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外国人建設就労者とは?建設業で外国人材を採用するメリットや注意点を解説

公開日:2023.06.19 更新日:2023.06.19
外国人建設就労者とは?建設業で外国人材を採用するメリットや注意点を解説

建設業界で働く外国人労働者が年々増えており、新たに 外国人材の採用を検討しているという企業も多いのではないでしょうか?本記事では、外国人建設就労者の在留期間や就労可能な職種、外国人が建設業界で働くために必要な資格について解説します。外国人材の採用を検討している企業はぜひ参考にしてください。

外国人建設就労者とは

外国人建設就労者(特定活動32号)とは、2022年に開催された東京オリンピックの準備のために、需要が増加していた建設業界において人手を確保するために多くの外国人を受け入れるため設立された期間限定の在留資格制度です。

建設業界においては「技能実習」を修了した外国人が、外国人建設就労者の在留資格を得ることができました。(※なお外国人建設就労者の新規受け入れは2021年の3月末で終了しており、今後建設業界において新しい外国人労働者を採用するためには俺以外の在留資格が必要です。必要な在留資格などについては、後ほど詳しく解説します。)

職種と作業内容

外国人建設就労者受入事業の対象職種と詳しい作業内容は以下のとおりです。

引用:建設就労とは|公益財団法人国際労務管理財団

上記のうち「鉄工」「塗装」「溶接」の3つの職種は、技能実習を行った企業でのみ外国人建設就労者(特定活動32号)を受け入れることができました。

在留資格を「特定技能1号」へ変更可能

上述で解説した「外国人建設就労者」で日本に滞在できるのは最大で3年まででしたが、期間満了する前に申請を行えば「特定技能1号」へ在留資格を変更することができます。

外国人建設就労者から特定技能1号へ在留資格を変更すれば、変更してから最大5年間は日本で就労することが可能です。

建設業界で外国人が働くための在留資格

建設業界において外国人が働くためには、次の4つの在留資格のいずれかが必要です。

【建設業界で外国人が働くための材料資格の種類】

  • 技能実習
  • 特定技能
  • 技術・人文知識・国際業務
  • 身分に基づく在留資格

技能実習

技能実習(外国人技能実習制度)とは、日本で培われた技能や技術または知識を開発途上地域へ移転することにより、当該地域などの経済発展を担う人づくりに寄与することを目的として創設された制度です。

技能実習の期間は種類によって異なりますが最長5年間外国人が日本で就労可能となります。

企業が技能実習生を受け入れるためには、受け入れる技能実習生ごとに実習計画を作成して、技能実習機構から認定を受けなければなりません。

また技能実習生が日本に訪れてからの待遇や受け入れられる人数について求められる基準に適合し、労働基準法や最低賃金も遵守する必要があります。

特定技能

特定技能とは、日本国内で人手不足が深刻化されている14業種の分野において、即戦力となる外国人材を海外から雇い入れることができるように創設された制度です。

在留資格である特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、1号は14業種、2号は2業種が指定されています。指定されている業種については以下のとおりです。

【特定技能で指定されている業種】

  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. 素形材産業 
  4. 産業機械製造業
  5. 電気・電子情報関連産業 
  6. 建設 
  7. 造船・舶用工業 
  8. 自動車整備 
  9. 航空 
  10. 宿泊 
  11. 農業 
  12. 漁業 
  13. 飲食料品製造業 <採用事例>
  14. 外食業 <採用事例>

※「特定技能」2号で受入れができるのは、2分野(建設、造船・舶用工業)

基本的には技能実習生として自社で育成していた外国人を、技能実習から特定技能へ変更して受け入れるのが一般的です。

なお特定技能に該当する外国人を受け入れるためには、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)への入会、建設キャリアアップシステムへ登録、国土交通省からの認定が必要となります。

技術・人文知識・国際業務

「技術・人文知識・国際業務」とは、建築や設計に関する専門知識を専門学校や大学で学んだ、もしくは10年以上の実務経験がある外国人が得ることのできる在留資格です。

専門学校や大学で土木建築に関することを学んだ外国人であれば、施工管理業務や設計業務に関する就労が認められます。また営業職や事務関連の仕事であれば、土木建築に関して学んでいなくても大学を卒業していれば就労可能です。

身分に基づく在留資格

身分に基づく在留資格とは「永住者」「永住者の配偶者」「定住者」「日本人の配偶者」などが該当します。

これらに該当する外国人は、日本においても就労の制限はありません。そのため身分に基づく在留資格を持った外国人を採用したい場合は、日本人を採用する場合と同様の方法で行うことができます。

建設業で外国人材を採用するメリット

建設業において外国人材を採用する場合、次のようなメリットがあります。

【建設業において外国人材を採用するメリット】

  • 人材不足を解消できる
  • 社内教育体制の見直しにつながる
  • 海外進出のきっかけになる場合も

それぞれのメリットについて以下で詳しく見ていきましょう。

人材不足を解消できる

国土交通省によると、建設業界における人手不足は他の業界と比較しても深刻であり、2018年の段階で約2万人、2023年の段階では約21万人程度の人材不足が確実視されているとのことです。

【交通省による今後の需要見込み数と人手不足の見込み数】

引用:建設業を巡る最近の状況|国土交通省

このような背景を受けて、国は建設業界で外国人材を積極的に受け入れることができる在留資格や制度を次々と新設しています。

うまく制度を活用して外国人材を自社に招き入れることができれば、人手不足を解消して企業としても成長することができるでしょう。

社内教育体制の見直しにつながる

外国人材を積極的に受け入れることは、社内教育体制の見直しにつながるというメリットもあります。

外国人材を受け入れて業務を教えるためには、日本語がわからない人に対しても分かりやすく明確に指示をしなければいけません。

そのためには社内で外国人でも分かりやすいマニュアルの作成をしたり、管理職がマネジメントしやすい環境を整えたりなどする必要があります。

外国人の受け入れに向けて社内教育体制を徹底的に見直すことは、今後新しい社員を受け入れる際にも役立つでしょう。

海外進出のきっかけになる場合も

外国人材を積極的に受け入れることは、企業として海外進出をするきっかけになり得ます。

会社として海外へ進出する予定がなくても、受け入れた外国人を通して思ってもみなかった仕事が舞い込んで来る可能性もあるでしょう。

日本国内での受注競争は激化しており、近年では大企業だけではなく中小企業も海外進出を積極的に行っています。

海外進出を検討している企業は、まずは外国人材を積極的に受け入れることから始めてみると良いでしょう。

建設業で外国人材を採用するデメリット

建設業において外国人材を採用することはメリットだけではありません。次のようなデメリットもあるので、外国人材を採用する際は企業として慎重に検討する必要があります。

【建設業において外国人材を採用するデメリット】

  • コミュニケーションが難しい場合も
  • 外国人採用のマニュアルを作成する場合がある
  • 文化の違いでトラブルが発生する場合も

メリットとデメリットを比較して、自社で外国人材を受け入れるべきか判断する際の参考にしてください。

コミュニケーションが難しい場合も

外国人材を受け入れる際に立ちはだかる最大の壁が、言語の違いによるコミュニケーションの難しさです。

日本語をあまり理解できていない外国人に対してうまく指示が伝えられず、業務を進める上でトラブルが生じる場合もあります。

特に建設業においては、コミュニケーション不足によって指示がうまく伝わらない場合、重大な事故や怪我などにつながる可能性もあるので危険です。

またコミュニケーションが難しいことから、外国人だけではなく日本人側もストレスを感じてしまう可能性があります。

外国人材を受け入れる際は、まずはその人がどれだけ日本語を習得しているのかチェックして、コミュニケーションを取る上で問題ないか確認することが必要です。

外国人材用のマニュアルを作成する必要がある

外国人材を受け入れるためには、業務において必要なマニュアルや資料を日本語以外の言葉で作成しなければなりません。

そのため社内に他の言語に強い人がいなければ、マニュアル作成の段階でかなり苦労することが予想されます。

また仕事に関わる教育だけでなく、建設現場において知っておかなければならない安全衛生に関する知識や日本語教育などもサポートできるよう環境を整える必要があるでしょう。

文化の違いでトラブルが発生する場合も

日本とは異なる文化を持つ外国人材を雇い入れた場合、文化の違いによってトラブルが発生する場合もあります。

文化によっては、契約や働く時間・給料に対してシビアな考えを持っており、残業に応じようとしない人も存在するでしょう。

文化の違いでトラブルが発生することを防ぐには、雇い入れを予定している外国人の母国に関する文化や特徴を把握しておくことが重要です。

また雇い入れ後は積極的にコミュニケーションをとることで、文化や価値観の違いによる重大なトラブルを未然に防げるでしょう。

建設業で外国人材を雇用する際の注意点

建設業で外国人材を雇用する際は、次の2つのポイントに注意しましょう。

【建設業で外国人材を雇用する際の注意点】

  1. 最低賃金や同一労働・同一賃金を厳守する
  2. コミュニケーション不足による労災に注意

それぞれの注意点について以下で詳しく解説していきます。

最低賃金や同一労働・同一賃金を厳守する

外国人だからといって、給与面で日本人と差をつけてはいけません。

特に特定技能や技能実習制度を利用して外国人材を受け入れた場合、賃金や各種手当などの金額が一定期間ごとに第三者機関によってチェックされます。

そのため外国人材を受け入れる際は、最低賃金を守ることはもちろんのこと、日本人との同一労働・同一賃金は厳守しましょう。

コミュニケーション不足による労災に注意

外国人材を受け入れる上で最も注意しなければならないのが、コミュニケーション不足による労災です。

事故の発生率が高い建設業界では、労災の発生する確率も高くなっています。そのため企業としても、コミュニケーション不足による労災が発生しないように対策をしなければなりません。

コミュニケーション不足で労災が起きないように、まずは各種安全マニュアルの作成や安全指導などを徹底する必要があります。

言語だけでは伝わらないような重要な事項については、図表やイラストなどを用いた説明、もしくは通訳や翻訳などで丁寧に説明しましょう。

建設業における外国人材の教育方法

外国語でのマニュアルを作成したり、安全指導に関する説明をしたりするのは難しい場合は、国が用意した外国人労働者向けの労働災害防止マニュアルや教材を活用するのがおすすめです。

厚生労働省では、建設業者が積極的に外国人材を受け入れることができるように、外国人就労者向け専用の他言語マニュアルや教材を公開しています。

わかりやすい専用のテキストや動画も用意されているので、自社で他言語に対応するのが難しいという場合は積極的に活用してみましょう。

参考:東京労働局「外国人労働者の労働災害防止」

参考:厚生労働省「建設業に従事する外国人労働者向け教材」

建設業界の人材不足解消は外国人材の積極的な採用がカギ

外国人建設就労者は、東京オリンピック開催に向けて創設された制度であり、現在は新規受け入れを行っていません。建設業者が外国人材を受け入れるためには、技能実習制度や特定技能制度を活用する必要があります。

今後建設業界においては、深刻な人手不足が加速していくことが予想されており、国も企業が外国人材を受け入れやすいように新しい在留資格や制度を次々と創設しています。

建設業界に携わる企業が人材不足を解消するためには、今後ますます外国人材を積極的に採用することが鍵となってくるでしょう。

外国人材を採用することによって、自社の教育体制を見直したり、思いもよらなかった海外進出のきっかけになったりする可能性もあります。

特に今後海外進出を検討している企業は、人材不足の解消も兼ねて外国人材を積極的に採用してみてはいかがでしょうか。

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