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積算業務のフローとは?業務に役立つスキルや資格についても紹介します

公開日:2023.07.21 更新日:2023.07.21
積算業務のフローとは?業務に役立つスキルや資格についても紹介します

積算業務を適切に行うには、業務の手順について正確に理解する必要があります。この記事では一般的な積算業務のフローと、積算業務に役立つスキルや資格についてわかりやすく解説していきます。

そもそも積算とは

積算とは、建築や土木工事などの工事計画を立てる際に、必要となる工事費用を具体的に計算し、予算を立てる作業のことです。

関連記事:積算とはどんな業務?目的や具体的な積算項目についてわかりやすく解説します。

なお、積算はあらかじめ工事に必要な費用を予測し、工事にかかる全体の費用を積み上げるという手順で行われます。工事の内容や規模によって積算の作業内容は大きく変わるため、積算を行う人には専門的な知識と技術が不可欠です。

積算の業務フロー

積算の業務フローは大きく分けて5つのステップから成り立っています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

ステップ1:全体像の把握

積算業務は、プロジェクトの最初の段階、つまり計画段階から始まります。この段階では、プロジェクト全体の目標や設計要素が明らかにされ、それらがどのように予算に影響を与えるかを理解することが重要です。

また積算の担当者はこの時点で、利用可能な資源、必要な材料、それらのコスト、そして工事の規模や複雑さを考慮した予想工期を把握します。

ステップ2:積算作成

計画段階が終了すると、積算作成に移ります。この段階では、設計図や仕様書を基にして、人工の算出、材料の算出、総工費の算出が行われます。

①人工の算出

これは主に労務費の算出に該当します。特定の工事に必要な作業員の数や技能レベル、必要な時間(歩掛)、そしてその労働に対する賃金を考慮して、人件費を算出します。

②材料の算出

施工に必要な材料の種類、数量、単価を計算して材料費を算出します。設計図や仕様書をもとに、必要な材料をリストアップし、その価格を確認します。

③総工費の算出

上記の人工の算出と材料の算出に、その他の経費(例えば機械の利用費、共通仮設費、現場管理費など)を加えて、総工費を算出します。

ステップ3:積算の見直しと調整

積算作成後、積算の見直しと調整が行われます。プロジェクトが進行するにつれて、設計変更や材料価格の変動、工期の変更など、多くの変数が発生します。

これらの変化に対応して積算を更新し、予算とプロジェクトの進行状況を常に一致させることが重要です。

ステップ4:報告書の作成

全ての積算作業が終わった後、最終的な積算書を作成し、報告・提出します。この積算書は、プロジェクトのコスト管理と進行管理の基盤となります。

また、この積算書は、発注者や関連部署、外部のステークホルダーに提出され、プロジェクトの予算や工期、品質などについての決定を下すための重要な情報を提供します。

ステップ5:積算の管理と更新

積算は一度作成した後で終わりではありません。プロジェクトが進行するにつれて、積算を更新し、その都度管理する必要があります。

工事の進行により、予期せぬ問題が生じたり、追加の材料や作業が必要になったりすることがあります。そうした変化に対応するため、積算の担当者は常に現場の状況を把握し、それに基づいて積算を更新します。

また担当者は算超過を未然に防ぐため、プロジェクト全体のコスト管理に責任を持ちます。

積算業務に必要なスキル

積算業務を効率的に行うためには、以下のような様々なスキルが求められます。

各種図面に関する知識

積算業務では、建築計画の詳細を理解するために設計図や仕様書などの読解能力が不可欠です。これらの文書を正確に理解することで、必要な材料や工程、それらにかかるコストを正確に把握することが可能となります。

施工計画の作成能力

積算では、どの作業がいつ行われ、それぞれの作業にどれくらいの時間とコストがかかるかを詳細に計画する必要があります。そのため、作業の進行を予想し、それを計画に落とし込む能力が求められます。

図面の作成能力

積算業務を効率的に行うためには、CAD(Computer-Aided Design)やBIM(Building Information Modeling)などのソフトウェアを使用して図面を作成、編集する能力も必要です。これにより、作業の詳細を視覚的に理解し、より正確な積算を行うことができます。

専門用語や工法に関する知識

建設工事に関する知識も必須です。用語の理解はもちろん、工事の進行過程や使用される工法、さらには材料の特性などについても理解していることが求められます。

建設材料などについての計算能力

各種材料の必要量を正確に計算する能力は、コスト計算の基本となります。また、施工時に材料が不足しないよう、適切な余裕を持った計算が求められます。

工事関連の価格相場に関する知識

現場の具体的な状況を反映した正確な積算を行うためには、専門工事の価格相場、建設材料の価格、人件費の一般相場など、工事にかかる費用の市場価格についての知識が必要です。

工事価格に関する増減予測能力

経済状況や市場の動向により、建設材料の価格や人件費が変動します。それらの変動を予測し、それを積算に反映させる能力は、積算結果の精度を高めるために必要なスキルの一つです。

コミュニケーション能力

積算業務は単独で行われるものではなく、設計者、施工者、発注者など様々な関係者とのコミュニケーションを必要とします。明確なコミュニケーションによって、ミスの防止や工事計画の最適化が可能となります。

積算業務に役立つ資格

積算業務に従事する上で役立つ資格を紹介します。これらの資格は、積算の知識と技術を証明すると同時に、業務の効率と質を向上させる優れた手段となるでしょう。

建築積算士

建築積算士は、建築工事の積算に関する幅広い知識と技術を証明する資格です。もともとは国土交通省の認定資格でしたが、現在は公益社団法人日本建築積算協会が実施する民間資格となっています。

試験は一次の学科試験と二次の短文記述試験に加え、工事費の算出や工事内訳明細を作成する実技試験で構成されます。合格率は50〜70%程度ですが、実践的な技術が求められるため、比較的難関資格といえるでしょう。

関連リンク:公益社団法人 日本建築積算協会

建築コスト管理士

建築コスト管理士は建築積算士の上位資格にあたり、プロジェクトの設計から完成までのライフサイクル全体におけるコストを評価、予測、管理するための高度な専門知識が求められる資格です。

試験は学科と筆記(短文記述)で構成されます。主な受験資格は以下の通りです(いずれかを満たすこと)。

  • 建築積算士の称号を取得後、更新登録を1回以上行っている
  • 建築関連業務を5年以上経験している
  • 一級建築士に合格し、登録している

なお、建築コスト管理士試験の合格率は平均60%程度です。

正しい手順で積算業務をスムーズに行いましょう

積算は、工事計画を立てる際の重要な作業の一つで、その精度が工事の成果に大いに影響を与えます。業務を効率的に遂行するためには、専門的な知識と技術だけでなく、適切な資格取得も視野に入れてみてはいかがでしょうか。積算業務を通じて、建設プロジェクトを成功に導きましょう。

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