建築資材の高騰は建築主にとって大きな負担となります。さまざまな理由で建築資材が高騰している今、今後の見通しや補助金制度に興味を持っている方も多いのではないでしょうか。本記事では「今建てるべき?」と悩んでいる方に役立つ情報を紹介していきます。
建築資材が高騰している5つの理由
近年、さまざまな物価の価格が高騰しています。それは建築業界も例外ではなく、建築資材の高騰は非常に顕著です。ここではまず、建築資材が高騰している具体的な理由について解説していきましょう。
木材関連
木材関連の高騰については、一般に「ウッドショック」と呼ばれています。ウッドショックの主な原因としては、たとえばアメリカの新築住宅需要増加に伴う木材相場変動、ヨーロッパ各国の木材需要の増加、中国の経済回復を背景とした木材需要の増加、新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う輸送コンテナの取扱数減少などが挙げられます。
建築関連の資材として、木材は大きなウエイトを占めています。輸入木材の需給が逼迫したことで価格が連動するように高騰して、建築業界に多大な影響を与えているのです。
鉄材関連
鉄材関連の高騰は2020年の初めごろより問題になっています。
背景にあるのはやはり新型コロナウイルスです。世界中なパンデミックをきっかけにいったんは低迷した需要が2020年の半ばごろに急回復し、それに伴い鉄鉱石・原料炭・鉄材全般の価格が急激に上昇しました。
社会情勢の不安定性
ウクライナ危機にともなうロシアへの経済制裁も建築資材の急激な高騰へと繋がっています。
ロシアからの輸出入が大きく制限されたことで、世界中の資源価格は大きく上がりました。このため資源の大半を輸入に頼る日本でも、建築資材が大きく高騰することになったのです。
物流関連
建築資材は物流によって支えられています。物流の費用には輸送費が含まれていますが、車や船などの燃油価格高騰、ドライバーや整備士などの人手不足などがこれらの費用を押し上げているのです。
これらを理由とした輸送費高騰は一過性のものではなく、今後おいても継続されることが見込まれています。
円安関連
円安も建築費高騰の原因です。上で説明したとおり、日本は輸入依存率が非常に高いため円安は建築資材の高騰に直結します。円安は輸出にとっては有利な一方で、輸入では不利に働くためです。
2022年以降は円安が大きく進行しており、今後の動向も見通せないため、建築資材の高騰も歯止めが効かない状況となっています。
建築資材高騰の見通しと対応策
建築主にとって、いま一番気になっているのは建築費高騰の行方と対応策でしょう。
今後の動向ついて
さまざまな要因により、建築資材は高騰の一途を辿っています。それぞれの要因が複雑に絡み合っているため、これは短期的なスパンで解決できる問題ではありません。
また問題は日本だけでなく世界的な規模で発生しているため、今後どの段階で建築資材の高騰に歯止めが効くのかも不透明です。
結論として「今後もしばらくは建築資材の高騰が続く可能性がある」といえるでしょう。
建設資材高騰に対する対応策
建築資材の高騰に対して取れる対応策は、それほど多くありません。基本的な対策としては「建築費を抑制する」ことに尽きるでしょう。
建築費を抑制するためのポイントは、次の項目で説明していきます。
建築費を抑制するためのポイント
ここでは建築費を抑制するためのポイントを解説します。
信頼性のある事業者を選ぶ
ひとつめのポイントは「信頼性のある建設事業者を選ぶ」ことです。
もちろん建設事業者といっても大手ハウスメーカーから地域密着の工務店まで大小さまざまで、それぞれに品質管理の独自基準を持っています。
表向きだけでなく、実際に「コストをある程度削減しつつ、施工品質の高い工事を行ってくれる」信頼できる事業者を見つけることがコスト削減に役立つでしょう。
資材調達のスケールメリットを活かす
建築資材はさまざまなメーカーや商社に発注をかけて納品されます。
建築資材に限りませんが、一般に資材は少量で購入するより大量に購入した方がスケールメリットが効くため、結果として建築費の削減が可能です。
建設事業者を選定する際に、その事業者がスケールメリットを最大限に活かせるかどうかを確認すると良いでしょう。
活用できる補助金と建築のタイミング
建築資材の高騰に対しての対応策として有効なのは、補助金の活用です。ここからは、事業用建築に活用できる補助金と建築のタイミングについて詳しく解説します。
事業再構築補助金ついて
事業再構築補助金とは、ポストコロナ・ウィズコロナの時代における中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とした補助金です。
対象はコロナの影響で厳しい状況にある中小企業、中堅企業、個人事業主、企業組合等で、申請後に審査委員が審査のうえ予算の範囲内で採択されます。第費用的な枠における補助金額は次のとおりです。
通常枠(下限100万円)
従業員 | 20人以下 | 21人から50人 | 51人から100人 | 101人以上 |
最大補助額 | 2,000万円 | 4,000万円 | 6,000万円 | 8,000万円 |
補助率 | ・中小企業者等 3分の2 ・中堅企業等 2分の1 | ・中小企業者等 3分の2 ・中堅企業等 2分の1 | ・中小企業者等 3分の2 ・中堅企業等 2分の1(4,000万円超は3分の1) | ・中小企業者等 3分の2(6,000万円超は2分の1) ・中堅企業等 2分の1(4,000万円超は3分の1) |
回復・再生応援枠(下限100万円)
従業員 | 5人以下 | 6人から20人 | 21人以上 |
最大補助額 | 500万円 | 1,000万円 | 1,500万円 |
補助率 | ・中小企業者等 4分の3 ・中堅企業等 3分の2 | ・中小企業者等 4分の3 ・中堅企業等 3分の2 | ・中小企業者等 4分の3 ・中堅企業等 3分の2 |
原油価格・物価高騰等緊急対策枠(下限100万円)
従業員 | 5人以下 | 6人から20人 | 21人から50人 | 51人以上 |
最大補助額 | 1,000万円 | 2,000万円 | 3,000万円 | 4,000万円 |
補助率 | ・中小企業者等 4分の3(500万円超は3分の2) ・中堅企業等 3分の2(500万円超は3分の2) | ・中小企業者等 4分の3(1,000万円超は3分の2) ・中堅企業等 3分の2(1,000万円超は3分の2) | ・中小企業者等 4分の3(1,500万円超は3分の2) ・中堅企業等 3分の2(1,500万円超は3分の2) | ・中小企業者等 4分の3(1,500万円超は3分の2) ・中堅企業等 3分の2(1,500万円超は3分の2) |
建築するならいつがベスト?
建築資材の物価高騰は、まだ先が見通せません。事業用建築を建てるタイミングは非常に判断が難しいと言えるでしょう。
一方で、こうした状況を少しでも改善するために活用できるのが補助金です。令和5年度の「第10回事業再構築補助金」が近日中に公募される予定です。詳細は事務局の発表をご確認ください。
補助金は財源が枯渇すると打ち切られてしまうため、補助金を利用できる「今」が建築のタイミングだと捉えるのも戦略のひとつです。
建築資材高騰の動向を正しく理解し、適切なタイミングで建築しましょう
建築資材の高騰は上昇の一途を辿っています。補助金制度も現時点では利用できるものの、いつまで続くかはわかりません。
建築事業を検討している方は、建築資材高騰の動向と補助金制度の行方に引き続き注目していきましょう。