研究開発の状況
  • 建設機械の保有状況
  • 国又は国際標準化機構が定めた規格による登録の状況

Wの最高点は2,074点で、最低点は「-1,837点」です。

経営事項審査の点数を上げるコツ

経審のP点を上げるためには、5つの評点それぞれを上げる必要があります。ここでは評点ごとの点数アップのコツを紹介します。

X1、X2を上げるには?

X1とX2を足したX評点は、P点全体の4割を占めます。このためX評点全体を上げればP点の大幅な点数アップが狙えそうですが、残念ながら「完成工事高(X1)」「自己資本額(X21)」「平均利益額(X22)」はいずれも、短い期間で大きく変えられるものではありません。

それでも完成工事高(X1)については工夫の余地があります。というのも計算の対象となる完成工事高の数値は、以下の二通りから選べるからです。

  • 2年平均:過去2年分(直前決算と前期決算)の完成工事高を平均する
  • 3年平均:過去3年分(直前決算と前期決算と前々期決算)の完成工事高を平均する

ポイントとしては、3年前(前々期決算)の数字が過去2年の平均値より大きければ「3年平均」を選択し、そうでなければ「2年平均」を選択します。ただし複数の業種で経審を受ける場合、平均方法はすべての業種で統一しなければなりません。

少しでも有利な点数を得るためには、細かなシミュレーションが必要でしょう。

Yを上げるには?

Y評点は建設業財務諸表によって点数化されるため、やはり短期的な点数アップは難しい評点です。ただし税理士が作る一般的な財務諸表を建設業財務諸表に作りかえる際に、いくつか

工夫できる点もあります。

たとえば経費を「原価」ではなく「一般管理費」とすることで売上総利益を高くする、といった具合です。また建設業財務諸表を作る前に借入金をできるだけ返して「負債」を減らしたり、リースなどを活用して「固定資産」をできるだけ減らしておくことも大切です。

具体的なテクニックについては、ぜひ専門家に相談してください。

Zを上げるには?

Z評点は技術職員の数と、それぞれの職員が持つ資格によって大きく変わります。特に以下の技術者の有無に注意してください。

技術者1人当たりの加点
一級技術者(監理技術者講習受講者)6点
一級技術者5点
基幹技能者3点
二級技術者2点
その他の技術者1点

特に「一級技術者」が在籍している場合は、必ず「監理技術者講習」を受講させておきましょう。それだけで1人あたり1点プラスになります。

ただし複数の業種で経審を受ける場合は注意が必要です。たとえば1人の技術者が複数の業種にまたがって在籍していても、Z評点の対象となるのは1人あたり「2業種」までです。どの技術者をどの業種に振り分けるのか、戦略的に考える必要があるでしょう。

Wを上げるには?

最後のW評点は、実はP点全体をポイントアップさせるうえで非常に重要な評点です。1項目あたりの配点が大きいため、要件を満たすだけで大幅な点数アップを期待できます。

一方、Wは他の評点とは違い「マイナスの配点」もあるため、うっかりすると大幅な減点の危険があります。たとえば「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況(W1評点)」では、雇用保険、健康保険、厚生年金保険に加入していない場合、それぞれ「-40点」の減点です。

プラスになる部分をしっかり押さえるだけでなく、マイナスになる要素をつくらないことがW評点のポイントです。

経営事項審査で高い評価を受けられる経営を目指しましょう

経審は建設業者にとって重要な「格付審査」です。公共工事への参加を目指す事業者はもちろん、そうでない事業者にとっても自社の経営状態を客観的に見直すきっかけとなるため、ぜひ挑戦してみてください。

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