設計業務委託等技術者単価とは、国土交通省が発注する [設計] [測量] [地質調査] など業務の積算(費用の算出)に用いる労務単価のことです。本記事では、令和5年度の設計業務委託等技術者単価はいくらなのか、過去の推移はどうなっていたのかについて解説します。
設計業務委託等技術者単価とは
そもそも設計業務委託等技術者単価とは、国土交通省が発注する「公共工事の設計業務委託
(コンサルタント業務・測量業務等)の積算に用いるための単価」です。
参考:国土交通省「令和3年度 設計業務委託等技術者単価について」
まずは設計業務委託等技術者単価について、用途や構成内容、そして「含まれないもの」についてみていきましょう。
設計業務委託等技術者単価の用途
設計業務委託等技術者単価は、公共工事において「適切な発注単価」を定めるために使われています。
公共物(道路、堤防、橋梁、下水道)などの設計・測量・調査については、作業を行う人件費が主な費用です。
国土交通省では、該当する技術者の給与自体に関して毎年調査を行っており、その結果に基づいて適正な発注単価というのを定めています。
この適切な発注単価を定めるために使われているのが「設計業務委託等技術者単価」です。地方自治体や公共機関などは、業務の概算を行うにあたって設計業務委託等技術者単価を参考にして発注単価を定めています。
なお単価については、毎年国土交通省が前年度に行った「設計業務委託等給与実態調査」に基づき決定・発表されています。
【国土交通省による設計業務委託等技術者単価に関する発表の例】
設計業務委託等技術者単価の構成内容
設計業務委託等技術者単価については、次の4つの要素で構成されています。
【設計業務委託等技術者単価を構成する4つの要素】
- 基本給相当額
- 賞与相当額(役職・資格・通勤・住宅・家族・その他)
- 諸手当
- 事業主負担額(退職金積立・健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険・介護保険・児童手当)
設計業務委託等技術者単価に含まれないもの
設計業務委託等技術者単価に含まれないのは、次の賃金・手当です。
【設計業務委託等技術者単価に含まれないもの】
- 時間外、休日及び深夜の労働についての割増賃金
- 各職種の通常の作業条件又は作業内容を超えた労働に対する手当
つまり設計業務委託等技術者単価は、通常の作業内容や作業条件の範囲内での業務でないと手当や労働賃金を受け取ることができません。
仮に業務委託などの形で業務に携わっている場合、手当や労働賃金を受け取るためには、契約前から作業条件と作業内容の範囲を確認しておく必要があります。
なお設計業務委託等技術者単価は公共事業の設計業務委託などに関するものなので、建設業者が外注契約する際の「技術者単価」や「技術者への支払い賃金」には直接適用されません。
令和5年度の設計業務委託等技術者単価はいくら?
国土交通省の発表によると、令和5年度の設計業務委託等技術者単価は全業種単純平均で「44,455円」でした。
なお内訳は以下のとおりです。
【令和5年度の設計業務委託等技術者単価と内訳】
- 全職種(職階)単純平均:44,455円(前年度比+5.4%)
- 設計業務(7職階):平均53,671円(前年度比+7.1%)
- 測量業務(5職階):平均37,700円(前年度比+5.2%)
- 航空・船舶関係業務(5職階):平均40,580円(前年度比+1.5%)
- 地質調査業務(3職階):平均40,667円(前年度比+6.9%)
引用:令和5年3月から適用する設計業務委託等技術者単価について|国土交通省
令和5年度は建設業界の人手不足や人件費の高騰を踏まえて、全職種で設計業務委託等技術者単価が引き上げられました。
伸び率が5%以上となるのは9年ぶりであり、国土交通省が全国的な人件費の高騰などを適正に反映した形になったと言えるでしょう。
なお各業務における職種別の基準額や割り増し対象賃金比率は、以下のとおりです。
【令和5年度 設計業務委託等技術者単価表】
設計業務委託等技術者単価の計算方法
設計業務委託等技術者単価は、構成している4つの要素を足すことで計算できます。計算方法は以下のとおりです。
【設計業務委託等技術者単価計算方法】
- 設計業務委託等技術者単価=基本給相当額+賞与相当額+諸手当+事業主相当額
なお上記の「基本給相当額」「諸手当」「賞与相当額」「事業主負担額」は、所定労働時間内8時間あたりが前提です。
設計業務委託等技術者単価の推移
国土交通省の発表によると、設計業務委託等技術者単価は平成9年から令和5年にかけて次のような形で推移しています。
【設計業務委託等技術者単価の推移】
設計業務委託等技術者単価は、公表を開始した平成9年から平成24年までは右肩下がりで推移していました。
しかしアベノミクス開始後は単価が見直されるようになり、平成24年から令和5年にかけて毎年引き上げが行われています。
また令和4年から令和5年にかけての引き上げ額は過去最高の数字を記録してました。これは建設業界の人手不足や人件費の高騰を適切に反映しているようです。
建設業界の人手不足や人件費の高騰がこれからも続いていく場合、来年度以降の設計業務委託等技術者単価も引き上げられていく可能性が高いと言えるでしょう。
最新の設計業務委託等技術者単価を常に把握しておきましょう!
今回は設計業務委託等技術者単価について、単価を構成している4つの要素や単価に含まれないもの、過去の推移などを解説してきました。
設計業務委託等技術者単価は、公共工事における業務単価の基本的な数字です。毎年改定がおこなわれるため、建設業者は最新の数字について常に正確に把握しておくようにしましょう。