本記事では商業施設の設計を依頼する際に、どのような設計事務所を選べば良いのか、事前に知っておきたい5つのポイントについて解説します。また商業施設の設計に強い設計事務所や依頼をする際のよくある疑問・質問についても解説します。
商業施設の設計に強い設計事務所の種類
商業施設の設計に強い設計事務所としては、主に次の2種類が挙げられます。
- グループ系組織設計事務所
- 独立型組織設計事務所
それぞれどのような種類の設計事務所なのか、詳しく見ていきましょう。
グループ系組織設計事務所
グループ系組織設計事務所とは、特定の企業のグループに属している設計事務所です。例えば三菱地所設計やNTTファシリティーズ、JR東日本設計などがグループ系組織設計事務所にあたります。
こういったグループ経営組織設計事務所は、同じグループに属している企業の商業施設に関する建築設計を中心に行うのが一般的です。
独立型組織設計事務所
独立型組織設計事務所とは、特定の企業グループからは独立した立場で、様々なプロジェクトに関する建築設計を行っている組織設計事務所です。
グループ系組織設計事務所のように特定の企業グループに関する案件しか受けられないといった縛がなく、商業施設から公共施設まで、幅広く柔軟に業務できるのが強みになります。
商業施設の設計に強い設計事務所10選
ここでは、商業施設の設計に強いとされる設計事務所10社の会社概要や過去の実績を紹介します。
三菱地所設計
売上高 | 約199億円 |
従業員数 | 743名 |
設立年度 | 20001年 |
資本金 | 3億円 |
事業内容 | 建築の企画・設計監理、都市・地域計画、建築コンサルタント |
三菱地所設計は、1890年に設置された「丸ノ内建築所」をルーツとする設計事務所です。その後、三菱地所の設計管理部門となり、インハウス型の建築設計事務所として長期間活動した後、現在の三菱地所設計が設立されました。
三菱地所設計が過去に建築設計した商業施設の例
- 広尾ガーデンヒルズ
- 横浜ランドマークタワー
- 西新橋スクエア
- 東京ツインパークス
- 有楽町イトシア
JR東日本建築設計事務所
売上高 | 103億円 |
従業員数 | 510名 |
設立年度 | 1989年 |
資本金 | 5000万円 |
事業内容 | 建物及び付帯設備並びに工作物の企画、設計、管理、構造設計、環境設計、測量 |
JR東日本建築設計事務所は、JR東日本グループに所属するグループ系組織設計事務所です。
東日本旅客鉄道の建築部門にルーツを持ち、1989年に建築部門から分離して独立した設計事務所となりました。主にJR東日本グループ関連の建築設計を数多く行っており、日本にある設計事務所の中では鉄道関連の分野に突出した事務所です。
JR東日本建築設計事務所が過去に建築設計した主な建築物の例
- 秋田ノーザンゲートスクエア
- 三鷹駅コスモスプラン
- JR東日本本社ビル
- 八王子みなみ野駅
- JR南新宿ビル
日建設計事務所
売上高 | 479億円 |
従業員数 | 2133名 |
設立年度 | 1950年 |
資本金 | 4億6,000万円 |
事業内容 | 建築の企画・設計監理、都市・地域計画およびこれらに関連する調査・企画コンサルタント業務 |
日建設計は、大阪で1900年に設立された「住友本店臨時建築部」をルーツにもつ建築設計事務所です。1950年に住友商事建築部門から分離独立してできた事務所になります。
こういった創業の経緯から、住友系の商業施設やビルなどを数多く手がけています。
日建設計が過去に建築設計した商業施設の例
- MIYASHITA PARK
- 流山おおたかの森
- 梅田阪急ビル
- 渋谷スクランブルスクエア
- 東京ミッドタウン日比谷
東急設計コンサルタント
売上高 | 51億円 |
従業員数 | 251名 |
設立年度 | 1973年 |
資本金 | 1億円 |
事業内容 | 建築ならびに土木に関する企画、調査、設計、工事監理及び請負 |
東急設計コンサルタントとは、東急グループに所属するグループ系組織設計事務所です。
1963年に、東急不動産株式会社に設立された設計管理部門がルーツで、もともとは東急グループのインハウス設計事務所でした。
現在は東急グループから独立しており、東急グループだけではなく大手デベロッパーや他の鉄道事業者などを顧客としたプロジェクトも数多く手がけています。
東急設計コンサルタントが過去に建築設計した商業施設の例
- 渋谷マークシティ
- 新静岡セノバ
- 浜松町スクエア
- 日本橋丸善東急ビル
- 東急百貨店日吉店
梓設計
売上高 | 123億円 |
従業員数 | 685名 |
設立年度 | 1946年 |
資本金 | 9000万円 |
事業内容 | 建築設計、工事監理、都市計画・地域計画、調査・企画、 コンサルタント、 トータルマネージメント、ほか |
梓設計は、1946年に創設された組織系建築設計事務所です。
早い段階からBIMを導入した設計事務所として有名で、過去には国土交通省が初めてBIM採用を条件とした「新宿労働総合庁舎外設計業務」の公募型プロポーザルに選定されました。
梓設計が過去に建築設計した主な建築物の例
- 埼玉スタジアム
- テレビ東京天王洲スタジオ
- 多摩センター百貨店ビル
- 福岡国際センター
- アクアパレット松山
INA新建築研究所
売上高 | 30億円 |
従業員数 | 270名 |
設立年度 | 1959年 |
資本金 | 5000万円 |
事業内容 | 建築設計・都市計画コンサルタント |
INA新建築研究所は、東京都文京区にある独立系組織建築設計事務所です。主に商業施設の建築設計を行っており、近年は都市計画コンサルタントとして大規模都市開発なども積極的に行っています。
INA新建築研究所が過去に建築設計した建築物の例
- ライオンズタワー仙台大手町
- エムズ北仙台
- アルカス土
- 伊勢市小俣総合体育館
アール・アイ・エー
売上高 | 29億円 |
従業員数 | 197名 |
設立年度 | 1949年 |
資本金 | 9500万円 |
事業内容 | 都市・建築・住宅に関する調査・研究・企画・計画・設計 |
アール・アイ・エーは、東京都港区にある独立系組織設計事務所です。
もともとは、建築設計協同組織が前身であり、現在は大規模建築物や法定再開発などを中心に行っています。
アール・アイ・エーが過去に建築設計した建築物の例
- 渋谷Q-FRONTビル
- 二子玉川RISE
- DAIKANYAMA T-SITE
- 天王州JALビルディング
- 品川クリスタルスクエア、シーフォートスクエア
東畑建築事務所
売上高 | 65億円 |
従業員数 | 3359名 |
設立年度 | 1932年 |
資本金 | 3000万円 |
事業内容 | 建築・土木・造園の設計監理 都市計画およびこれらに関連する調査・企画・コンサルタント業務 |
東畑建築事務所は、大阪府大阪市に本社がある独立系組織設計事務所です。
東畑謙三が創設した建築設計事務所をルーツとしており、現在は都市計画からコンサルタント業務まで、建築設計に関する幅広い業務を行っています。
東畑建築事務所が過去に建築設計した建築物・商業施設の例
- イオンタワー
- イオンモールが運営する各地のSC
- 横浜国際総合競技場
- 小倉競馬場
- コンベックス岡山
日本設計
売上高 | 176億円 |
従業員数 | 956名 |
設立年度 | 1967年 |
資本金 | 1億円 |
事業内容 | 建築、都市・地域計画・都市再開発事業 環境アセスメント、造園 土木およびこれらに関連する設備、構造 インテリア等についての企画、計画、設計 工事監理 コンサルティングならびに調査鑑定 |
日本設計は、国内で初めて建築された超高層ビル「霞が関ビルディング(1968年竣工)」を設計したメンバーが中心となり、1967年に設立された組織設計事務所です。
超高層ビルを設計したメンバーが中心となり設立されたので、過去には新宿三井ビルや京王プラザホテルなど日本を代表とする超高層ビルの建築設計を数多く行ってきた実績があります。
毎年発表されるBD World Architecture 100の2021年版では、世界ランキング18位となっており、日本だけではなく世界からも注目されている建築設計事務所です。
日本設計が過去に建築設計した主な商業施設・建築物の例
- 新宿三井ビルディング
- 渋谷公会堂
- 虎ノ門ヒルズ
- 三鷹の森美術館
- 日本橋三井タワー
- JRタワー
久米設計
売上高 | 116億円 |
従業員数 | 650名 |
設立年度 | 1932年 |
資本金 | 9000万円 |
事業内容 | 建築設計・工事監理、 都市計画・地域計画、 構造設計、環境設備設計、 マネジメント業務(DM・PM・CM・FM)、 土木・景観設計、インテリア設計、 改修・リニューアル設計、 不動産開発企画(宅地建物取引業) |
久米設計は、1932年にヨーロッパで建築を学んだ久米権九郎氏が設立した建築設計事務所です。現在は日本の主要都市や中国・ベトナムなど、海外にも積極的に事務所を展開しています。
エンジニアリングとデザインが統合された総合設計組織事務所として、これまでに社会的な評価の高い数多くの建築物の設計を手がけてきました。
久米設計が過去に建築設計した主な商業施設・建築物の例
- 霞が関コモンゲート
- 中央大学多摩キャンパス
- 恵比寿ガーデンプレイス
- 高島屋上海店
- 東京国際空港国際貨物ターミナル
商業施設の設計を依頼する事務所を選ぶ5つのポイント
商業施設の設計を依頼する事務所を選ぶ場合、どのような点を基準にすれば良いのでしょうか?
ここでは、商業施設の設計を依頼する際に知っておきたい事務所を選ぶ5つのポイントについて解説していきます。
スムーズなコミュニケーションが取れるか
商業施設の建築を行う場合、プロジェクトは何年にも及んで進んでいくケースがほとんどです。
基本的には、建築設計事務所との間で協力しながら、商業施設を建築する土地探しから設計、建築、商業施設のオープンという流れで建築が進められます。
また商業施設がオープンした後も、定期的にメンテナンスや施設の改装なども行わなければなりません。そのため依頼する建築設計事務所を選ぶ際には、必ずコミュニケーションがスムーズに取れる事務所を選びましょう。
コミュニケーションがスムーズに取れない場合、ひょんなことから行き違いが発生してしまったり、建物の仕上がりが思ったものと違ったりなど、自社と設計事務所の間でミスマッチが発生してしまう可能性が高まります。
コミュニケーションがスムーズに取れるかどうか、次のようなポイントに着目してみると良いでしょう。
- 建築設計に関する専門用語をわかりやすく説明してくれる
- 自社の要望に沿った提案をしてくれる
- 専門的な事柄も理解できるまで説明してくれる
- やり取りにかかる時間が少ない
- できないことはできないとはっきり言ってくれる
過去の実績が豊富か
商業施設の建築を依頼する際は、過去の実績が豊富な事務所かどうかというのも重要です。
どれだけ自社の提案に即したデザインを設計してくれたとしても、これまで過去の実績が全くない設計事務所だとなかなか信用して任せることはできません。
依頼する予定の設計事務所が過去にどのような実績があるのか、その実績は監修などで携わったものではなく設計監理をその事務所が行ったものなのか、など事前にしっかりと確認しましょう。
監理能力に長けているか
設計事務所を選ぶ上では、監理能力に長けているかどうかというのも重要です。設計が無事に終わり、工事が実際に始まると、設計事務所は現場で工事の進行状況や施工管理の状況などのチェックを行います。
監理能力に長けていれば、施行ミスや工期の遅れなど、大きなトラブルが発生することを防ぐことが可能です。
自社に適したコストマネジメントができるか
商業施設を建築する際は、自社に適したコストマネジメントができるかというのも、設計事務所選びを行う上で重要となります。
自社に適したコストマネジメントができるかどうか見極める際には、数社から見積もりをとった上で、比較検討すると良いでしょう。
将来を見据えた関係が構築できるか
商業施設を建築する上では、将来を見据えた良好な関係が構築できるかどうかというのも重要です。
工事だけで終わりというわけではなく、その後の維持管理やメンテナンスなどでも、建築設計事務所とは関係を継続していかなければなりません。
この事務所を選んで良かった、この事務所の人たちと仕事をして良かった、と思えるような信頼関係を築ける事務所を選ぶのが良い仕事をするために重要なポイントです。
商業施設の設計を依頼する場合は信頼できる設計事務所を選ぼう!
商業施設の設計を依頼する場合、単純に知名度や人気ではなく、自社に適した設計事務所を選ぶことが重要です。
商業施設の建築は、何年もの時間がかかる大規模なプロジェクトになります。そのため知名度や人気がある事務所だからと言って、コミュニケーションやコストマネジメントの面で自社とは合わないところを選んでしまうと大きなトラブルに発展してしまいかねません。
今回紹介した商業施設の設計を依頼する事務所を選ぶポイントを参考にして、自社に適した信頼できる設計事務所を選びましょう!