マンションの建築費を抑えるポイントについて解説します。「坪単価✕延床面積」で建築費用を概算し、収益シミュレーションでボリュームを適正化することと、市況をつかむために概算見積を早期に取得しましょう。価格競争を促すためには、設計を分離して相見積や入札制を採用することも有効です。
マンション建築費の相場は?
「マンションを建てたいけれど、費用はどれくらいかかるのだろう…」
そんな疑問を感じている方は大勢いらっしゃいます。そこで、ここではマンションの建築計画を立てるにあたって、ざっくりとした建築費用を把握する方法をご紹介します。
※ここで取り上げる「マンション」とは3階建て以上の共同住宅のこと。ちなみに2階建て以下の共同住宅は「アパート」です。
マンション建築費の概算方法
マンション建築の企画が立ち上がった段階では、建築費用は「坪単価概算(坪単価✕延床面積)」で算出されます。
坪単価概算は、マンションの収益シミュレーションとボリュームチェックに使用します。基本方針が決まったら、建設会社や設計事務所により詳細な概算へと進みます。
建築費用はあくまで本体工事費用であり、それに加えて杭(地盤改良)工事・インフラ工事・外構工事といった敷地条件により変動する付帯工事費用と、保険料・不動産取得税・登記費用・入居募集費用などの諸費用が掛かることに注意が必要です。
マンションの構造別坪単価
マンション建設費の坪単価目安は建物の構造によって変わります。以下の表は坪単価を構造別にまとめたものです。
構造方法 | 法定耐用年数 | 坪単価 |
---|---|---|
木造(W造) | 22年 | 60万円~80万円 |
軽量鉄骨造(S造) | 19年or27年 | 70万円~100万円 |
重量鉄骨造(S造) | 34年 | 80万円~110万円 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 47年 | 90万円~120万円 |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 47年 | 100万円~130万円 |
マンションの想定延床面積の算出方法
土地の目星がついている場合は、その土地に建てられる最大の延床面積を算出してみましょう。
建築可能な延床面積は、「敷地面積✕容積率」で算出できます。例えば、敷地面積が1,000㎡で容積率が60%の場合は、1,000×0.6=600となり、延床面積600㎡まで建築が可能です。
㎡単位の数字を坪単位に換算するときは、㎡を0.3025倍します。600㎡×0.3025=181.5坪となり、この土地には延床面積約180坪のマンションが建築可能と分かります。
※実際には、前面の道路幅や立地による各種の制限・緩和、共用部(共用廊下、階段、エントランスホール、エレベーターホール等)の面積不算入など複雑な要件が関わってきますので、詳細は建築コンサルタントや設計事務所へお問い合わせください。
マンション建設費の概算例
先述の条件から、180坪のマンションの概算建設費を試算すると下記のようになります。
重量鉄骨造(S造)の場合・・・14,400万円~19,800万円
鉄筋コンクリート造(RC造)の場合・・・16,200万円~21,600万円
※これに加えて建設費の10〜15%の諸費用を見込んでおく必要があります。
マンションの収益シミュレーション方法
マンションを建築して得られる収益には「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類があります。
インカムゲインとは
運用による収益のことで、家賃収入から諸費用(建築費用の減価償却費+修繕費用+維持管理費+各種税金等)を引いたものです。
キャピタルゲインとは
売却収益のことで、売却価格と取得時に掛かった費用の差額になります。
マンションの収益アップの方法
マンションの収益をアップさせる方法としては、次のような方策が考えられます。
- 家賃収入のアップ
- 建築費のコストダウン
- 減価償却費を抑える
- 修繕費用を抑える
- 維持管理費を抑える
- 税金を抑える
- 高値で売却する
収入を左右する条件:入居付けに掛かる経費、空室率、経年や競合による家賃下落など
支出を左右する条件:管理業務委託費、修繕費、融資金利、租税公課など
この記事では、②建築費のコストダウンと③減価償却費を抑える方法について以下に解説します。
マンションのレンタブル比を高める
建築費を抑えるために一番重要なことは、適正な規模で建築することです。
先述の通り、建築費は「坪単価✕延床面積」で算出されます。収益物件であれば、無駄な共用スペースなどは極力排除して収益を生み出す部分を増やし、無意味に規模を大きくし過ぎないことが重要です。
ここで参考となる指標が「レンタブル比」です。
マンションの面積は「専有面積(賃貸可能面積)」と「共用面積(エントランス・廊下・階段・EV等)」に分けられ、この2つを合計したものが「延床面積」となります。
レンダブル比は「専有面積(賃貸可能面積)÷延床面積」で計算され、マンションのレンタブル比の目安は一般的に65~80%とされています。
レンタブル比が低い ⇒ファミリータイプ・ゆったり型・一戸当たりの家賃重視
レンタブル比が高い ⇒ワンルームタイプ・詰め込み型・総部屋数重視
企画設計の段階でレンタブル比をチェックし、無駄に大きな建物となっていないかをよくチェックしましょう。
マンションの減価償却費を抑える
マンションは採用する建物構造により法定耐用年数が違います。法定耐用年数によって、減価償却費として一年間に計上できる金額が違うことに注意しましょう。
減価償却期間が長い構法(RC造・重量鉄骨造)
【メリット】
- 長期にわたって減価償却費を計上できるため、節税になる
- 途中で売却する場合でも残存資産価値が多くなり高額売却も期待出来る
【デメリット】
- 建築費の初期費用が高額になりがち
減価償却期間が短い構法(木造・軽量鉄骨造)
【メリット】
- 建築費の初期費用が比較的リーズナブル
【デメリット】
- 売却時に資産価値が残っておらず、売却収益が期待できない
インカムゲイン(運用収益)重視の場合は、減価償却費を抑えると会計上の収益が多くなります。早期に減価償却を終わらせれば、その後の収益アップも見込めます。
キャピタルゲイン(売却収益)を重視するなら、資産価値が下がりにくく、売却収益も期待できるRC造・重量鉄骨造を検討しましょう。
マンションの建築費を抑えるポイント
マンション建築費を抑えて収益をアップするポイントについて説明します。
収益シミュレーションでボリュームの適正化
マンションの規模は、敷地の広さと法規制で決めるのではなく、収益を最大化するための適正値で決めるべきでしょう。
そのためには建築費と家賃収入、各種の維持費用のバランスを検討する事が重要です。何度もシミュレーションを繰り返し、計画の手戻りも辞さない覚悟で慎重に計画を進めましょう。
建設業者の選定には相見積や入札を取り入れる
マンションの建築に当たっては、ハウスメーカーやゼネコンへ設計施工で一括発注するパターンが多いですが、設計は設計事務所や建築コンサルタントへ分離発注することも検討してみてください。
複数社が参加する相見積や入札制度を導入して、建設会社間の価格競争を促し建築費のコストダウン効果が得られる可能性があります。
市況をつかむために概算見積を早期に取得
建築費は、発注時期により材料の市場価格と労務費(繁忙度合い)のブレ幅が大きいのが特徴です。特に鉄骨材は市況の影響を大きく受けるため、基本設計段階で、着工時期を想定した概算見積を取得しておくことをおすすめします。
マンションの建築費を抑えて収益アップを目指しましょう
ここまで、マンションの建築費の相場と、建築費を抑えて収益をアップさせる方法について解説してきました。
マンションの収益アップの基本は、建築費用を抑えることです。そのためには、企画設計時で早期に坪単価概算見積を取得し、収益シミュレーションをしてボリュームをチェックすることが大切です。
収支が合わなければ、プランとボリュームの見直しをする作業を繰り返して、納得が行くまで十分に検討を重ねましょう。