なかなかうまく案件が取れない設計事務所の営業担当が、知っておくべきたった2つの営業戦略とおすすめの営業方法について解説します。また他社と差をつけるためには必須の、営業を行う上で知っておきたいポイントについても解説します。
設計事務所が知っておきたい2つの営業戦略
国土交通省の調査によると、令和3年4月1日の時点で、建築家が在籍している建築設計事務所は約99,152社あります。
そのため、やみくもに営業をしたとしても、他の多くの設計事務所を出し抜いて案件を受注することはできません。
ここでは、他の設計事務所と差別化するために知っておきたい「たった2つの営業戦略」についてご紹介します。
1.顧客を絞るためのターゲティング
ターゲティングとは、市場の細分化を行った後に、その市場に対してターゲットを絞ってマーケティングを展開することです。
設計事務所がターゲティングを行う場合、まずはどのようなニーズを狙うのか、事務所全体で具体的に定める必要があります。そのためには、建築市場にどのようなニーズがあるのか明確に把握しておかなければなりません。
次に自社で行なっていきたい、もしくは受注したい設計業務がどのようなものか決める必要があります。大衆向けなのか、ハイクラス向けなのか事務所としてしっかりと決めることが重要です。
「なんでもいいから案件を受注したい」という考えでは、「どの設計事務所に依頼してもいい」という顧客がターゲットになってしまいます。
実際にターゲティングを行う際には、以下のポイントを重点的に考えると良いでしょう。
ターゲティングで重点的に考えるべきポイント
- 市場規模
- ターゲットとなる市場の成長性
- 設計事務所の強み
- 競合他社の状況
- 参入障壁が高いか低いか
2.競合事務所との差別化
ターゲティングを行ったら、次に競合事務所との差別化を図る必要があります。仮にターゲットとした市場に競合する事務所が存在する場合、その事務所と同じようなことをしていても、延々と顧客を取り合うことになりかねません。
そこで競合事務所にはない自社の強みを作って、自社のポジショニングを明確化し、他事務所との差別化を図りましょう。
例えば「〜風のデザインや設計なら他の事務所よりも優れている」といった、明確な強みを作ることが重要です。
いきなり事務所としての強みを作るのは難しいですが、しっかりと実績を積み重ねていくことによって、自然と強みができ、事務所のブランド化にもつながります。
設計事務所の営業方法は「オフライン」と「オンライン」の2種類に分かれる
営業方法を大まかに分けると「オフライン」と「オンライン」の2種類に分類できます。
オフラインと聞くとアナログで時代遅れなイメージを持ちやすいですが、設計事務所においては現在でもなお効果的な営業方法です。
特にテレアポや飛び込み営業などは、上手く行えば効率的に顧客を獲得できるので、現代においてなお設計事務所の営業における基本と言えるでしょう。
ただしオフラインばかりに頼ってはいけません。オフラインだけではなくオンラインの営業手法を確立させなければ、今後業界の流れに取り残されてしまう可能性があります。
オフラインとオンラインの具体的なおすすめの営業方法については、後ほどそれぞれ詳しくご紹介します。
オフラインでの設計事務所の営業方法7選
設計事務所がやるべきオフラインの営業方法は数多くあります。多種多様な営業方法から、自社の営業スタイルに適した方法を見極めて、成約率を高められる手法を選びましょう。
ここでは、設計事務所におすすめのオフラインの営業方法を7種類紹介します。
ポスティング
ポスティングとは、宣伝を目的として様々な企業や店舗に直接販促チラシを投函する行為です。
IT化が進んで様々な媒体で広告が出せるようになった現在でも、多くの企業がポスティングを採用して紙媒体を使った宣伝を行っています。なぜならポスティングを行うことで、次のようなメリットがあるためです。
- 幅広い企業や世帯にアプローチができる
- 潜在顧客にサービスの利用を促せる
- ターゲットを絞って直接狙いたい企業に宣伝できる
- コスパが高く導入しやすい
もっともポスティングは、依頼する業者を間違えてしまうと、トラブルの原因になるので注意しましょう。
テレアポ
テレアポとは、顧客リストをもとに直接電話を行い、商談につなげて案件受注獲得を目指す営業手法です。昔から行われている営業方法であり、IT化が進んだ現代でもなお一定の成果を発揮しています。
設計事務所がテレアポを行うメリットは、以下のとおりです。
- 1日に大量の件数をこなせる
- 直接電話を行うので即効性がある
- コストが安い
- マーケティングリサーチにもなる
- 潜在顧客の獲得ができる
もっともテレアポは、信用されにくかったり、クレーム発生につながるリスクがあったりなどのデメリットもあります。
ダイレクトメール
ダイレクトメールとは、見込み顧客に対して直接メールを送信して、相手の興味や関心を高める営業手法です。設計事務所がダイレクトメールを営業に採用することで、次のようなメリットがあります。
- 直接顧客に情報を発信できる
- 伝えたい情報を自由に選べる
- 送付したメールに対してどれくらい効果が出たのか効果測定ができる
ただしダイレクトメールを営業手法に採用することで、時間と費用がかかったり、開封されずネガティブなイメージを見込み顧客に与えてしまったりなどのデメリットもあります。
FAX営業
ほぼすべての企業では、FAXを使っているので、FAXを営業手段に取り入れるのもおすすめです。設計事務所がFAX営業を行う場合、次のようなメリットがあります。
- FAX番号は公開情報のためメールアドレスよりも調べやすい
- 開封率が100%のため必ず目を通してもらえる
- 一度に大量の企業に対して送付できる
もっともFAX営業は、受け取る側にとってみれば迷惑と感じる場合が多く、企業イメージの低下につながる危険性もあるので注意しましょう。
セミナー
セミナーは、自社に調味・関心を持っている見込み顧客が集まりやすく有効な営業手法の1つです。設計事務所がセミナーを行う場合、次のようなメリットがあります。
- 自社を知っている見込み顧客の情報が集まる
- 直接自社をアピールできる
- 見込み顧客との信頼関係を築ける
- 営業効率が良い
ただしセミナーを開催する場合、担当者の負担が大きく、開催のための広告費やスタッフの人件費など、他の営業手法よりも費用がかかるというデメリットもあります。
関係役所への挨拶回り
設計事務所の場合、関係役所へ挨拶回りを行うのも有効な営業方法です。
定期的に市役所や町役場に訪れて挨拶回りを行えば、担当者に事務所の名前を覚えてもらえます。事務所の名前さえ覚えてもらえれば、何かあった時に市役所や町役場から声をかけてもらえることもあるので、関係役所への挨拶回りは定期的にやっておいて損はありません。
飛び込み営業
飛び込み営業とは、アポイントを取らずに企業に訪問して、自社の商品やサービスを提案する営業手法のことです。訪問営業とは異なりアポイントを取らないので、断られてしまうことも珍しくありませんが、アポイントを取得しづらい企業に直接営業できる確率が高い方法と言えます。
設計事務所が飛び込み営業を行うメリットは、以下のとおりです。
- 担当者を直接紹介してもらえる
- 関係役所の運営状況を実際に把握できる
- 自社の資料を直接渡せるので目を通してもらえる可能性が高まる
- 仕事の取りこぼしを防止できる可能性がある
ただし、他の営業手法と比べて効率が悪く、時間や人のコストがかかるというデメリットもあります。
オンラインでの設計事務所のおすすめ営業方法4選
次に設計事務所におすすめのオンラインの営業方法について、以下の4種類をご紹介します。
- ホームページ運用
- SNS集客
- インターネット広告
- オンラインセミナー
ホームページ運用
ホームページ運用とは、マーケティングで達成したい目的を実現するためにサイトを活用することを指します。
資料請求の促進からブランディング、問い合わせの増加まで、うまくホームページを運用することで様々な目的を達成することが可能です。設計事務所がホームページ運用を行う場合、次のようなメリットがあります。
- 新規顧客獲得につながる
- 情報発信を通じて企業の信頼や安心感の向上につながる
- 求人募集への活用や社内教育にも利用可能
- アクセス解析などでマーケティングにも活用できる
ただしホームページ運用をする場合、戦略的に運営しないとなかなか効果がでなかったり、ランニングコストがかかったりなどのデメリットがあります。
SNS集客
SNS集客とは、さまざまなSNSサービス( Twitter・ Instagram・ Facebookなど)を活用してメッセージを発信し、見込み顧客と繋がりながら、リストの獲得や問い合わせなどにつなげる集客方法のことです。
設計事務所がSNSを活用して集客する場合、次のようなメリットがあります。
- 無料で使える
- 勝手に拡散される
- 新しい層へのアプローチが可能
- 成果が出るまで早い
- 売り込まずとも売れる
ただしSNSを活用する場合、炎上や誹謗中傷のリスクや、アカウント停止やサービス終了などでいきなり利用不可になるケースがあるので注意が必要です。
インターネット広告
インターネット広告とは、費用を支払ってyahooやGoogleに広告を出稿して集客する営業方法です。
クリック一つで広告の公開から停止まですぐに操作でき、24時間いつでも広告を出稿・掲載できます。設計事務所がインターネット広告を利用するメリットは、次のとおりです。
- ターゲットを絞って配信できる
- 少ない費用からすぐに始めれる
- 効果測定できる
ただしインターネット広告は、キーワードによって費用が高額になるというデメリットがあります。またうまく広告運用と効果測定をするためには、インターネット広告に関する専門知識が必要です。
オンラインセミナー
オンラインセミナーは、自社に興味を持っている見込み客が集まりやすく効果的な営業手法です。 オンラインセミナーを設計事務所が開催するメリットは、次のとおりとなります。
- 準備や運営の手間がかからない
- 人数や場所に制限がなく幅広い集客が可能
- 少ないコストで大規模な開催が可能
ただしオンラインセミナーの場合、パソコンが苦手な人が参加しにくかったり、開催者と受講者側での交流が生まれにくかったりなどのデメリットがあります。
【他社と差をつける】設計事務所の営業で知っておきたい4つのポイント
ここでは他社と差をつけるために、設計事務所が営業を行う上で知っておきたい4つのポイントについて解説します。
自社のポジションを明確化する
営業をスムーズに成功させるためには、自社が提供している価値と市場における需要がマッチしていなければなりません。
まずは自社のポジションを明確化して、市場で需要があるのか、あるのであれば競合他社とどのような違いや強みがあるのか洗い出しましょう。
仮に競合他社と差別化できる強みがないのであれば、自社が提供している徒歩でどのように需要を満たすことができるのか考える必要があります。
既存の取引ルートの見直し
営業をしていても全く成果が出ないという場合は、既存の取引ルートが適切であるか見直しましょう。
例えば、現在受注しているプロジェクトのほとんどが紹介によるものだったり、飛び込み営業からばかりでオンラインを介した受注がまったくなかったりする場合は、営業方法の見直しが必要です。
営業部門の改善
効率的に営業を行うためには、営業部門の改善を行うことも重要です。
例えば、営業管理システムを導入したり、WEB集客に力を入れたりなど、営業に人数を避けなかったとしてもうまく回せるように様々な手段を検討しましょう。
オンラインとオフラインをうまく活用する
営業を行う際は、オンラインとオフラインをうまく組み合わせることが重要です。
例えば、飛び込み営業やテレアポには、直接見込み顧客と話して、自社の魅力を伝えられるというメリットがあります。しかしその一方で、飛び込み営業やテレアポでは営業できる数に限りがあります。
一方でホームページ運用やSNSを使った集客の場合、不特定多数の見込み顧客にアプローチすることが可能です。
そのため営業の方法は1つに限定するのではなく、オンラインとオフラインをうまく組み合わせながら活用して、様々な側面からアプローチしましょう。
設計事務所はオンラインとオフラインをうまく活用して営業を行うのが重要!
今回は設計事務所が知っておきたい営業戦略や、おすすめの営業方法を解説してきました。
効率的に集客して案件を獲得するためには、オフラインだけではなくオンラインもうまく組み合わせながら営業を行わなければなりません。
特に近年ではオンラインを活用した営業が重要度を増しており、競合他社と差をつけるためには早い段階から活用できる環境を整える必要があります。