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下請法とはどんな法律?事業者が注意すべきポイントをわかりやすく解説します

公開日:2023.08.21 更新日:2023.08.21
下請法とはどんな法律?事業者が注意すべきポイントをわかりやすく解説します

建設工事において不利な扱いを受けないよう、下請企業を守ることを目的とする「下請法(下請代金支払遅延等防止法)。この記事では下請法の主な内容と、元請企業が特に注意すべきポイントを紹介していきます。

下請法とは?

下請法(正式名:下請代金支払遅延等防止法)とは、大手企業が小規模企業や個人事業主に対して行う、不当な取引行為を禁止する法律です。具体的には、商品やサービスの対価を不当に減額したり、理由のない返品を行ったり、支払いを遅延させたりすることを禁じています。

下請法の目的

下請法の目的について、条文の第1条にはこのように書かれています。

第一条 この法律は、下請代金の支払遅延等を防止することによつて、親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに、下請事業者の利益を保護し、もつて国民経済の健全な発達に寄与することを目的とする。

下請法の直接的な目的は「下請代金の支払遅延等」の防止によって「下請け事業者の権益を守る」ことです。しかし究極的には「国民経済の健全な発展」を目的としています。

適用される取引

下請法の対象となる取引は、以下の4種類です。

【製造委託】

製造委託とは製品や部品などの製造を他社に委託する取引です。例えば、自動車メーカーが部品製造を下請け事業者に依頼するケースなどがこれに該当します。

【修理委託】

修理委託とは、機械や設備の修理や保守を他社に委託する取引です。これには製造ラインの機械のメンテナンスやビルの設備修理などが含まれます。

【情報成果物作成委託】

情報成果物作成委託とは、ソフトウェア開発、ウェブコンテンツ作成、データ解析など、情報を生成したり編集したりする業務を他社に委託する取引です。IT開発などを外部のエンジニアや企業に依頼するケースがこれに該当するでしょう。

【役務提供委託】

役務提供委託とは、特定のサービスや機能を他社に委託する取引です。例えば、製品の運送や、カスタマーサポート、決済処理、データ入力などの業務が含まれます。

対象となる事業者

下請法の適用対象となるのは「親事業者(元請け事業者)」です。親事業者の定義については下請法第7条で細かく指定されています。

①製造委託、修理委託、政令で定める情報成果物作成委託と役務提供委託の場合

  • 資本金3億円を超える法人で、個人や資本金3億円以下の法人に委託する者
  • 資本金1,000万円を超える法人で、個人や資本金1,000万円以下の法人に委託する者

②情報成果物作成委託と役務提供委託の場合(①に該当しないもの)

  • 資本金5,000万円を超える法人で、個人や資本金5,000万円以下の法人に委托する者
  • 資本金1,000万円を超える法人で、個人や資本金1,000万円以下の法人に委託する者

おおまかには、個人事業主や自社より資本金の小さい企業に業務委託する場合は「親事業者」になる(下請法の適用対象になる)と考えておけば良いでしょう。

下請法による「義務」と「禁止行為」

下請法の重要なポイントとなるのは「4つの義務」と「11の禁止行為」です。それぞれについてわかりやすく説明していきます。

4つの義務

親事業者には、以下の4つの義務が課されます。

①60日ルール:下請代金の支払期日は、下請事業者の業務完了から60日で設定します。ただし下請法第2条の二には「できる限り短い期間内において定められなければならない」とあるため、支払いは可能な限り早いタイミングで行う必要があります。

②書面の交付:取引の内容を明確にするため、親事業者は下請事業者に「給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面」を提供します。紙媒体のほか、デジタル媒体で交付する(メールで受信させる)ことも可能です。

③遅延利息:あらかじめ設定した支払期日までに下請代金が支払われなかった場合、親事業者は下請事業者に年利14.6%の遅延利息を支払わなくてはなりません。利息計算の起点となるのは、委託契約が成立した日から数えて60日を経過した日からです。

④書面の保管:親事業者は、下請事業者に交付する紙媒体もしくはデジタル媒体の書面を作成し、それを2年間保管しなければなりません。

11の禁止行為

親事業者には、以下の11種類の行為が禁止されます。

①受領拒否

受領拒否とは下請事業者の納品を拒むことです。請負事業者に責任がないのにかかわらず受領拒否をすることは許されません。

②下請代金の支払遅延

契約の目的物(物品など)が納品された場合、あらかじめ設定した日(納品から60日以内)までに下請代金を支払わなくてはなりません。

③下請代金の減額

下請事業者に責任がないのに、発注時に決めた下請代金を発注後に減額することは許されません。これは下請事業者との「合意」がある場合も同様です。

④返品の禁止

親会社が契約の目的物(物品など)を受領した場合、それが下請事業者に責任がある不良品などの場合をのぞき、返品することはできません。また不良品などを返品する場合は速やかに(6か月以内に)行なう必要があります。

⑤買いたたきの禁止

下請代金を決める際に、同等の契約内容で通常支払われる対価(一般的な相場)よりも著しく低い金額で「買いたたく」ことは許されません。なお、下請代金にコスト上昇を反映しない場合も「買いたたき」と見なされることがあります。

⑥購入・利用強制の禁止

親事業者は、正当な理由がないにもかかわらず下請事業者に特定の製品・原材料を購入するように強制したり、サービスを強制的に利用させることはできません。

⑦報復措置の禁止

親事業者が下請法に違反し、そのことを下請事業者が公正取引委員会や中小企業庁に報告した場合、報復として取引の縮小や停止など下請事業者にとって不利な扱いをすることは許されません。

⑧有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

下請事業者に特定の部品や原材料などを購入させている場合、下請事業者に責任がないにもかかわらず、その代金を下請代金よりも早いタイミングで支払わせたり下請代金から控除することはできません。

⑨割引困難な手形の交付の禁止

下請代金を手形で支払う場合、それを一般の金融機関で割引困難な手形として交付することは許されません。

⑩不当な経済上の利益の提供要請の禁止

親事業者が下請事業者に、金品やサービスといった「経済上の利益」を不当に要求することはできません。

⑪違不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止

下請事業者に責任がないにもかかわらず発注を取り消したり、発注内容を不当に変更したりすることはできません。また目的物の受領後に、(下請事業者に責任がないのに)やり直しをさせることもできません。

下請法に違反したら?

下請法の規定のうち、特に4つの義務のうち「②書面の交付」と「④書面の保管」に違反した場合、親事業者には公正取引委員会から罰則が科されます。

罰則の内容は「50万円以下の罰金」です。

公正取引委員会は、親事業者や下請事業者に取引について報告をさせたり、事務所・事業所に立入検査をすることができます。そして、もし違反が見つかった場合は親事業者に「勧告」が出されます。

下請法を理解して建設プロジェクトを円滑に進めましょう

下請法は、健全な商取引を保証するための重要な法律です。下請法の遵守は公平で健全なビジネス環境を維持し、建設プロジェクトを円滑に進めるうえで欠かせません。工事に関わるすべての事業者は、ぜひこの記事を参考にしながら、下請法についてしっかり理解するようにしましょう。

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