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建築資材の高騰はどこまで続く?建設業者が資材費用を抑える方法について解説!

公開日:2023.07.21 更新日:2023.08.18
建築資材の高騰はどこまで続く?建設業者が資材費用を抑える方法について解説!

2020年の新型コロナウィルスのパンデミックをきっかけに、建築資材の高騰が続いています。この記事では資材価格の高騰に悩む建設業者向けに、その原因と最新の価格動向を分析し、資材高騰リスクをできるだけ回避する方法について解説します。

建築資材高騰の現状

2020年の新型コロナウィルスのパンデミックを契機として、建設工事費の上昇に歯止めが掛からない状態になっています。

建設工事費高騰の要因はいくつかありますが、主要な原因のひとつとして挙げられるのが建築資材の高騰です。

まずはその現状について分析してみましょう。

建設工事費の高騰

建設工事費の相場価格の推移を確認するのに参考となるのが、国土交通省が毎月公表している「建設工事費デフレーター」です。

建設工事費デフレーターは、国内の建設工事全般を対象として工事価格相場の増減を示すものです。

算出にあたっては労務費と資材費それぞれの相場が反映されており、建築工事費の市況を表しています。

建築・土木を合わせた「建設総合」工事費は、2015年度の価格を基準(100)とすると2021年度は113.2でした。これは、建築工事費の市況が2015年と比較して13.2%上昇したことを示します。直近の2022年10-12月四半期の数値では121.9となっており、さらに高騰傾向が続いていることが分かります。

  • 建設工事費デフレーター(2015年度基準)の年度別推移
  • 建設工事費デフレーター(2015年度基準)の四半期別推移 
参照:総合政策:建設工事費デフレーター – 国土交通省

建築資材の高騰

建設工事費の中で大きなウエイトを占める資材費の価格上昇に関しては、日本銀行が毎月公表している「企業物価指数」が参考になります。

企業物価指数は、企業間で取引される資材やエネルギーなどの価格変動を測定するもので、企業間での商取引における値決めの参考指標としても用いられています。

最新の2023年3月の指数は、2020年度の価格を基準(100)とすると次の通りです。

 【国内企業物価指数】 119.8

 【輸出物価指数】 126.8

 【輸入物価指数】 158.1(円ベースの場合) ※契約通貨ベースでは133.9

特に輸入品の物価が高騰していることが分かり、ここ最近の円安が大きく影響していると考えられます。

参照:企業物価指数の公表データ一覧 : 日本銀行 Bank of Japan

建築資材の価格動向については、別の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:【2023年最新】建築資材価格の推移は?今後の資材価格動向についても解説します

建築資材高騰の理由

建築資材の高騰には複数の要因が考えられます。

ウッドショックの影響

2020年に全世界で新型コロナウィルスの感染が拡大したことにより、人々が外出を控えるようになり「巣ごもり需要」が拡大しました。特に北米ではこれを契機に住宅の建設ラッシュが始まり、住宅建設資材としての木材需要が急速に高まっています。

その結果木材価格が高騰し、木材の多くを北米からの輸入に頼っていた日本の木材市場も大きな影響を受けました。

その影響は一般木材のみに留まらず合板にまで波及し、木造だけでなくコンクリートの型枠で合板を使用するRC造やS造といった構法でも建設費が上昇しています。

一時の木材価格の高騰は落ち着きを取り戻していますが、市場価格はいまだ高止まりしているのが現状です。

ロシア-ウクライナ戦争による資源価格の高騰

2022年のロシア-ウクライナ戦争の発生により、ロシア産天然ガスの輸入価格が高騰しています。

発電の燃料に天然ガスを使用する火力発電所の発電コストが上昇し、その結果電気料金も高騰することになりました。

建材を製造する工場は、燃料や電気料金のランニングコスト上昇分を製品価格に転嫁せざるを得ない状況となり、これも資材価格の上昇に追い打ちをかけています。

円安の影響

日本国内においては、日銀の低金利政策の継続により円安が進行しています。

円安は輸入資材の購買価格の上昇となり、小売価格にストレートに反映されることになります。

コンテナ料金の上昇

新型コロナウィルスのパンデミックにより、物流のサプライチェーンが分断される事態となりました。

特に船便によるコンテナ輸送価格が高騰したまま高止まりしており、輸入資材の価格上昇の原因となっています。

急激な需要回復による鋼材・半導体の不足

コロナ禍が落ち着いた2022年から、電化製品やそれに使用される半導体需要が急増しています。

半導体関連工場の建設需要が急増し、その多くは鉄骨造であるため鋼材価格が高騰したうえに長納期が常態化しています。

建築資材高騰の今後の見通し

ロシア-ウクライナ戦争の長期化によるエネルギー価格の上昇リスクは継続しており、今後も高騰リスクは続くと予想されています。

さらに「働き方改革」関連法の施行により、人件費が上昇しています。工場生産および物流コストのさらなる上昇も予測されているため、今後も楽観視はできない状況です。

先に挙げた「建設工事費デフレーター」や「企業物価指数」の最新情報をチェックして、先の見通しを予測することが大切です。

価格の上昇/下落のタイミングをつかめば、先行発注あるいは発注の先送りによって損失を回避できる可能性もあるでしょう。

建築資材高騰への対応策

建築資材価格の高騰に対応し、受注工事で利益を確保するための対応策をいくつかご紹介します。

図面・仕様の早期確定

早期に図面と仕様が確定すれば、複数の仕入先から相見積を取得する余裕期間が生まれます。

特に今後も価格上昇が明らかな局面では、先行発注すればその時点で購買価格を固定できるメリットがあるため、発注者や設計者に早期の図面および仕様書の確定を促しましょう。

VE/CDの活用

設計図書に記載されている内容であっても、積極的にVE/CDを実施してコストダウンに務めるべきです。

同じ性能でより安価な製品を提示したり、より合理的な施工方法を考案したりするなど、発注者と設計者に提案することが大切です。

また、複数の現場で同じ資材を取りまとめて発注のスケールメリットを出すことも価格交渉においては有利に働くことでしょう。

見積金額スライド条項の適用

公共工事の場合は「スライド条項」があり、急激な価格高騰の場合は受注者側の要請により請負額を変更できる制度があります。

民間工事の場合でも同様の項目を請負契約時の約款に盛り込み、発注者に了承をいただく努力をしましょう。丁寧に合理的な説明をすれば、スライド条項と同様の制度が適用できる可能性があります。

競合他社の動向により、スライド条項の適用が現実的には難しくても、提出した見積の有効期間を1〜3ヵ月程度に短く設定することは、資材高騰リスクの回避になるでしょう。

最新の情報を集めて建築資材の高騰に対応しましょう

ここまで、建築工事費と建築資材の価格高騰の動向とその要因、今後の動向について解説してきました。

コロナ禍のパンデミックやロシア-ウクライナ戦争の勃発など建築コストの上昇には不可抗力による要因も多くありますが、競合他者との価格競争を前にしては、ただ黙って経過を眺める訳には行きません。

国が発表する各種の統計数値をマメに確認したり、他業種の動向にも目を配るなど建築コストの上昇を抑える努力を継続して行きましょう。

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