官公庁などが発注する建設工事などの競争入札に参加するためには、事前に入札参加資格を取得する必要があります。この記事では競争入札参加資格の種類や申請方法、注意すべきポイントについて解説します。
競争入札の参加資格とは?
国や自治体などの官公庁が実施する「競争入札」においては、原則として参加するための資格が必要になります。
「競争入札参加資格」とは、その入札に参加するために必要な資格のことで、発注機関ごとに定められたルールに従って事前に申請し取得しておく必要があります。
官公庁入札の流れや発注機関などについては、こちらの記事で詳しく解説していますので併せてご参照ください。
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競争入札参加資格とは別に入札案件ごとに参加資格が設定される場合(「指名入札」)もあり、その場合は入札公告や仕様書などにその旨が記載されます。
指名入札では、企業が保有する免許や従業員である技術者の国家資格、工事の実績などの基準により参加資格が設定されますが、この記事では一定の基準を満たしていれば取得が可能な「一般競争入札」への参加資格について解説します。
競争入札参加資格の種類
競争入札の参加資格は、国や省庁・自治体などの発注機関ごとに手続きの方法や審査基準が異なります。
ここでは、発注機関ごとの違いをそれぞれのケースで説明します。
国・中央省庁の場合
①全省庁統一資格(物品役務関係)
政府の全調達機関に共通して有効な入札参加資格が「全省庁統一資格」です。
下記の各省庁における物品の製造・販売等に係る一般競争入札への参加資格となり、資格を付与されると全調達機関において有効となります。
(対象となる政府機関)
内閣府本府 | 総務省 | 宮内庁 |
内閣官房 | 法務省 | 警察庁 |
内閣法制局 | 外務省 | 金融庁 |
衆議院 | 財務省 | 消費者庁 |
参議院 | 文部科学省 | こども家庭庁 |
最高裁判所 | 厚生労働省 | デジタル庁 |
会計検査院 | 農林水産省 | 復興庁 |
人事院 | 経済産業省 | 公正取引委員会 |
国立国会図書館 | 国土交通省 | 個人情報保護委員会 |
防衛省 | 環境省 | カジノ管理委員会 |
※これらの外局及び附属機関その他の機関並びに地方支分部局を含む
②インターネット一元受付(建設工事および測量・建設コンサルタント等業務)
一般競争入札の中でも、各省庁における建設工事・測量・建設コンサルタント等の業務の競争入札に参加を希望する場合には、国土交通省が窓口となって参加資格の申請受付を実施しています。
これは原則として2年に一度の定期審査となっており、国土交通省のHPから受付が可能です。
令和5・6年度に有効な資格申請は令和5年1月13日に締切済みで、以降は郵送による申請(随時受付)のみとなります。
独立行政法人や特殊法人の場合
独立行政法人や特殊法人などの政府系機関の場合でも、全省庁統一資格を適用できるケースが多くあります。
以前は各機関が独自の入札参加資格制度を設けていることも多くありましたが、合理化の一環で入札参加資格の統合が進んでいます。
(詳細は各機関へお問い合わせください)
自治体の場合
多くの地方自治体では、国の制度に準じた独自の入札参加資格制度を設けています。
例えば東京都では「物品買入れ等競争入札参加資格」と「建設工事等競争入札参加資格」に分けて入札参加資格の審査を実施しており、「東京都電子調達システム」で資格申請が可能となっています。
東京都内の23区と33市町村、2つの組合の入札に参加する場合は、東京都の入札参加資格とは別に「東京電子自治体共同運営電子調達サービス」への申請が必要となります。
ここでは東京都の例を挙げましたが、県内の市町村分まで一括して入札参加資格を取りまとめている県もありますので、入札への参加を希望する自治体へ問い合わせるようにしてください。
競争入札参加資格の申請方法
ここでは、全省庁統一資格を例に申請の手順と必要な書類について説明します。
申請に必要な書類
申請にあたっては、既定書式の申請書以外にも下記の添付書類が必要となります。
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 印鑑登録証明書
- 納税証明書
- 財務諸表(1年分) 法人の場合…貸借対照表、損益計算書 個人の場合…確定申告書
申請の方法
申請方法は原則としてインターネットの専用WEBサイトからの申請となりますが、各省庁の窓口への郵送もしくは持参による申請も可能です。
ただし、資格証の再発行申請および取消申請についてはインターネットによる申請はできず、窓口対応のみ受け付けています。
審査および登録
入札資格申請が受理された後、官公庁が発注する相手として十分な資力と技術力があり、信頼に値するかを審査されることになります。
審査の結果、問題が無ければ「入札参加資格者名簿」に登録され、一般競争入札への参加が可能となります。
審査にあたっては、その会社の「経営状況」「経営規模」「技術的能」「営業資格」が精査され、特に下記の経営状況に係る下記の項目については加点方式でA/B/C/Dの4段階のランクが割り振られることになります。
このランク付けによって、参加できる一般競争入札の規模や金額が変わってきます。
- 年間平均(生産・販売)高(前2ヶ年の平均実績高)
- 自己資本額の合計
- 流動比率
- 営業年数
- 設備の額
資格の更新
令和5年5月現在の審査で付与される資格は令和4・5・6年度の競争入札への参加資格となります。
この資格の有効期間は令和7年3月31日までとなっており、最大で3年間有効となります。
競争入札の参加資格で注意すべきポイント
競争入札の参加資格を取得して一般競争入札に参加するにあたって、注意するべきポイントについて解説します。
競争入札参加資格の更新を忘れずに!
入札参加資格の有効期限は、中央省庁で最大3年、自治体によっては1年のところもあります。
入札参加資格を継続したい場合は自動更新とはならず、更新申請が必要であることにご注意ください。
失効すると競争入札に参加できなくなってしまい、受注機会の大きな損失となってしまうため、忘れずに更新申請をするようにしましょう。
建設工事の競争入札参加資格には「経審」が必須!
建設工事の競争入札に参加する場合は「経営事項審査(経審)」を必ず受けなければなりません。
経審の点数アップは、入札資格のランクアップに直結するため非常に重要です。
売り上げなどの経営数値は短期で改善できるものではありませんが、点数で大きなウエイトを占める労務環境や福利厚生の向上は自社で主体的に取り組むことが可能です。
特に雇用保険・健康保険・厚生年金保険については加入が必須で、加入が無いと大幅な減点となってしまいます。
特に「建設業退職金共済の加入」「法定外労災保険の加入」「退職一時金制度等の設置」などは、大きな加点ポイントになるため導入を積極的に検討しましょう。
ワーク・ライフ・バランス等推進企業への加点評価
近年、女性の社会進出をさらに促進する「女性活躍推進法」などの法整備が充実してきていることを踏まえ、国・独立行政法人等において、ワークライフバランス等推進企業を入札審査において加点評価する取組を実施しています。
女性労働者の割合を増やしたり、育児休業制度を充実させてフレックスタイム・テレワークなどの柔軟な働き方を導入することなども推進するべきでしょう。
競争入札の参加資格を取得して受注のチャンスを広げましょう
ここまで、国や自治体などの官公庁発注工事の競争入札に参加するための資格について、その種類と取得方法などについて解説してきました。
一般競争入札は、規模と実力に応じてどのような企業にも受注する機会が与えられる、非常に公平な制度です。
実績を積み上げてより大きく社会的責任のある仕事を受注するためにも、まずは入札参加資格を得ることから取り組んでみることをおすすめします。