建築における「重要事項説明」とはどのようなものでしょうか? 重要事項説明の目的や必要性、説明の内容や利用できるフォーマットまで解説します。建設業事業者の方はぜひ一読ください。
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重要事項説明とは?
建築工事の設計契約をする際、建築士は「重要事項説明」をしなければなりません。これは建築士法第24条の7第1項のなかで、法律上の義務として定められています。まずは重要事項説明の概要からみていきましょう。
重要事項説明と法改正の関係
重要事項説明は、平成20年に施行された改正建築士法によって義務化されました。建築士法第24条の7には次のように規定されています。
建築士事務所の開設者は、設計受託契約又は工事監理受託契約を建築主と締結しようとするときは、あらかじめ、当該建築主に対し、管理建築士その他の当該建築士事務所に属する建築士(次項及び第三項において「管理建築士等」という。)をして、設計受託契約又は工事監理受託契約の内容及びその履行に関する次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。 |
法改正の背景には、平成17年に発覚した「耐震偽装問題」があるといわれています。一級建築士が複数のマンションで耐震強度構造計算書を偽造していたというこの事件は大きな社会問題として注目を集めました。
「建築士」に対する社会の目が厳しくなったことから、国は建築士法を改正。建築士の定期講習を義務付ける、管理建築士の要件を強化する、そして重要事項説明を義務付けるなどの制度改正が行われたのです。
重要事項説明に関係する法改正はその後も続きます。平成27年には建築士法がさらに改正され、重要事項説明書の項目が追加されました(建築士事務所の区分)。
また令和3年には「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」の施行により、重要事項説明書様式の一部が修正されています(押印の廃止など)。
重要事項説明の目的
重要事項説明の主な目的は「建築主の保護」です。
具体的には契約対象となる業務内容や報酬の支払い時期、契約解除方法などをあらかじめ建築主に伝えることで、契約判断の材料にしてもらうことが目的とされています。
重要事項説明の対象
重要事項説明の対象となるのは「建築士事務所の開設者」です。ただし建築種への実際の説明は「監理建築士」や、建築士事務所に所属する建築士が行います。
もし重要事項説明が行われなかったり、虚偽の説明が行われた場合は、建築士事務所の開設者と建築士の両方が監督処分・懲戒処分の対象となる可能性があります。
重要事項説明の方法
先ほど紹介した建築士法第24条の7によると、重要事項説明は「書面を交付」して行います。書面の書式に決まりはありませんが、後で説明する事項に漏れがあってはいけません。このため多くの契約では、「四会推奨標準様式」など、業界が用意するひな形が利用されています。
なお書面の交付方法は、紙の書面を手渡しするだけでなく「電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法」、つまりオンラインで提供することも可能です。
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重要事項説明の内容
重要事項説明の内容は、作成する設計図書の種類や、工事と設計図書の照合のしかたなどです。具体的な項目は建築士法第24条の7の1号〜6号に記載されています。
1 設計受託契約にあつては、作成する設計図書の種類 2 工事監理受託契約にあつては、工事と設計図書との照合の方法及び工事監理の実施の状況に関する報告の方法 3 当該設計又は工事監理に従事することとなる建築士の氏名及びその者の一級建築士、二級建築士又は木造建築士の別並びにその者が構造設計一級建築士又は設備設計一級建築士である場合にあつては、その旨 4 報酬の額及び支払の時期 5 契約の解除に関する事項 6 前各号に掲げるもののほか、国土交通省令で定める事項 |
指定された内容はすべて、必ず説明しなければなりません。しかし法律で定められていない詳細な事項を説明するのは自由です。
なお最後の「国土交通省令で定める事項」には、たとえば以下のものが含まれます。
- 建築士事務所の名称および所在地
- 建築士事務所の解説者の氏名(法人の場合は名称と代表者名)
- 対象となる建築物の概要
- 設計または工事監理の一部を委託する予定がある場合は、受託者の事務所の名称・所在地や解説者の氏名など
建築における重要事項説明のフロー
重要事項説明のフローは、大きく3つのステップに分けられます。
Step1 重要事項説明(契約締結前)
Step2 契約の締結
Step3 書面の交付(契約締結後)
なおStep1の重要事項説明では上で説明した内容を建築士が説明し、Step3の書面交付では、それに加えて以下の内容を記載した書面を渡します。
- 設計、工事監理の種類や内容
- 実施期間と方法
- 契約年月日
- 契約の相手方の氏名(名称)
四会推奨標準様式「重要事項説明書」について
すでに説明した通り、重要事項説明の書面には特に決まったフォームはありません。もちろんオリジナルで作成してもかまいませんが、あらかじめ用意されたひな形を使えるのであれば、その方が簡単・確実でミスの防止にも役立ちます。
重要事項説明のひな形でよく利用されるのは、四会推奨標準様式といわれるひな形です。「四会」は以下の4つの団体で構成され、建築請負の契約約款や重要事項設営のひながらを提供しています。
- 一般社団法人日本建築士事務所協会連合会
- 公益社団法人日本建築士会連合会
- 公益社団法人 日本建築家協会
- 一般社団法人 日本建設業連合会
ちなみに、四会推奨標準様式の重要事項説明書のひな形は、以下のサイトからダウンロードできます。ダウンロードサイトには肝心のひな形に加え、記載例や(ひな形の)使用上の注意も掲載されています。ぜひ参考にしてみてください。
重要事項説明について | 一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会
重要事項説明を理解してスムーズな建築工事を行いましょう
重要事項説明は建築主を守るものであると同時に、建築士の義務です。目的をしっかりと意識しつつ、必要な事項をもれなく記載した重要事項説明書(書面)を作成して、設計・監理契約をスムーズに進めましょう。
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