受注者その他

大規模木造建築の定義とメリットとは?用途別の法規制についても徹底解説します

公開日:2023.07.21 更新日:2023.07.21
大規模木造建築の定義とメリットとは?用途別の法規制についても徹底解説します

近年の技術発展と規制緩和により、これまではRC造やS造で建てられていた大規模建築物に関しても木造化が可能になっています。法規制が複雑なため、実現にはいくつかのハードルがありますが正しく理解してそのメリットを追求しましょう。

大規模木造建築とは

建築技術の発展と建築基準法の規制緩和により、これまではRC造やS造で建てられていた「大規模建築物」に関しても木造で建築できるようになりつつあります。

ここでは、大規模木造建築の定義と木造で建築するメリットについて解説します。

大規模建築物の定義

「大規模建築物」とは、建築基準法6条1項2号および3号に定める一定の大規模な建築物のことです。木造の場合は、以下のいずれかに該当する場合に「大規模建築物」になります。

  1. 3階以上の階数を有する
  2. 延べ面積が500㎡を超える
  3. 高さが13mを超える
  4. 軒の高さが9mを超える

大規模木造建築のメリット

木造の建築物は一般的に構造躯体が軽いため、RC造やS造と比較して基礎構造を小さくできるという点が最も大きなメリットです。特に軟弱地盤の場合、基礎杭の長さを短くできるうえに基礎のサイズや鉄筋が最小限で済む可能性があり、大きなコストメリットを期待できます。

木材は天然の断熱材でもあるため、木造建築物は断熱性能が高いという特徴があります。鉄やコンクリートは熱伝導性が高く、熱橋(ヒートブリッジ)が発生して外気温の影響を受けることが避けられませんが、木造の場合は年間を通して穏やかな室内環境をつくりやすく、結果として冷暖房にかかるエネルギーコストが抑えられます。

鉄筋コンクリートなどと比べ、建築時に発生するCO2が少ないのも大規模木造建築のメリットです。住宅だけでなく、事業用の建物も木造で建築することで「サスティナブル建築」への取り組みの第一歩にもなるといえます。

関連記事:サスティナブル建築がこれからの標準?その実現方法とメリット、実例も紹介します

木造建築物は他の構法と比べて基礎構造が小さいため、解体費用も安価で済みます。新築時だけでなく、運用から解体費用までトータルでコストを考える「ライフサイクルコスト」を最小限に抑えられるというメリットも得られるでしょう。

関連記事:建物のライフサイクルコストとは?ライフサイクルコストを抑えて事業収支を改善!

【建物用途別】大規模木造建築の法規制のポイント

建築基準法では、主に防災上の観点から建物の規模や用途、構造種別により様々な規制がかけられています。

木造建築物は構造躯体そのものに可燃性があるため、これまでは不特定多数の人が利用する建物や、規模が大きくかつ高層の建物では建築が厳しく規制されてきました。

しかし木造建築技術の発展を受けて、近年は一定の制限のもとで、大規模な木造建築も可能になっています。

大規模木造建築は主要構造部の制限を受けることに注意

大規模木造建築に対する制限は、主に「主要構造部」に関するものです。

主要構造部とは、壁・柱・床(最下階の床を覗く)・梁・屋根・階段のことで、主に火災が発生したときの避難時に人命を守る重要な部分となります。

大規模木造の法規制は、この主要構造部が火災時にどれくらい耐えられるかを基準として定められていることを理解しましょう。

耐火建築物・準耐火建築物にしなければならない建築物

大規模木造に対する制限は、建物の用途および規模、階数によって区別されます。

建物のグレードはは火災時の主要構造部の耐久時間によって「その他建築物」「準耐火建築物」「耐火建築物」となり、耐火性の高い建物(耐火建築物)ほどコストがかかります。

なお木造の「耐火建築物」は技術的にまだ発展途上であり、法整備も十分に追いついていません。非常に工期とコストがかかることから、全国でも数例しか無い実証実験的な取り組みに留まっていることも理解しておきましょう。

以下では建物の用途別に、耐火建築物や準耐火建築物の基準を紹介します。

事務所

事務所建築は「特殊建築物」には該当しないことから、比較的大規模木造での取り組みがしやすい用途です。高さ16m以下の3階建てまでであれば「その他の建築物」として建築が可能です。

ただし、4階建てや延べ面積3,000㎡以上になると「耐火建築物」となり、格段にハードルが上がってしまいます。

共同住宅・宿泊施設

マンションやアパートを指す共同住宅やホテルや旅館用途の宿泊施設も、3階建て以下で延べ面積3,000㎡未満であれば耐火建築物とする必要が無く、大規模木造建築への取り組みが比較的しやすい用途です。

ただし、2階の床面積が300㎡以上の場合は「準耐火建築物」となるため、その面積以下になるように建築されているケースが多数です。

老人ホーム

近年急速に増加している民間の有料老人ホームも大規模木造との相性が良い用途です。

利用者の避難上の観点から3階建て以上は耐火建築物とすることが要求されているため、その多くは2階建て以下で建築されています。

学校・幼稚園・保育所

公共建築物の木造化が推進されており、学校に関しては特例で大規模木造が建築しやすくなっています。ただし、敷地に余裕があり避難や消防活動時に十分な通路が確保されていることなどの条件があります。

幼稚園や保育所は、未就学児を避難させる都合上平屋建てが推進されています。

防火地域・準防火地域の場合はさらに規制が厳しくなる

市街地密集地などに見られる防火地域・準防火地域の場合は、建物用途とは別に規模により規制がかけられることに注意しましょう。

大規模木造建築の実現には法規制の理解から

ここまで大規模木造建築の概要と法規制、用途別の注意点などについて解説してきました。

政府の掲げる「2050年カーボンニュートラル」の目標達成のためにも、サスティナブル建築としやすく、CO2排出量が少ない木造建築物を推進する流れは、今後さらに強まっていくと予想されます。

ここに挙げた法規制を理解した上で、検討中の建物が大規模木造で建築可能かを検討してみてはいかがでしょうか。

関連記事

タイトルとURLをコピーしました