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建築資材の物流が抱える課題とは?解決に向けた具体的な取り組みも紹介します

公開日:2023.07.21 更新日:2023.07.21
建築資材の物流が抱える課題とは?解決に向けた具体的な取り組みも紹介します

建築資材の物流は取り扱う資材も物流ルートも複雑で、事業者にとって大きな負担となっています。本記事では国の調査結果などから建築資材の物流にまつわるさまざまな課題と、それを解消するためのヒントを紹介していきます。

建築資材の物流とは?

建築資材の物流とは、建築工事に必要となる、さまざまな種類の建設資材や住宅設備を建設現場に搬入する過程のことです。ここではまず、一般的な物流とは異なる「建築資材の物流の特徴」について見てみましょう。

  • 種類が多い

建築資材は、材質、形状、用途などにより種類が非常に多く、それぞれのサプライヤーも膨大な数にのぼります。木質建材、窯業建材、プラスチック建材、金属建材などの素材やインテリアにつかう資材、住宅設備機器など、一般的な一戸建ての場合でも、部材や部品の数は1万点を超えるとされています。

  • 搬入先が変化する

資材は建設現場に直接搬入されることが多く、その配送先はプロジェクトの場所に応じて常に変動します。

  • 納期が指定される

各資材の納期は、工事の進行状況などに合わせて指定されます。実際、現場への到着日時が時間単位で指定されているケースは建設工事の約20%にも上ります。

  • 天候の影響を受けやすい

天候等によって工事の進捗は変化し、それに合わせて資材等を搬入するタイミングも変更されます。

建築資材の物流ルート

建築資材の物流ルートは、大きく分けて3種類です。

  • 問屋経由

サプライヤーが問屋に配送を手配し、一次問屋、二次問屋を経て建材販売店が建設現場に資材を納入します。品目によって具体的なルートは異なりますが、間に複数の卸売業者が入ることで在庫や納入タイミングを調整しやすいのが特徴です。

  • 住宅メーカー経由

サプライヤーから住宅メーカーの工場に搬入し、次いで住宅メーカーの工場から建設現場に搬入するという物流ルートです。主にユニット工法やプレハブ工法で採用されています。

  • 現場直送

サプライヤーから建設現場に直接納入する物流ルートです。主にサイズの大きい建築資材や、オーダーメイド品などの場合に利用されます。

建築資材の物流が抱える課題

建築資材の物流は、その特性から多くの課題を抱えています。以下、それらを詳しく見ていきましょう。

資材と物流ルートが複雑

建築資材は、品目ごとに形状や重量が大きく異なるため、物流ルートもそれぞれ複雑となります。繊細なガラス製品から大型の鉄骨まで、取り扱う資材の特性は様々で、それぞれが適切な保護や取り扱いが必要です。

建築資材を一品単位で運ぶ場合、物流ルートによっては積載量が少ないまま運搬を行うことになるます。このため全体の物流を最適化し、積載効率を向上させることは容易ではありません。また現場直送の場合はサプライヤーごとに独立した配送を行うことが一般的で、これが積載効率を悪化させる原因ともなっています。

配送先や交通状況が変化しやすい

建築資材の搬入先は、建設現場が移動するたびに変わります。これは、単に配送先の住所が変わるということだけでなく、現場に合わせて最適な配送ルートを決定し、配送時間を予測するための新たな計画が必要になることを意味します。

また都市部では特に、時間帯による交通量の変化や道路工事等による通行制限、更には一時的なイベントなどにより、通行ルートや時間がさまざまに変化します。そのため、常に最新の情報をもとに配送計画を立て直す必要があり、このことが物流事業者にとって大きな負担となっています。

納品のタイミングが変化しやすい

建設現場では工事の進行により、納品のタイミングが直前に変わることが多くあります。工事の進行状況は、天候の影響や計画変更などによって変化しやすく、当初の計画通りに進むことはめったにありません。

また多くの建設現場では建築資材をストックするスペースが限られており、早すぎる納品は現場の作業効率を下げてしまいます。場合によっては建築資材を現場に納品できず「持ち帰る」こともあり、運送業者にとって大きな負担となっています。

手配業務が手作業で行われている

現在の建築資材の物流は、基本的に手作業に依存しています。注文から配送、そして納品までの一連の作業が人の手によって行われているため、作業ミスが発生しやすく、また、作業の効率も必ずしも高くはありません。

さらに建設業界に共通するITシステムが存在しないことも問題となっています。サプライヤーや問屋などがそれぞれ独自開発した発注システムを用いており、その利用を取引先の流通業者にも働きかけています。これが情報の非効率的な共有を招き、物流業界のDX化(デジタルトランスフォーメーション)を阻害しているのです。

土木系建材ならではの課題

建築資材は一般的に商圏が小さく、グローバル化が進みにくいという特性を持っています。これは資材の大きさや重さの関係で遠方の建設現場に運搬できなかったり、特定の地域でしか利用されない建築資材などがあるためです。

また地域ごとに商慣習が異なるため、サプライヤーや運搬事業者は、その地域特有の需要に対応する必要があります。こうした特性も、物流の効率化を難しくしています。

建築資材の物流課題を解決するには

建築資材の物流課題を解決するためには、以下のような取り組みが考えられます。

共同配送

共同配送とは、各建築資材サプライヤーから送られてくる資材を一か所に集約し、物流会社の倉庫で一時保管した後に計画的に配送する仕組みです。多種多様な建築資材を一元管理することで積載効率と配送の効率の向上につながり、コストの大幅削減が可能です。

共同配送の事例としては、以下のようなものが挙げられます。

・大和物流株式会社

建築建材メーカー(金属サイデング)の長尺商品を大和物流の物流拠点にいったん納入し、そこからエリア別に共同配送することで物流コストを削減。現場に配送するタイミングも調整しやすくなった。

参考:共同配送事例―建築資材メーカー・F社様

・佐川急便株式会社

建築資材メーカー(ポラテック西日本)からの相談を受け、SGホールディングスグループの協力会社と共同で平ボディ車・ユニック車などの特殊車両を調達。佐川急便の中継拠点(SGデポ)も活用することで、作業源場への配送を効率化した。

参考:【佐川急便】特殊車両を活用した建築資材配送業務の構築|事例・実績|ロジスティクスソリューション

IT活用

建築資材の物流を効率化するために、ITの活用に取り組む事例も増えています。たとえばEC調達システムの導入により注文から納品までの一連の流れをデジタル化することで、効率的な作業が可能となります。

またリアルタイムに在庫照会や物流作業進捗などを閲覧できるシステムを活用すれば、配送のスケジューリングや運搬計画をより正確に行うことができます。これらのIT化は、物流業務の効率化を図るだけでなく、ヒューマンエラーを減らすことにもつながります。

以下に紹介するリンクは、建築資材のEC調達システムや在庫管理システムを導入している事例の一部です。

建材卸業向け-販売管理システム:EXPLANNER/Z | NEC

資材調達システム(総合建設業A社) | 導入事例紹介 | 西部ガス情報システム

業界内の協業やDXを通して物流課題を解消しましょう

建築資材の物流は複雑で多岐にわたる課題を抱えています。一方で、共同配送やITの活用といった手法により、これらの課題に対応し、より効率的で高品質なサービスを提供することも可能です。

そのためには業界全体での情報共有と共同作業が欠かせません。また業界の垣根を超えたDX推進も重要です。これらの取り組みを積極的に進めることは、建築業界全体の発展に繋がっていくでしょう。

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